スポーツの日
「ねえ、百合」
「はい、辰巳さん」
「今日はスポーツの日ですよ」
「あら」
「僕とスポーツしませんか?」
辰巳さんからの突然のお誘いは、もはやいつもの恒例なので素直に頷く。
すると辰巳さんは、風船を取り出した。
「風船バレー、やりましょうか」
「いいですよ」
二人で風船バレーを楽しむ。
そこまで激しくないスポーツだから、普段スポーツをしない私でも楽しめた。
辰巳さんも楽しそうに笑って付き合ってくれる。
「楽しいですね、辰巳さん」
「ええ、楽しいですね。百合と一緒ならなんでも楽しいのですが」
「ふふ、私も辰巳さんとならなんでも楽しいです」
そうして飽きるまで風船バレーを楽しんで、疲れてクタクタになると二人で縁側で日向ぼっこしながらだらける。
「心地よい疲労感ですね」
「とても素敵な時間でしたね」
来年もまた…と思ったが、きっと私たちに来年はないのだろう。
その頃には辰巳さんのお腹の中だ。
開きかけた口を閉じる。
代わりに出たのは、楽しい思い出になりましたという感謝の言葉。
辰巳さんは微笑んでくれるばかりだった。




