食べたくなるほど可愛らしい
「百合、君はまだ僕に食べられたいですか?」
「はい、もちろんです」
私が何の気なしにそう答えれば、辰巳さんは俯いた。
「辰巳さん…?」
「ねえ、百合」
「はい」
「君は食べたくなるほど可愛らしいですね」
顔を上げれば、泣きそうなお顔。
それを見て、嬉しくなる。
「食べたくないと思うほど、愛してくれました?」
「…ええ。でも、君を見ているとお腹が空くようになりました。本当に、君は魅力的な獲物だ」
「食べたいですか?」
「ええ」
私がにっこり笑えば、彼は泣きそうな顔をしながら笑った。
「…本当に、愛しています。だから、僕が君の望みを叶えて差し上げましょう。共に永遠を生きるのです」
「嬉しいです」
「寂しいですが…これでずっと一緒ですね」
「はい」
彼は龍の姿になる。
家が彼の身体に耐えられず倒壊した。
けれど私は彼のおかげでもちろん無事。
「そうそう。あの破魔の力を持つパワーストーン。おそらく君の親そのものですよ」
「え」
「亡くなった後も君を愛していたようです。一緒に腹のなかで溶かしてあげましょう」
「…」
捨てられたと思っていたが。
愛されていた、らしい。
「君の親を殺して君を捨てた男は、呪っておきます?放置します?」
「幸せに暮らしていますか?」
「ええ」
「なら呪い一択で」
「ふふ」
彼が鳴いた。
龍の咆哮が響く。
「これで、死ぬより辛い目に遭うでしょう」
「よかった」
「…では」
いただきます。
 




