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お月見
「ねえ、百合」
「はい、辰巳さん」
「今日も都合よく休みですし、せっかくの日和ですからお月見しませんか?」
「ああ、もうそんな時期ですか…」
「ええ、今日の月は特別綺麗ですよ」
月にさして興味はないが、辰巳さんが望むのなら断る理由がない。
「わかりました、お月見しましょうか」
「ええ」
辰巳さんと一緒に月見団子を用意する。
そして夜、月見団子をお供えしつつ二人で縁側で月を眺めながら雑談する。
「本当に、なんだかいつもより綺麗に見える気がしますね」
「ええ、とても美しいですね」
「辰巳さんとこんな景色を眺めていると、なんだか胸が温かくなります」
自分で言ってみて、ちょっと照れてしまう。
そんな私に辰巳さんは微笑む。
「僕も同じ気持ちですよ」
「辰巳さん…」
「愛していますよ、僕の可愛い百合」
「私も大好きです、愛しています」
幸せを感じて、私はただただ月より辰巳さんを見つめてばかりいた。




