恐怖のサナダ虫
それは人体に寄生し、体長は最大で2メートル余り。
もっともサナダ虫の仲間には、長さ10メートルにも及ぶものがあるので、その虫が特段に大きい、いや長いというわけでもなかった。
しかし、その形態上の特徴は、なんといってもその幅の広さで、伸びれば最大で幅1メートルにもなるらしかった。
だけどそんなことよりも何よりも、この虫の恐ろしさは、その行動である。
実はこの虫は大変水を好み、そしてお腹の中でこの虫に寄生されている人、つまり宿主がお風呂に入っていると、何故かそれを察知し、そしてその狂暴性を現すのである。
もちろんサナダ虫の例にもれず、この寄生虫もお尻からにょろにょろと出てくる。
だけど普通のサナダ虫の場合は、出て来たところを引っ張ればぷちりと切れて、とりあえずそれで終わりである。
あとは駆除の薬を飲めば良い。
ところがこの虫の場合、お尻から出てくると大変な事になるのである。
実は宿主が湯船に浸かっているときに、突然お尻から出てくるのであるが、そのとき虫はその幅を一気に1メートル程にまで広げ、その広がった大きな幅を生かして、虫は裏返しになりながら宿主のお尻から回り込み、そして瞬く間に宿主の体全体を、まるでオブラートのように包んでしまうのである。
こうして人間を飲み込み、その人間の形になったその虫は、湯船からもぞもぞと這い出てきて家の中を這いまわり、やがて屋外へ出て、それからカエルやヘビ等を捕食しながら生きていくのである。
もちろんかつてその虫の宿主だったその人間は、その寄生虫の「寄生虫」として、生涯を過ごすこととなる。
そして今、この小説を読んでいるあなたのお腹の中にも、もしかすると、すでにその寄生虫が住んでいるかも知れません。
お風呂に入るときは、くれぐれも御注意下さい。




