第25話 エースのチョー
クレスタは転移のスクロールを使い、カンダの犯罪者ギルドに戻っていた。突然クレスタが出現したことで、そこにいた支部長は驚く。
「どうした、いきなり出現したりして」
その質問にクレスタはクククと笑った。
「アルミラージを何とかすれば、あとは楽な仕事だとおもったが、どうして。かなりのやり手な護衛がいるじゃないか。リサーチ不足だぞ」
支部長はその言葉をきいて、背中に冷たいものが走った。顔は笑っているものの、クレスタからは怒りが感じられたのだ。
そこに二十歳くらいの男が入ってくる。いま売り出し中の若手ナンバーワンの殺し屋であるチョーという男だ。
「支部長、終わったぜ」
彼は請け負った仕事が終わったことを報告しに来たのである。
「仕事がはやいな」
支部長が労うと、チョーはクレスタを見て口角をあげる。
「世代交代するためにも、実力は見せておかねえとな」
その態度にクレスタはイラッとなった。
「エースのチョーなどと呼ばせているようだが、まだまだエースには早い。キング・チョーあたりでいいんじゃないか」
そう言い返した。
エースのチョーというのは、トランプで一番強い札であるエースからとっている。キングは二番目に強い札だ。クレスタからしてみれば、一番の座はまだまだ明け渡さないということである。
「フン、言ってやがれ。てめえが失敗した仕事があれば、俺が後始末をしてやるぜ」
チョーはクレスタに顔を近づけてそう言った。
が、次の瞬間腹部への激痛に顔をしかめる。そして、痛みのする場所を見た。
「てめえ――――」
と言ったところで言葉が出なくなる。
クレスタはナイフでチョーの腹部を刺しており、それを引き抜くと、次に喉を斬ったのだ。
「だから、エースにはまだ早いと言ったのだ。さて、支部長。俺はまだ仕事が失敗したとも言ってない。護衛の実力の情報が抜けていたから、それを踏まえて次の手を考えているのだ」
「わかっているって」
支部長はゴクリと唾をのんだ。
クレスタが失敗したという話をすれば、自分もチョーと同じ運命をたどるというわけだ。クレスタからはそうした圧が出ている。
犯罪ギルドの支部長ともなれば、危険察知能力は高い。自らの身に降りかかる危険には敏感なのだ。ここで敢えてクレスタの評判を落とすなどというリスクは取らない。
「仕事が終わったら、また報告に来る」
クレスタはそう言うと部屋を出て行った。
支部長はそこで大きなため息をつく。
「はーあ。しかしまいったな。あのボウイが手こずるような相手だとは。依頼料と釣り合わんぞ」
過去作でエースのジョーを出したのに、誰にもコメントされなかったのでもう一度。他の小ネタは結構コメントもらえていたんですけどねえ。なお、今回はチョーなので、元ネタは『このまちだいすき』に特別出演した『たんけんぼくのまち』チョーさんの、エースのチョーです。それがエースのジョーのパロディなんですが。キング・チョーはウルトラセブンなんですが、その登場回のサブタイトルがウルトラ警備隊西へであり、デーボの元ネタになっているディーボというドワーフが出てくるソード・ワールド・リプレイで『スチャラカ冒険隊 南へ』っていうタイトルがあるんですけど。それを言いたいだけの回でした。