消費税を下げると、景気は多分とても悪化する。少なくとも目先はね。
景気対策で消費税を減税しよう、というような動きもあったりするのですが。それで政府の所得減税をけちょんけちょんに言ったり。しかし、政府の所得税減税は悪くないやり方なのですよ。これは、政府がやると決めたらすぐに実施できる。でも、消費税はそうではないのですよ。
消費税減税って、スーパーとかのレジをちょちょいっといじって税率を変えれば、すぐに変える事が出来る、とでも思っているような人がいます。しかし、消費税の流れとしてB2Cっていうのは実はほんのごく一部であり、B2Bがそのほとんどを占めています。
そして、B、すなわち事業者において消費税を変えるというのは大変な事です。仕入れ税額控除を考えると、在庫についても(少なくとも帳簿上では)どの在庫がどの税率で仕入れしたかをずっと(売り切るまで)管理しないといけません。つまり、税率が変わると基幹システムの大幅な手入れが必要になってきます。
ですので消費税の場合、税率を変更するよ、って決めたとしても即座にそれを反映することはできません。2年とか3年とかの期間が必要になります。その間に基幹システムを修正し、テストし… というデスマーチが沢山発生することになるでしょう。
ちなみに、システム開発の絶対的な戒めとして、「今実際に必要とされていない機能は、作成してはならない」というのがあります。no need toでもmay notでもなく、must notなのです。「こんなこともあろうかと」は宇宙開発ならともかく、通常のシステム開発ではやってはいけない。
現行の要求仕様の範囲内で将来を見越して修正しやすいように作っておくというのはありにしても、将来こうなるかもしれないからという予測の元に作りこんではいけない。なので、ほとんどのシステムで新規・追加の改修は必要になる事でしょう。
そうすると何が起きるか。そう、買い控えが起きます。特に価格の高い耐久消費財を中心に。車や住宅などは、どうしても即時に必要だ、という場合でなければ購入を先延ばししようという事が起きるでしょう。結果として、デフレが発生する。
一度そうなってしまうと、多分消費税が下がっても、だからすぐ買う、とはならないでしょう。現にデフレが進行すれば、もう少し待って、という思いが出てきます。結果として景気の悪化は長続きすることになってしまうでしょう。
さて、ここまで来れば景気を刺激するための方策は自明ですね。そう。消費税を上げる(と宣言する)のが一番です。そうすると、駆け込み需要が発生し、高額な耐久消費財は売れまくるでしょう。
ただし。消費税を上げた場合は下げた場合と異なり、実際に上げたあとには間違いなく不況になるでしょう。先食い需要の反動と、消費税上げがダブルパンチで来るのですから。
と言う訳で、消費税を、特に税率を大幅にいじるのは上げるにしろ下げるにしろ得策ではないのです。いじるなら、小幅で小刻みに、という事です。
そういった事も考えないで、「消費税減税を」というような政党は信用してはいけない、と思うのですよw
とりあえず、これは全般の税率の話ね。
軽減税率対象品目は耐久消費財でないので、この話とは別。あと、目的の景気刺激と家計補助というのも別の話になるので、ここではあくまで景気刺激の観点から。