表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/140

出来損ないのタイムマシン(バージョンA)

注)「出来損ないのタイムマシン」シリーズは、必ずしも連続ものではなく、根本的に共通のアイディアでいろんなバージョンを試みています。で、ええと、まあいいです。

 お気軽にお読みください。

 以下作品

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺は個人的に何十年もタイムマシンの研究をしてきた。

 そして遂に完成した!

 で、その中心は「コントロールボックス」で、それが発生する特殊な電気信号を金属、というか金網、というか、金属製のフェンスに接続し、それから電磁波を発生させるというカラクリだ。つまり金属製のフェンスがアンテナだと思えばいい。

 そしてそのアンテナであるフェンスによって取り囲まれた空間内は、そのタイムマシンの影響下にある。

 どういうことか。試しに俺はコントロールボックスを、大型犬が入るくらいのペットサークルに繋ぎ、俺はそのペットサークルの中に入ってうずくまり、早速タイムマシンをテストすることにした。

 もちろんそこは家の中で、ペットサークルの金網越しに家の壁の時計が見える。

 そして俺はペットサークルに目覚まし時計を持ち込み、試しに10分後の未来へ行こうと、コントロールボックスに繋がったキーボードでそういう風に入力し、そしてスタート!

 するとコントロールボックスにある、マシンの作動を示す赤いLEDが点灯。

 で、タイムマシンの作動時間は概ね1分だった。

 ええと、後ほど話題になるのだが、作動時間は自由に変更できるようにしてある。

 つまりそれが1分なのだが、そうするとこの場合、1分の作動時間で10分後の未来へ行くことになる。

 で、ペットサークルの中は通常の速さで時が進み、だから、ペットサークス内の目覚まし時計の秒針も普通に進んでいる。(1秒に1秒ずつ)

 そして俺がペットサークルの外の、つまり家の中に時計をみると…

 つまり俺の想定ではその時計、それはアンティークの柱時計だったのだが、その振り子がびゅんびゅんと振れ始め、その1分の作動時間で、10分後の未来へ行けるという目論見だったのだ。

 ところが、タイムマシンをスタートさせるや、柱時計の振り子はぴたりと止まってしまったのだ!

 そしてタイムマシン作動中を示す赤のLEDが消灯するや、再び柱時計の振り子が動き出した。

 これはとんでもない誤作動である。

 10分後の未来へ行く筈が、「現在」に留まり続けた、ということである。

 ええと、わかりますか?


 それから俺は未来や過去のいろんな時間を設定し、タイムマシンをスタートさせたが、結果はすべて同じだった。

 何回やっても「現在」に留まり続けたのである。 

 つまり時間的には何処へも行けない。

 いつまでも作動開始した「現在」に留まっていたのだ!

 それからコントロールボックスの内部の電子部品なんかを調整したり取り替えたり、いろいろやったけれど、結果は全て同じだった。

 つまりこのタイムマシンは出来損ないなのだ!

 そういう訳でおれはとてもへこんだ。出来損ないのタイムマシン…

 それで俺は、

「ええい、このやうな出来損ないのタイムマシンなど、この際早速叩き壊してしまえ!!」と思い、それからペットサークルを抜け出し、昔、ダンベル体操で使っていた3キロの鉄アレイをもってきて、再びペットサークルの中に入り、コントロールボックスを叩き壊すべく、鉄アレイを振り上げた…

 と、そのとき妻が昼寝から目覚めたようで、階段を降りてとことことやってきて、

「あらあら、ペットサークルの中なんかでダンベル体操なんかやってるの?」とすっとんきょうに言うので、俺は豪快に力が抜け、「タイムマシンを叩き壊す」という暴挙は当面棚上げにすることにした。


 で、出来損ないのタイムマシン…

 どうでもいいけどとにかく俺は、それから豪快にへこんだ。

 何十年もの研究の成果が、あの出来損ないのとんとんちきとは…

 とにかく「何時」にも行けないタイムマシン。

 出来損ない!

 でもそれから数日後、俺はもう少し大掛かりな実験をやってみようと、前向きに考え始めた。 

 ペットサークルよりは規模を大きくして、で、我が家は敷地が金属のフェンスで取り囲まれている。

 犬を庭で走らせることもあるので、逃げ出してご近所に迷惑を掛けるといけないと思ってのことだ。

 で、この環境は、この出来損ないのタイムマシンの動作実験にもってこいなのだ。

 それで俺は、すんでのところで鉄アレイでの破壊活動を免れたコントロールボックスを庭のフェンスに接続し、「どの時代へ行く」の設定はこの際どうでもいいので適当にやり、それからマシンをスタートした。

 するとどうだろう。

 我が家の敷地の外は時が止まったように見えたのだ。

(まあ、ペットサークルでの実験でも柱時計の振り子は止まったのだから、当然と言えば当然だ)

 そして家の敷地内はいつもと全く変わらない。

 自宅では普通に生活出来るし、全く通常の時の流れなのだ。

 ところが敷地の外では時が止まっている。

 外を走る車も、歩く人も、空を飛ぶ鳥、いや、着陸進入中の旅客機さえも止まっているのだ。 

 ともあれ、作動させても作動させても、「今この現在」に永久に留まるだけのタイムマシンには違いない。未来とか過去へは一切行けないのだ。ひたすら「現在」に留まり続けるのだ!

 やっぱりそんな出来損ないのガラクタのタイムマシンの使い道など、あろうはずもない。

 それでおれはもう一度へこんだ。

 だけど考えようによってはこれは凄い機械かも。

 フェンスで囲まれた、その外側を「金縛り」に出来るのだから。

 もしかして、何かに使えるかも…

 

 そんなある日、俺は知り合いの物理学者兼天文学者から極秘の情報を得た。

 それはとてもトラジック、つまり悲観的なエクスティンクションレベルイベントのことで、数年後、たとえ人類の英知を結集しても避けようのない、地球の危機が迫っているというのだ。

 とにかく豪快にカタストロフィーだ!

 そしてその話を聴いた俺の脳裏に、あるアイディアが閃いた。


 それから俺は、その物理学者兼天文学者は言うに及ばず、いろんな気の合う仲間、それはタイムエイジマシンの茶トラ先生だったり、動く家のアタゴ先生だったり、結構な人数の人々だったのだが、彼らにそのカタストロフィーのことを伝え、そして俺の考えを伝え、最終的には100人くらいの賛同者を、老若男女を問わず集めることができた。

 そして基金を募り、自給自足できる広さの土地を購入した。

(田舎の山奥だったので格安だった)

 それからその数年をかけ、みんなでそこを開拓し、住居を作り、農地を作り、家畜も飼い、そしてその土地は金属のフェンスで囲んだ。

 とにかくこのフェンスの中の土地、それは数ヘクタールのも及ぶものだが、その中で全員が永続的に自給できるようにしたのだ。

 とにかくみんなで力を合わせ、数年の歳月を要し、そういうものを築き上げたのだ。


 そしていよいよ、その地球のカタストロフィーが起こる直前となり、見上げると上空には直径400キロメートルという巨大な小惑星が迫り、一部は大気圏に突入したらしく、真っ赤に燃え始め、放射状に煙のようなものをなびかせはじめていた。

 それで全員がフェンスの中にいることを確認後、俺はすんでの所で鉄アレイで破壊されるのを免れた、そしてその土地の周囲のフェンスに接続された、出来そこないのタイムマシンのコントロールボックスの電源を入れ、キーボードを操作し、タイムマシンを作動させた。

 ちなみに作動時間は変更でき、1分ではなく、「永遠」と設定していた。

 とにかく永遠に作動させ続けなければいけないのだ!

 ともあれ、マシンは作動開始し、コントロールボックスの赤いLEDが点灯するや、フェンスの外の世界では時が止まり、もちろん小惑星もその動きを止めた。

 だけど本当は外の時が止まったのではなく、フェンスの中の俺たちが「今この瞬間」に留まっているだけなのだが、そういうことはどうでもいい。

 とにかく俺たちは、小惑星落下で壊滅という、恐るべきカタストロフィーの寸前で時を止め、フェンスの中というの地球の一角、つまり「この時この場所」で、永遠に自給自足して暮らすのだ。


 それで、2へつづく、っていうか、実際は別バージョンだけどね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ