タイムエイジマシン(短編、YouTube配信中)
「お前、タイムマシンで昔へ行ったことあるか?」
「そんなことあるわけねえだろう」
「だけどさ、もしもそんなことができたとするじゃん。たとえば…」
「おまえまた何か変なもの作ったのか?」
「そうだ!」
「でもこの前、タイムマシンはやめたって言っていたじゃないか」
「いやいや、今度はそんなちゃちなものじゃない」
「それじゃ、一体何を作ったんだ?」
「まあ、時を移動することには違いないけれど。で、いつに行きたい?」
「いつに行きたいと言っても…うん、そうだな、たとえば小学四年生!」
「何かいい思い出でもあるのか?」
「まあいいじゃん。へへへ」
「ま、だれかさんに逢いたい訳だな」
「まあ、そういうことにしとくよ」
「だけど、今のお前さんの姿でそこへ行っても困るだろう?」
「そうか。大人の姿じゃ学校へも行けないな」
「家に帰っても君の両親は『いつの間にそんなにでかくなったんだ?』とか言って、腰を抜かすだろう?」
「そうか。つまり俺、そこに居場所がないんだ」
「だから、タイムエイジマシンなんだ」
「何だい。それ?」
「タイムエイジマシンは改良型のタイムマシンだ」
「やっぱりタイムマシン作ったのか?」
「そうだ。しかし、ただのタイムマシンじゃない」
「どんなやつ?」
「タイムマシンにエイジマシンが付いているんだ」
「何だい、それ?」
「タイムマシンは君を違う時代へ送り込む機械と思えばよい」
「なるほど」
「それと同時に、君自身を君が行った時代に、君があるであろう姿に変えるのが、エイジマシンなんだ」
「なんかややこしいな」
「だから平たく言えば、君が小学校四年生の時代へ行けば、同時に君は小学校四年生の姿になる」
「なるほど。そうすると…」
「君は小学四年生の時代に、小学四年生として、そこにいることになる」
「ところでさぁ、そに時代の本当の俺はどうしているんだ?」
「そのことはあまり考えなかったけれど、たぶん君がその時代に二人いることになるな」
「それってややこしくないのか?」
「ややこしくなんかあるもんか。宿題なんか手分けしてやればいいし、しかも今の君の頭脳はそのままだから、四年生の宿題なんか楽勝だろう」
「そうか! それいい。さっそく連れてってくれ」
「ええと…、だけど、少し問題がある」
「何だい?」
「タイムマシンの部分がまだ未完成で、過去には行けないんだ」
「なぁんだ」
「でも、未来ならOKだよ」
「未来かぁ」
「そうだ」
「じゃ、俺を百年後に連れてってくれ。百年後、科学がどれだけ進んでいるか見てみたい」
「いや、そんなことしたら大変な結末になる」
「どうして?」
「エイジマシンで君が百年後の姿になったらどうなる?」
「ええと…、ギャー! 多分俺は墓場で骨だ!」
「だろう」
「じゃ、十年後は? 俺の嫁さんの姿でも見よう」
「あのね。実は…そんな先もダメなんだ。現時点でこのタイムエイジマシンにそれ程のパワーはないんだ」
「なんかいかさまだなぁ。じゃ、どのくらい先ならいいんだ?」
「今日のところは一時間で勘弁してくれ」
「わかったよ。一時間だな」
「よし! それでは、これから君を一時間後の世界へ送り込む。もちろん君自身は一時間後の姿になる!」
「了解!」
「それでは、あ~、この箱に入ってくれ。マシンの作動時間はちょうど一時間だ」
摂著の「タイムエイジマシン」長編バージョンのアイディアのベースとなった作品です。