表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/140

タイムレンジ1(YouTube配信中)

 彼は食堂経営の傍ら、長年タイムマシンあるいは、それに準じたものを作ろうと、日々研究を重ねてきた。

 そして長年の研究の結果、タイムマシンではなかったものの、とうとう彼はその念願の「タイムマシンに準じた」機械の開発に成功し、その機械を「タイムレンジ」と名付けた。

 というのは、その機械が電子レンジをベースに作られたという事情で、イメージは電子レンジに近かったからだ。

 そして何故にそれが「タイムマシンに準じた」ものであるかというと、タイムレンジが、「物体がかつてそうであった姿に戻す」という機能を持っていたからだ。

 少々ややこしいが、どういうことかというと、ある物体をそのタイムレンジの中に入れ、扉を閉めダイヤルを回して時間を設定すると、機械が作動を始める。

 そして程なく機械が「チン」といってから扉を開け、中を見るとその物体は設定しただけの時間、つまり「過去」へと戻っているのである。

 まだ分かりにくいですか?


 ともあれ試行錯誤の結果、いろんな成り行きもあり、彼はそんな摩訶不思議な機械の発明に行き着いたのである。

 どうしてそんな機械を? と思われるかも知れないが、とにかく、そういうふうになったのだってば!

 さて、彼はカレーライスを作り(美味しそう!)、ぺろりと食べた。それからその皿を機械に入れ、ダイヤルを回し、彼がカレーライスを食べる直前の時間にセットしスタート。

 そして機械が「チン」といえば何と、食べる直前に戻ったではないか! (再び美味しそう!)

「これだ!」彼は叫んだ。まさにこれこそが、食堂経営をやっていた彼にとっては「夢のマシン」だったのだ。

 なぜ夢か? 彼の店はセルフサービスだったので、お客さんは食べ終えた食器をお盆ごと、下膳棚に持ってくる。実はそのお盆には小型のタイマーが仕組んであった。

 そして彼は、料理を作った直後にそのタイマーをスタートさせ、客に出す。

 そして客が食べ終え、下膳棚へ戻す。

 で、次の客が来て同じ料理の注文があったら、そのお盆を客が食べ終えた皿ごとタイムレンジに入れ、お盆内蔵のタイマーが示す時間に合わせてレンジのダイヤルを回し、レンジを作動させチンといったら、あらまあびっくり。

 出来立ての料理に戻っているではないか!

 もちろん、次の客も食べ終えたら、またタイムレンジで…

 とにかくこれで半永久的に料理が作れる。

 まあ彼の店は、特別料理が美味かった訳ではないが、激安でボリュームも凄かったのだ。

 何たって材料費ゼロ。

 仕入れの手間なし。

 料理の手間なし。

 食器洗いの手間なし。

 そういう訳で店は大繁盛。


 だけとそれからしばらく過ぎたある日の事。

 あるおじいさんが食事に来て、食べ終えた後、そのおじいさんにとってはいつもの事なのだが、水の入ったコップの中に入れ歯洗浄剤とともに入れ歯を入れていた。

 入れ歯を洗浄するために…

 だけどそそっかしいそのおじいさんは、そのとき入れ歯をコップに入れたまま、お盆ごと下膳棚に置いて店を出て行った。

 入れ歯を忘れた事にも気付かずに…

 だけど彼もコップに入れ歯が入っている事に気付かず、次の客のためにお盆ごとタイムレンジに入れ、作動させた。

 ところで、そそっかしいそのおじいさんは妙に目敏い人だったらしく、実は、パクパクとその料理を食べている最中、何故かお盆に内蔵してあるタイマーの小さなボタンを発見していた。

 そして悪気もなく、パクパクとその食事を食べながら、そのタイマーをリセットして再スタートした。


 そんなこと知る由もない彼は、次の客のためにタイマーの時間どおりにタイムレンジの時間をセットした。

 そしてチンといったタイムレンジの扉を開けると、あらまあびっくり。

 レンジの中では、おじいさんの入れ歯が、その料理を旨そうにパクパクと食べているところだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ