第34話 あなたはだぁれ?
サイクロプスや聖女たちが見えなくなったところで休憩となった。
そこで、サニーとパサートが俺に先ほどのことを訊いてくる。
「先ほどの聖女とどのようなことがあったのでしょうか?」
「僕も知りたい」
二人にせがまれ、内容を話すことにした。
内容を聞いた二人はショックを受ける。そして、他のメンバーの表情も暗い。
「まさか、国王がそのようなことを計画していただなんて」
「領地に帰って継承の手続きをすれば、相手も無理はしなくなるんだろうけどね」
ショックを受けてふらつくサニーの肩に手を置いて彼女の体を支えると、彼女は俺に体重をあずけてきた。良い匂いが鼻をくすぐる。
そんな彼女が続けて質問してきた。
「どうして聖女はアルトにこのことを教えたの?ねえ、答えてアルト」
その質問にどう答えるべきか逡巡するが、サニーの瞳が強く答えを求めているので、結局俺のことを話すことにした。
「サニー様。僕は、僕はね、この世界の人間じゃないんだよ。天の川銀河からきた鈴木有人なんだ」
「えっ!?」
驚くサニー。
「びっくりしただろう?」
「ううん。この世界の人間であろうと、宇宙人であろうと、未来人であろうと、異世界人であろうと、超能力者であろうと、アルトはアルトで変わり無いじゃないの」
「ありがとう、サニー様」
アル以外はみんな驚いているが、まあ薄々は気が付いていたような気もして、腰を抜かすような驚き方はしていない。
「さっきの聖女と他に勇者がいて、その召喚に巻き込まれてこの世界にやってきたんだ。で、僕の召喚は予定外だったらしく、やばい雰囲気を感じたから王城から逃げるように出てきたっていうわけだ。その時は見逃してくれた国王も、特殊な能力があるかもしれないから、念のため殺しておこうってことらしい。今話した通り、僕は元居た世界に帰らなければならないんだ。西の空にあけの明星が輝く頃1つの光が宇宙へ飛んでいく。それが僕なんだよ」
「待って!アルト!行かないで!!」
今度はパサートが俺にしがみついてきた。
「そうだね。パサート様の問題が解決するまでは帰れないか」
そこまで話をしたときに、アルが俺に囁く。
「何か近づいてきたモビ」
「モンスターか?」
「人間モビ」
そうしてしばらくすると、山賊風の男たちが30人ほど、俺たちを取り囲むような位置取りで出現した。
「見れば護衛がすくねえようだ。大人しく女と金を差し出せば命だけは――――」
【電気配線ミス】
俺は脅し文句の途中でスキルを使った。
スキルが発動すると、エレベーターが複数出現して、男たちを閉じ込めた。
このスキルはとあるビル工事での電気配線ミスにより、停電試験の最中に止まるはずのないエレベーターが止まってしまい、中に人を閉じ込めてしまったという不良に起因するスキルだ。ビル管の品管が死ぬような思いで原因を調査したが、その原因は図面の読み間違いだったというものである。なお、閉じ込められた人が偉かったので、すごく大騒ぎになった。
ガンガンとエレベーターの中から叩く音が聞こえるが、エレベーターはびくともしない。
「ヒッポリト星人みたいに、あの中にコンクリを流し込んで、固まったところで東京湾にしずめてやろうか」
俺がそう言うと、アルがつっこみをいれる。
「ヒッポリト星人がなんだかわからないモビが、多分それは違う怖い人がやることモビ」
流石にコンクリを流すのはしなかったが、どうせ今までに人を殺めてきただろうということで、そいつらはそのまま放置してサンタナ領を目指すために進み始めることにした。
短いんだけど区切りがというか、仕事で嫌なことがあったので気晴らしに。