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異界遊戯執行部  作者: 春雪
異界邸宅編
13/27

異界邸宅 第13話

 レンヤ、藍歌、美海の三人は、食事を終えて再びリビングへと戻っていた。


「そのEっていう人の監視カメラをハッキングすればいいんですよね?」


「ああ、頼む」


「やってみますけど……」


 美海は普段から持ち歩いている愛用のノートPC型デバイスを使い、ハッキングを開始する。

 レンヤと藍歌は黙ってその様子を見守っていた。


 そして数分と経たないうちに、美海はEの家の監視カメラの映像へアクセスすることに成功した。


「流石だな」


「いえ、なんか拍子抜けするくらい簡単でした。まるで『どうぞ覗いてください』って感じで……」


 美海のデバイスに映像が映し出される。レンヤは思わず身を乗り出して画面に注目した。

 新たな手がかりに対する期待と、頭にこびりついた嫌な予感がレンヤの体を突き動かす。


 しかし、そこに映っていた光景は想像を遥かに超えたものだった。


「ヒッ――――え? こ、これ……本物?」


「あらまぁ」


 画面にはEの家のリビングが映し出されていた。

 部屋の造りはレンヤたちがいる家とまったく同じ。だが、一部の家具が破壊され、床や壁には大量の血飛沫ちしぶきが飛び散っている。

 その中心には、首を切断された男の死体が横たわっていた。


 男は筋肉質のガッシリとした体格で、肌は日に焼けている。切断された首は、身体から少し離れた場所に転がっていた。

 この男が、おそらくEなのだろう。


 血の海。赤いまだらに塗装された壁。

 画面に広がる赤色が、Eが電話に出なかった理由を物語っていた。

 

 「これは……」


 レンヤは後に続く言葉を絞り出せなかった。

 その直後、美海は勢いよく立ち上がると、顔を真っ青にして口元を抑えながらトイレに走っていった。


「随分と派手な殺し方ですね」


 隣で画面を覗き込んでいた藍歌も、流石に表情を固くしている。


「これが、Eの末路……」


 未だに頭が再起動していないレンヤだったが、映像内の注目すべき点は、Eの死体以外にもあった。

 画面の奥に、一人の少女が立っている。

 ファンタジックにデフォルメされた和服姿。黒髪をポニーテールに結び、その手に血に濡れた刀を持っている。


「彼女は確か……『レジェンド・オブ・ジ・アトモスフィア』の『ハヅキ』か?」


 レンヤは昔プレイしていたRPGの登場キャラクターと瓜二つの少女を見て、思わず声を上げた。


 ハヅキは主人公に忠誠を誓うサムライの少女で、妖刀『界走さかばしり』の使い手でもある。

 彼女は全身に返り血を浴びて、無表情のまま静かにたたずんでいた。


「Eはハヅキを召喚して……殺されたのか」


「召喚するキャラを間違えるとこうなる、というわけですね。ですが、Eは私たちに貴重な情報を残してくれました」


 藍歌は、映像内のリビングに設置されているモニターを指差す。

 そこには重要な、そして衝撃的なメッセージが表示されていた。



『適性者の死亡が確認されました。24時間後に家の扉のロックが解除されます』



 レンヤはその一文を見た瞬間、思わず息を呑んだ。


「扉のロックが解除……」


 隠されたルールが存在するであろうことは予想していた。

 だが、このルールを考えた執行部は、揃いも揃って全員クソ野郎の人でなしだ。


「つまり――――」


 レンヤのすぐそばで、藍歌が透き通るような声で現実を口にする。


「適性者が死ねば、残りの召喚されたキャラクターは外に出られるということですね」


 適性者の死をトリガーとする、もう一つの脱出条件。レンヤは拳を握りながら、画面を見つめ続けた。


――――執行部は殺し合いが見たいのか?


――――俺たちが取り乱し、恐怖に飲まれていく様を嘲笑あざわらいたいだけなのか?


――――分からない……。


 レンヤは血の海に沈んだEの姿を見ながら、歯を食いしばって考え続けた。

 考えても、考えても、答えなど出てこない。


 その様子を、藍歌はただ静かに見つめていた。



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