異界邸宅 第1話
レンヤが目を覚ましたのは、見知らぬ部屋の中だった。
天井は高く、壁は装飾のないシンプルな白。
木目調のフローリングの床には、上質なカーペットが敷かれている。
レンヤが寝ていたのは広々としたダブルベッド。
シーツは清潔で、シミ一つ見当たらない。
「…………?」
知らない場所だ。なぜ自分がここにいるのか、今まで何をしていたのか、まったく分からない。
幸い頭に痛みはなく、意識もはっきりしている。
しかし、記憶だけが曖昧だ。
レンヤは起き上がり、周囲を見渡した。
大きな姿見に映るのは、少し気怠げな目元とボサボサ髪が特徴の自分の姿だ。
白いワイシャツにジーンズという飾り気のない服装。
年齢は22歳、男性、職業は……分からない。
家族、友人、恋人……分からない。
まるで過去が抜け落ちてしまったみたいに、本来あるべき記憶を思い出せなかった。
レンヤは考え込むのをやめて、部屋の扉を開ける。長い廊下には等間隔でドアが並んでいた。
おそらくそれぞれが、この部屋と同じような個室になっているのだろう。
窓の外は濃い霧でも出ているのか、白く霞んで何も見えない。
先が見えない今の自分を暗示しているようで、不安を掻き立てる光景だった。
「……夢じゃないよな」
そう呟きながら歩を進める。静けさにレンヤの足音だけが響く。
自分以外に誰もいないのだろうか?
とにかくこの場所が何なのか、なぜ自分がここにいるのかを知る必要がある。
少し歩くと、リビングのような広い空間に出た。
天井は更に高く、シャンデリア状の照明が輝いている。
中央付近にはテーブルとソファーが置かれ、向かい側の壁に大きなモニターが埋め込まれていた。
レンヤがソファーに腰掛けた瞬間、モニターが自動的に起動する。
鈍い電子音が鳴り、画面に映し出されたのは『執行部』と名乗る存在からのメッセージだった。
――――適性者、レンヤ。
――――あなたは『肉体関係にならないと出られない家』に招待されました。
最初の一文を読むと同時に、レンヤは眉をひそめる。
招待? 適性者? 肉体関係?
こんな意味不明な状況で、一体誰が、何を望んでいるというのか。
――――この家のルールは以下の通りです。
(1)この家の外に出るには『異世界召喚装置』を使って召喚した女性キャラ3名と肉体関係を持つことが条件である。
(2)異世界召喚装置は適性者のみが使用可能。
(3)召喚する女性キャラは、あらゆるアニメ・ゲーム作品から選択可能である。
(4)召喚された女性キャラは、適性者に対して『好感度マイナス』の状態からスタートする。
(5)食料、生活必需品、インフラは万全に整っている。
(6)召喚された女性キャラも、条件達成まではこの家の外に出ることはできない。
(7)召喚できる女性キャラの人数は無制限である。
(8)召喚によって起きた事象について、執行部は一切の責任を負わない。
「……バカバカしい」
ふざけた内容だ。レンヤはソファーから立ち上がり、玄関へと向かう。そして玄関のドアを開けようとするが、当然のごとく扉は固く閉ざされていた。
ドアだけでなく家中の窓も、まるで時間が固まったかのように微動だにしない。
押しても、引いても、叩き割ろうとしても。確認できたことは「この家からは出られない」という事実のみだ。
これはどうやら冗談では済まされないらしい。
現状でこの家から出るための手がかりは、執行部が提示したバカみたいなルールだけだ。
レンヤはリビングに戻ると深く息を吐き、再びモニターを見つめた。
このモニターはルールにあった『異世界召喚装置』の役割も兼ねているらしい。
画面の指示に従って、モニターのリモコンを操作する。
異世界召喚装置――――ルールを信じるなら、こいつを使ってアニメやゲームのキャラクターを召喚できるはずだ。
しかし召喚したキャラの好感度は、マイナスからのスタート。どの程度のマイナスかは分からないが、最悪の可能性も考えておくべきだろう。
そもそも召喚された側にとっては迷惑極まりない話だ。
いきなり異世界の見知らぬ家に閉じ込められ、好感度マイナスの相手との関わりを強制されるのだから。
「……考えなしに動くと死ぬな」
レンヤは腕を組み、じっくりと思案した。
選択を誤れば初手で詰む。
どの作品の、どのキャラクターを召喚すべきか。
『好感度マイナス』=『敵対関係』と想定するなら、戦闘能力を持つキャラは避けるべきだ。
できる限り理性的で、対話で関係を修復できるキャラを選ぶのが賢明だろう。
「……やるしかないか」
レンヤは改めてモニターを見つめた。
膨大な作品数。大勢のキャラクターたち。
誰を召喚するか、どのように接するのか。
選択肢は無数にある。
――――全ては自分次第だ。
【念のため】
あらすじにも書きましたが、この作品はAIを使用しています。私のAIの使い方ですが、まず物語の展開やキャラは自分で考えます。
それを元にAIが生成したものへ、私自身の好みや癖、言い回し、文章のリズム、ぱっと思いついたアイディアなどを塗りたくります。
第1話から「肉体関係にならないと出られない家」などというものを登場させてしまう私の好みや癖を、皆さんに楽しんで頂けたら幸いです。
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