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異界遊戯執行部  作者: 春雪
異界邸宅編
9/24

異界邸宅 第9話


――――チッ。


 翌朝、監視カメラのスピーカーから、突如として電子音が鳴り響いた。


「2日目になりました。今日も元気に肉体関係を持ちましょう」


 レンヤはベッドの上で目を覚ます。

 朝から不快なアナウンスを聞かされたおかげで、気分は最悪に近かった。


「……カメラにスピーカーが付いていた理由はこれか」


 嫌悪感で満たされそうになる意識を切り替えようと、目頭を指で押さえる。

 その後レンヤはベッドから起き上がり、顔を洗うために洗面所へ向かった。


 考えるべきことは多い。ぼやけた頭をスッキリさせなければ、正しい判断などできはしない。

 この家での判断ミスは、死に繋がる可能性があるのだから。


 

 レンヤは身支度を整えた後、キッチンで朝食の用意をしていた。

 しばらくすると藍歌も合流し、お互いに挨拶を交わす。


「おはようございます、レンヤさん。なかなかユニークなモーニングコールでしたね」 


「ああ、悪い意味でな」


 2人はダイニングルームで朝食を食べながら、今日の行動について話し合った。


「それで、レンヤさん。今日の予定はどういたしますか?」


「まずは他の適性者たちと連絡を取る。何か状況が変わっている可能性もあるからな。その後の行動は、彼らの話を聞いてから考える」


「なるほど、とても無難な選択ですね」


 藍歌は紅茶の入ったカップを口に運びながら感想を述べる。


 レンヤは現時点で藍歌のことをある程度は信用しているが、原作の彼女の性格を考慮すると、藍歌が本心では何を考えているのか分からなかった。


 朝食後、レンヤと藍歌の2人は昨日と同じようにアンティーク調の電話を使用し、他の適性者へ状況確認を行う。


 順番はCを抜かして、A、B、Eの順だ。



◇◇◇



《適性者A 2日目》


――――プルルルル……ガチャ。


「……Dか?」


 Aの声は相変わらず冷静だったが、昨日よりも明らかに疲れたトーンだった。

 レンヤは一先ず、BやEに連絡した際の印象や、Cがおそらく死亡したことをAに伝えた。


「……なるほど。どうやら信用できそうな適性者は、Dだけのようだな」


「今度はそっちの状況を聞かせてくれ。なにか進展はあったか?」


 レンヤが問いかけると、Aは短く溜め息をついた。


「召喚した」


「誰を?」


「『碧彩みどりなぎ』という作品の『筒香つつごう 紫遠しおん』だ」


「碧彩の凪……。確か魔術師同士の戦いを描いた作品だったな」


「そうだ。この家の扉や窓は、物理的には破壊できない。ならば魔術や超能力的な面からアプローチできないかと思ってな」


 確かにAの言う通り「召喚したキャラクターの能力を使用して、扉や窓を突破できないか?」というのは、レンヤも考えていたことだった。


「それで、上手くいったのか?」


「筒香を召喚してから、ろくに会話もできていない。こちらを完全に見下している。好感度がマイナスだということは知っていたが……想像以上だった」


 Aの声には苛立いらだちがにじんでいた。


「とにかく、俺は筒香と慎重に関係を築いていくつもりだ。無理をして墓穴ぼけつを掘りたくない」


「分かった。なにかあれば遠慮なく電話してくれ」


「お前もな」



――――Aとの会話、終了。



 「レンヤさん。筒香 紫遠という方は、どのような人物なのですか?」


「俺も『碧彩の凪』について、そこまで詳しく知っているわけじゃない。だが筒香に関しては、イラストを見た感じプライドが高そうな印象を受けたな。ただ、悪人ではなかったはずだ」


「なるほど。Aの『魔術的な視点でアプローチする』という発想は、悪くないと思います。上手くいってほしいものですね」


「ああ」


 レンヤは藍歌の言葉に同意する。

 やはり召喚はキャラクターごとの性格や能力をよく考えないと、相応のリスクが有ると再認識した。

 

 ましてAの召喚した筒香 紫遠は魔術師だ。

 当然、戦闘能力も備えているだろう。


「本当に、上手くいってほしいんだが……」


 レンヤはAの無事を祈りつつ、次の連絡先であるBの電話番号「2222」とダイヤルを回した。



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