表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/140

夢枕 (YouTube配信中)

 やったぞ! ついに完成した! 夢のような枕。

 その名も夢枕!

 私は長年大脳生理学、脳波、脳内の記憶の中枢、「心」とは脳内のどこにあるか、願望とは?、はたまた、人は夢を見るが、そのメカニズムは?

 とにかくそういう類のことを長年延々と必死こいて研究し、そして人間の脳にある、とあるメカニズムを発見するに至ったのだ。

 そして夢枕。

 夢枕とは、その人の夢をコントロールする、画期的な枕。

 そしてその、私が発見したメカニズムを応用すると、その枕を使って眠っている人の夢をコントロールできるのだ。

 とある重大な目的のために…

 ええと、どうも話が抽象的で大変申し訳ない。で、もう少し具体的に話す。


 人間誰しも、亡くなった方にもう一度逢いたいという気持ちがあると思う。

 でしょ?

 最愛の人を亡くした悲しみは、想像に余りある。

 あの人にもう一度逢いたい。

 死んだあの子にもう一度逢いたい。

 最愛の人を失った多くの人は、そういう願いを持っているだろう。

 だけど…、現実にはそれは不可能だ。そもそもこの噺はオカルト小説ではないし。

 思い切りSFだ(キリッ!)

 だったらSFなら、タイムマシンで過去へ…

 いやいや、そういう夢物語ではなくて、現実的なサイエンスの世界で、上に述べたような人々の願望を実現できないものか。

 そういういきさつで、私はその夢枕を研究開発してきたのだ。

 そしてそれは、夢を豪快にコントロールすることで実現できるのだ。

 どうやって?


 そもそも、亡くなった人に逢いたいという切ない切ない思いは、その人の持つ、亡くなった人との思い出とともに脳内に記憶されている。

 記憶…

 そして私は、その脳内のメカニズムを完全に解き明かすことに成功したのだ!

 それで、その詳細は企業秘密であるが故、残念ながら詳しくお話出来ないが、ともあれこの夢枕に内蔵された驚くべき電子回路および、特殊な電磁波発生装置によって、つまり夢枕から発せられた特殊な波長、及び特殊な波形の電磁波によって、その人の持つ、亡くなった方の記憶が強烈にに活性化され、そしてその人は、あたかも現実であるかの如き、極めてリアルな夢を見るのである。

 そして実は、この夢枕を、大切な人を亡くされた多くの人々に愛用していただいた。

 詳しく事情を説明した上でお試しいただき、そしていろんなご意見、ご感想も頂戴した。

 それで、体験された方々の話では、夢の中で、亡くなった方が「生きている」ことに驚き、感動し、そしてその人との大切な時を過ごせるという。

 そしてその夢枕を使用される方々にとって、最愛の人が「亡くなった」という事実はもはや意味をなさないようになるらしい。

 それは毎夜毎夜、夢の中でその人に逢い、当たり前のように生活していく。

 とある、お子様を幼くして亡くされた方のお話では、夢の中で、そのお子様は成長され、幼稚園児、小学生、中学生…と、どんどん成長しておられるらしい。

 亡くなったお子様が成長する?

 実は夢枕は記憶を復活させるのみならず、お子様が成長したときにそうあるであろう姿を、その方の記憶をベースに、想像力たくましく、お子様はきっとこんな姿に成長するのだろうと予測されているのではと、私は考えている。

 それで、その方の話では、毎夜毎夜、眠りに就けばしばらくして夢にその子が現れ、夢はその子が学校から帰ってきたところから始まり、その子は今日は学校で何があったかという話を始め、それからその子との、当たり前のような日常があり、そして翌朝、その子が学校へ行くところで夢が終わり、目が覚めるらしい。

 つまりその人にとってはその子は「生きている」といっても過言ではないのである。

 そしてこれからも、その子の成長を見守っていきたいそうである。

 つまりその子が成長し、大人になり、就職し、結婚し、子供が生まれ、そしてその人が年老いてこの世を去るとき、臨終の夢の中で、その子が駆けつけてくれ、自分を看取ってくれる。

 その方はそう信じておられるそうだ。

 ともあれ私は、とんでもない枕を開発したものである。

 そしてこの夢枕は多くの、かけがえのない人を失い、悲しみの淵にある人たちを救ったのではないかと、私は信じている。

 そしてかく言う私も、そろそろ床に就く時間なのだが、これから夢の中で、幼くして亡くした我が子に逢うつもりだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ