表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/50

第6話 身分証明

「助けてもらっていながらすまないが」


 女剣士はそう言ってこちらに剣を向ける。


「素性がわからぬ故に、隙をみせるわけにもゆかぬ」


 と続けた。

 これはそのとおりか。おそらくではあるが、馬車の中は貴人がいる。それを守るのが彼女の役目。だとすれば、この行為は当然である。


「言って信じてもらえるかわからないが、国王によってこの国に招聘されて、期待外れだったせいでお役御免になってここにいるんだ」


 異世界から召喚されたというのを微妙にぼかす。まあ、こんな理由を簡単に信じてもらえるわけもなく、彼女の目は怪訝なものを見るような感じだ。


「なんで帰国しなかったの?それともその途中?」


 さらに質問される。帰国しない理由は帰る手段がわからないからですよ。出来ることなら俺も帰りたい。

 さて、これをどうこたえるべきか。


「無理やり連れてこられて追い出されたから、帰る手段がないんだ。持っていたお金で隣町までの乗合馬車に乗っていたけど、この戦闘を見ようと思って降りた」

「わしはこの国のことを知らぬこいつのガイドじゃな。隣町のカンダの工業ギルドに所属しておる。ほれ」


 デーボはそう言うとカードを彼女に差し出した。


「それは何?」


 俺はデーボに訊ねる。


「ギルドカードじゃよ。身分証明書になるんじゃ」

「へー」


 と会話をしている間に女剣士によるギルドカードの確認が終わり、カードがデーボに返却される。


「すまない。ドワーフの身分の確認は出来た。そのドワーフが保証してくれるのなら、貴殿を信用しよう」

「保証しよう」


 デーボは胸をどんと叩いた。なんでそこまで俺の面倒を見てくれるのだろうか。

 そんな風に思っていたら、どうやら顔に出ていたらしい。デーボがこたえる。


「わしがお主の面倒をみるのは、まだまだ美味い酒を出してくれそうだからじゃよ。酒の関係は血よりも濃いというからの」

「初めて聞くけど」

「ドワーフの世界では常識じゃ」

「へー」


 流石ドワーフ。この世界でも酒好きなんだな。

 俺たちの会話を聞いていた女剣士がまた俺に質問する。


「酒を出すとはどういうことだ?」

「この小僧はスキルで色々なものを出すことが出来るんじゃ。さっきの武器も突然出てきたじゃろ」

「いや、目の前の相手から視線を外せなかったから、よくは見れていないんだ。見せてくれるか?」


 女剣士にそう頼まれたので、追加でモンキーレンチを購入してみせた。

 今度は小さめのモンキーレンチであり、それが右手に収まる形で出現する。


「おお!どこから?」


 興奮した彼女が迫ってくる。近い、近い。


「Born from a store on a homepage top」

「どういう意味だ?」

「モンキーレンチが魔法で生まれたっていうこと。モンキーレンチマジックだね」


 と言いながら、俺はモンキーレンチを彼女に手渡した。


「これはモンキーレンチという武器なのか。先端の広がりを見るに、ソードブレイカーのようだが」


 そう言いながらぶんぶんと振り回す。

 違うとも言い出せずに、困ってデーボを見る。


「わしも初めて見るのう。鋳物か」


 こっちもモンキーレンチを知らないのか。

 はあ、とため息をつくと、アルが説明してくれる。


「この世界じゃ見たことない人が殆どモビ。僕は漂流物で見たことあるモビ」

「お、その兎はしゃべることが出来るのか!」


 女剣士が今度はアルに興味を示す。まずい、アルの素性はもう少し隠しておきたい。


「それより、馬車の中の人を待たせておいていいの?」


 俺は話題を変えようとした。

 護衛対象も外の音が止んだなら、どうなったか気になるところだろう。早くそっちに行け。


「そうだった。私の名はサクラ。貴殿は?」

「アルト・スズキ。名前がアルトで、姓がスズキ」

「あまり聞かぬ名だな。確かに異国の方か。すまぬが、しばしお待ちを」


 そう言うと彼女は馬車のところに戻る。外から声を掛けると、中からほっそりとした女性が出てくる。金髪碧眼のお姫様というのがぴったりか。

 サクラとの話し合いは結構長い。単なる報告というわけではないのか、何度もこちらをちらちらと見てくる。そして、結論が出たのか俺たちは手招きされた。

 呼ばれたので馬車の方へと歩いていく。

 サクラが女性を紹介してくれる。


「こちらはサニー・サンタナ様。前サンタナ子爵のご令嬢である」


 やっぱり貴族か。さて、どんなことになるのやら。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ