入学式
京西学院の正門に着くと、とてつもない人集りができていた。
「うわっっ」
思わずそう嫌そうな声で反応したのは、身長は180センチと少し高めで中学では帰宅部だったとは思えないほど引き締まった体の持ち主、林田若日だ。
やはり天下の京西学院だ。入学式でこれほどまでにメディアに注目される高校は国内ではそうはないだろう。そういえばあいつもこの学校受けるって言ってたよな…。
あいつというのは林田若日の幼馴染で落ち着いた見た目からは想像できないパワフルな女の小河憂だ。あいつは親が大企業のお嬢様で、俺の家の十倍もの大きさの家に一人で(召使いはたくさんいるが、)住んでいる。そんなお嬢様とごく普通の家庭に産まれた俺が何で知り合いなのかというと、父親同士が高校時代、野球でバッテリーを組んでいたという訳で仲が良く産まれた時には既に両家は仲が良かった。憂は170センチと俺よりは小さいが、女性にしては身長が高く、中学ではバレー部に所属していた。容姿端麗、成績優秀とお嬢様らしい完璧な様子で、学校では小河ファンクラブというのが密かにたちあげられるほどだった。
まぁ、そこまでクラスで目立たない俺にだけガンガン絡むのはあまりしられていなかったが。
「わ!か!ひ!」
その声と共に俺の背中に衝撃が走る。これは絶対あいつだな。そう思うと同時に予想通りの顔が目の前に現れる。長いまつげに綺麗な長い黒髪、艷やかな唇、俺にだけ本性を見せるパワフル女小河憂が満面の笑みでこちらを見つめていた。
「やっぱり、若日も受かってたんだ」
そう嬉しそうに言いながら、俺の横を自然と歩いて人混みを抜け校門を通り抜ける。
「この高校のいいところは、やっぱり授業をしないところだよね〜」
そう憂はいってこちらをみる。
「それは噂だろ?授業ない学校なんてあんのかよ。」と俺が言うと、
「夢のないこと言うなよ〜」
とその美貌から繰り出される国宝級の膨れっ面を披露する。そんな姿を目の端で捉えつつも、クラス分けの掲示板をさがしていたのだが、見当たらない。俺は仕方なく憂に聞いた。
「クラス分けの掲示板とかってどこにあるんだ?」
憂は一瞬、言ってることがよくわからないという顔をしたが、俺の質問をすぐ理解したらしく返答する。
「はっは〜ん、さては、若日ちゃんと入学のしおり読んでないでしょ。この京西学院はクラスとかないよ。」
憂はそう言って続ける。
「この学校に授業が無いって言われるのはクラス分けが無かったり、出席番号、授業参観さえも無い普通の高校じゃあり得ない方式だからだよ。」
「なるほど?」
俺はよく分からないまま頼もしい成績優秀の幼馴染に連れられて、入学式の会場までやってきた。




