デート
「というわけで、デートに行きましょうか」
「は、はい」
「お互いに支度を済ませてしまいましょう」
辰巳さんに促されるままにデートの支度をする。
必要ないかと思うが、一応出来る限りのおしゃれもしてみる。
可愛いふわっとしたスカートなんて、いつぶりだろうか。
「辰巳さん、準備できました…」
「おや、早かったですね」
辰巳さんはこちらを振り向いて固まる。
「え、あの、変ですか?」
「いえ、すみません。予想外に可愛くて…」
「え」
辰巳さんは私の髪を触る。
「百合、髪を巻く方のアイロンは持ってますか?」
「一応…」
「貸してください」
「は、はい」
辰巳さんに促されるまま、アイロンを渡す。
辰巳さんは私の髪をくるくる巻いて、髪をふわっとさせた。
「うん。可愛いですよ、僕の百合」
「そうでしょうか」
「パンツスタイルも似合いますが、スカートの破壊力が凄まじいですね。髪を巻くと尚更いい。ついでに化粧もしましょうか」
「え」
「ねえ、いいでしょう?」
辰巳さんに化粧ポーチを渡す。
一応買ってはあるが全然使ってないそれ。
辰巳さんは器用に私の顔に塗っていく。
「…よし。ほら、百合。鏡を見てみなさい」
「え…これ、私ですか?」
「ええ、元々可愛らしい顔立ちではありますがやはり化粧も映えますね」
にっこり笑ってそんなことを言う辰巳さん。
「は、恥ずかしいです…」
「本当のことですから」
「うう…」
なんだか今日の辰巳さんは甘い。
「さあ、お手をどうぞ」
「え」
「デートに出かけましょう」
そして私は、辰巳さんと出かけた。
「でも、どこに出かけるのですか?」
「妖関係のところに行こうかと」
「そうですか」
「…そう思っていましたが、今日は初デートですしやめておきましょう」
「え」
「それよりも、映画やショッピングを楽しみましょうね」
そして連れて行かれたのは映画館。
「さあ、見たい作品はありますか?」
「じゃあ…これで」
「ええ」
なんとなくアニメ映画を選ぶ。
アニメ映画だが内容はむしろ大人向けの作品らしく、気にせず楽しめた。
ちょっとだけ貰い泣きしてしまう、感動的なものだった。
「うぅ…」
「なかなか感動的な作品でしたね」
「最期は報われて良かったです」
「最期、ですか…」
辰巳さんが私の頬を撫でる。
「君の最期も、そうであればいいですね」
「辰巳さんがそうしてくださるのでしょう?」
「ええ、そうですね。約束ですから。ただ…」
辰巳さんの手は、ひんやりとして気持ちがいい。
「君がその時、生きていたいと願っても逃してはあげられませんよ」
「ふふ」
辰巳さんはおかしなことを言う。
「貴方のお腹で溶けることこそ、私の救いなのに?」
「…君はやはり、面白い」
辰巳さんの口角が上がる。
美しい笑みに思わず見惚れる。
「さあ、次はショッピングです!どうせ老い先短いんですから、パァっと使ってしまいなさい」
「あ、それもそうですよね」
老後の資金とか心配する必要もないのだし、どうせすぐ辰巳さんの腹のなかだ。
「じゃあ、色々辰巳さんの生活用品をもっと揃えましょうか」
「それもいいですが、君の服を買いますよ」
「え?」
そんなこんなでショッピングが始まった。