序章
丑三つ刻、五寸釘神社。
其処に三名の重傷者が藁人形を握り締めていた。
「もうイヤァ!あの男ォ!!」
「酷いモンだ、十人くらい強姦したり、老人から現金を盗んだ後に病院送りにしただけなのにッ!!」
「血も涙の無い鬼ってのは、夜咫クロウの為にある言葉だッ!!」
涙を流しながら、一人の男を脳裏に過らせて涙を流す男たち。
彼らの我慢は最早限界であった。
病院送りにした男を抹消しなければ溜飲が下がらない。
しかし、武力では敵わない事は承知の上。
ならばどうするか。
「もう……呪い殺すしかないッ!!」
と言う理由にて、彼らは五寸釘神社へとやって来ていた。
此処では、憎い相手を思いながら神社に向けて藁人形を五寸釘と共に突き刺す事で、呪った相手が神隠し(行方不明)になると言う噂がある。
その噂を、呪いを頼りやって来ていたのだった。
「けど、呪ったら、呪い返されるんだろ?」
一人の不良が心配そうに言う。
当然、相手を呪う以上は自分自身も呪われる可能性がある。
それこそが、人を呪わば穴二つ、と言うものだ。
けれど、知的そうな不良が告げた。
「だから三人で呪うんだろうが」
「そうだ、そうすりゃ呪いの効果も三分の一だろ?」
そう説得されて、不良は成程と頷いた。
「頭良いィ!」
そうして、不良達は、多くの藁人形が打ち付けられた樹木へと赴き、夜咫クロウ、と呼ばれた男の写真を貼った藁人剛を樹木に向けて五寸釘を突き刺した。
そして、大きく鉄鎚を振り上げて。
「死ねェェ!!夜咫クロォォおおお!!」
思い切り、五寸釘に向けて鉄鎚を振り下ろす。
それを三人とも、釘を三本打ち付けて確実に藁人形が外れない様に打ち付けたのだった。
―――本日の依頼。
神隠しに遭った行方不明者の捜索。
被害者一名。
加害者三名。
合計四名の幽リ人の捜索。
「三人で呪ったって、バカじゃん」
そう呟きながら、短髪の少女が悪態を吐いた。
「人を呪わば穴二つって知らないの?」
苛立ちを隠せない様子で、彼女の言葉は何度でも漏れ出した。
その隣には、一人、髪の長いふわふわとした白髪の少女が隣で歩いている。
「あ、でも……穴二つ、じゃなくて、穴三つ、だね、シヅノちゃんっ」
と。
彼女は自信満々に言い放つ。
天然であるのか、計算であるのか。
友達でもある彼女の言葉に飽きれた様に溜息を吐いた。
「そういう意味じゃ……まあ、良いか、……本当、良い性格してるよね、リリスってさ」
褒められていると勘違いしたのか、彼女は後頭部に手を添えて頬を赤らめる。
「え、あ、そうかな?シヅノちゃんがそう言うのなら、そうかも……」
褒めてない。
それを言うまでも無く。
再度、鬼子唄シヅノは息を吐く。
「まあいいや……取り敢えず、行くよ、バカ三人と、恨まれた一人を回収しに」
「な、ナラカへ、ゴー!!」
何故彼女が辛辣な表情をしているのか分からない蒐尋リリスは彼女の後ろを歩き、意気込んでいた。
グシャカラス。
それは、闇の中で光を啄む咒われた鴉たちの物語。




