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異界遊戯執行部  作者: 春雪
異界邸宅編
16/27

異界邸宅 第16話

 レンヤは惚れ薬の件もあり、他の適性者たちの状況を確認することにした。


――――AとB、2人ともすでに召喚を行っている。


――――Aは筒香つつごう 紫遠しおん、Bは松浜まつはま 伊吹いぶきを召喚し、関係構築に苦労していた。


 筒香 紫遠は魔術師であり、戦闘能力を有している。

 松浜 伊吹はアイドルであるため、危険度で言えば心配ないかもしれないが、Bは精神的にかなり追い詰められていた。


 加えて朝の放送だ。

 CやEの末路を思えば、レンヤの脳裏に嫌な予感がよぎるのも仕方のないことだった。

 その不安を払拭ふっしょくするためにも、レンヤは焦る気持ちを抑えてダイヤルを回した。



◇◇◇



《適性者A 3日目》


――――プルルルル……ガチャ。


「……Dか」


 電話に出たAは、昨日よりも更に疲労を濃くした声色だった。

 

「どうした、何があった?」


 レンヤが問うと、Aは重い溜め息をつく。


「どうもこうもない。筒香が……とにかく、俺にまったく気を許さなくてな」


「……状況を考えれば、それも仕方がないだろう」


「頭では分かっている。俺も少しでも歩み寄ろうと努力した。無理に協力を強制することもしなかった。だが……」


 Aは明らかに苛立っている。だいぶストレスが溜まっているようだ。


「昨日の夜から、筒香とはほとんどまともに話していない。あいつは自分の部屋に閉じこもったままだ。加えて今朝の放送……。アレのせいで余計に態度がかたくなになった」


「……それで、どうしたんだ?」


「部屋から出てくるようにドア越しに説得していたら、魔術で威嚇いかくされたよ。殺されるほどの攻撃ではなかったが……流石に肝が冷えた」


 レンヤは眉をひそめる。


――――筒香 紫遠は嫌いな人間との関わりを拒絶するタイプか。


――――Aが距離を詰めようとするほど、激しい抵抗を受けるかもしれない。


 Aの状況は、下手をすればEの二の舞いになりかねない危うさがあった。


「……A、今は無理に動くな。あくまで俺の印象だが、筒香 紫遠は根は善人だったはずだ。今は好感度マイナスの影響が大きいかもしれないが、一度冷静になれば脱出に協力してくれる可能性はある」


 Aは少し沈黙した後、低い声で呟いた。


「……そうだな。そうであってほしいと思う」


 Aの声音からは、どこか寂しさが感じられた。


「A、困ったらすぐに連絡してくれ。あまり抱え込むなよ」


「ああ、お前もな」



――――Aとの会話、終了。



「……Aさんという方、大丈夫でしょうか? だいぶ疲れてるみたいでしたけど」


 美海もやはりAの疲労具合が気になったようだ。

 藍歌はクスリと笑いながら感想を述べる。


「Eもそうでしたが『1人目に誰を召喚するか』で適性者の明暗がハッキリと分かれていますね。ね、レンヤさん?」


「そうだな……」


 Aは確かに苦戦している。だが、まだ『詰み』ではないはずだ。

 優秀な魔術師である筒香が脱出に協力してくれれば、Aの状況は劇的に改善するかもしれない。


 そうなってほしいと、レンヤは心から願った。



◇◇◇



《適性者B 3日目》


 レンヤは次いでBに電話をかけた。しかし……。


――――出ない。


 もう一度、Bの番号「2222」とダイヤルを回す。


――――プルルルル……ガチャ、プツッ。


(切られた!?)


 レンヤの中で嫌な予感がふくらんでいく。

 昨日、Bは追い詰められていた。松浜 伊吹に警戒され、状況を打開できずにいた。

 そして今、彼は電話に出ない。


「電話は繋がらないのではなく、切られたのですね?」


 藍歌が確認するように、レンヤへ声をかける。


「ああ、少なくともBの家には、生きている『誰か』がいるはずだ」


「ふふ、それがBであるなら、電話を切る理由はないでしょう。彼はレンヤさんからの電話を頼りにしていましたから」


「え、えと、それってつまり、Bさんは……」


「……」


 レンヤは悔しさを押し殺しながら受話器を置いた。

 そして美海の方へ振り返り、彼女をまっすぐに見つめる。


「美海」


「へ? あ、ひゃい!」


 異性と視線を合わせることに慣れていないのか、美海は顔を真っ赤にしてうろたえる。

 その横では藍歌がニコニコと微笑んで、2人の様子を見守っていた。


――――考えたくはない。


――――だが、確かめなければならない。


 レンヤは覚悟を決めて口にする。


「Bの家の監視カメラをハッキングしてくれ」



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