第6話 スーパーボロスバーストインフェルノアポカリプスドラゴンブレイズヘルファイアスカーレイン①
この世界に来てから、なにかが物足りないと思っていた。
それは……ず・ば・り……!!
スーパーボロスバーストインフェルノアポカリプスドラゴンブレイズヘルファイアスカーレインだ。
俺はスーパーボロスバーストインフェルノアポカリプスドラゴンブレイズヘルファイアスカーレインみたいなカッコいい火属性魔法をドカーンと放ちたい。
でも、この世界、そもそも火属性魔法どころか、『火』自体ないらしい。
いや、厳密にはあるのだ。
あるのだが、誰もその存在に気づいていない。
俺はそう結論づけた。
◇
なので、パブレに手伝ってもらうことにした。
だが、ヤツはどうも乗り気じゃないみたいだ。
「新しい魔法を生み出したからそれを使えるように手伝ってほしいだぁ?? お前がぁぁ??」
いつも魔法を練習する家近くの湖だ。
そこでパブレが煽るようにそう言ってきた。
まあ、そうなるのも無理はない。
だって、俺……5歳だし。
「お前さ、まだ5歳だろ?」
それにまだ水属性魔法しか使えないし。
「まだ水属性魔法しか使えねえ赤ん坊だしな」
そうだ、そうだ。ついでに尿も。
「お漏らしもしちまうしな」
はぁー、たしかに間違ってはないのだが……。
パブレに言われるとクソムカつくな。
だってこいつ、どうせあれだろ?
冒険者の稼ぎだけじゃ生活が厳しいからガキの家庭教師はじめたとかだろ?
そんな冒険者の底辺であるパブレに煽られたままでいいのかっ……!?
うん、よし、挑発するか。
「パブレさん、ほんとに手伝わなくていいんですかね〜?? じゃあ、お母さまに別の家庭教師でも雇ってもらおっかなー?」
「……べ、別に、それでも……」
どう見ても焦るパブレ。
俺は、本当にそれでいいのかな〜? とニヤリ顔で追い討ちをかける。
するとパブレは、わかった! と大声を出した。
「だから、それだけはやめてくれ!」
――パブレがここまで焦る理由。
生計が立てられなくなるってのもあるだろうが、それだけじゃない。
パブレはフィアナのことが好きなのだ。
フィアナへの仕草や視線で大体わかる。
でも、べつに驚くことはない。
というのも、パブレが初めてじゃないからだ。
今までも、こうした男がわが家を訪れてくることがあった。
1人とかじゃない。何人も何人も。
みんなフィアナに会いにくる。
そして、フィアナが俺を子ども部屋で寝かしつけたあと、それは突如として始まるのだ。
鳴り止まない喘ぎ声。
ベッドが激しく揺れる音。
……簡潔に言おう。
フィアナはビッチなのだ。
パブレも、それ目当てで家庭教師を請け負ったのだろう。それも多分だが無償で。
「手伝ってくれたら、お母さまには何も言わないです。どうですか、悪い話ではないと思いますが?」
パブレは、目を細めた。
「お前、ほんとうに5歳か? サバ読んでんじゃねえか?」
おっと、まずい。
「い、いやいや、そんなわけないじゃないですか! ほ、ほら、年相応の見た目でしょ??」
とかわいらしく目をぱちぱちさせてパブレを見つめた。
「ただの冗談だ。そんな見てくんな、ったく気持ちわりい」
パブレはそのまま、はぁー、とため息をもらすとこう言った。
「それで……? なにすりゃいいんだ?」
◇
というわけで、性欲に負けて、パブレ参戦。
「パブレさんの魔力を僕に貸してほしいんです」
そう言ったが、パブレは驚きもしなかった。
「……? そんなことでいいのか?」
こんなあっさりした反応はかなり意外だった。
なぜなら、この世界では、魔力の貸し借り、すなわちその流動は、禁じられているからだ。
「い、いいんですか?」
「いいから早く手出せ」
ならば、話が早くて助かる。やはり、性欲のパワーはすさまじいものだな。
手を出すと、パブレがその上から手をかざした。
「よし、やったぞ」
「え、今のでいいんですか?」
電子決済で支払いしたときくらいのスピード感だったぞ。
禁止って割に、簡単なんだな。
まあ、いいか。
これでやっと始められる。
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