プロローグ
鳴り響く警報音。
まっ赤に染まった視界。
ビカビカ点滅するいつもそばにあったそれ。
一体何が起きているのかさっぱりわからないけれど、物凄い緊急事態なのは間違いない。
けれども、周りの人たちは静観の姿勢である。慌てているのはわたしだけのようだ、というよりも【停止】している?
『現在の仮解放では制御不可能です。魔臓破裂回避の為至急第一解放を成功させてください』
無機質な声が謎の警告をしてくる。制御不可能って何が?解放って何を??っていうか!魔臓破裂したら死ぬのでは!?
「いやいやいや、まったくわからないんだけど!」
急かすように警報音が大きくなった。だから、わたしにどうしろっていうの?たった6歳のわたしにっ……
ん?わたし、6歳だっけ?
見下ろした手のひらは小さかった。どうみても幼児の手だ。
おかしい。“私”は、とっくに成人して平々凡々な社会人として労働に勤しみ、それなりに充実した私生活を送っていた。今日だって、ストレス発散と適度な運動も兼ねた趣味のバッティングセンターの打ち放題をしに、マイバット持参で出かけたのに……
「こんな小さな手じゃ、ジローを握れないじゃん!!」
『第一解放に成功しました。制御機能が正常化、警報を解除します』
安全宣言と同時に、わたしの小さな手には、マイバット〈ジロー〉縮小版が握られていた。