読書の秋
今日はどこに行くでもなにをするわけでもなく、休暇を楽しんでいる。
おうちデートと辰巳さんが銘打って、私を膝の間に座らせて…いわゆるラッコさん座りの姿勢。
今日もこの間楽しかったということで、朗読会をすることになった。
今日は辰巳さんのオススメをたっぷり読み聞かせてくれるらしい。
辰巳さんはそのままで図書館で借りてきた本を読み始め、私に朗読して聞かせてくれる。
その物語は読んでいて楽しい気分になる、底抜けに明るい内容のものだった。
「…そして彼は、また旅に出るのでした」
「面白かったです、辰巳さん」
「ふふ、たまにはこういう時間の過ごし方もいいですよね」
辰巳さんはまだ朗読会を続ける気らしく、飲み物を飲むと次の本を手に取った。
私はなんだか、甘やかされる幼子の気分になってしまって少し気恥ずかしい。
けれどそれ以上に、辰巳さんとのこの穏やかな時間が愛おしくて。
結局は、夕飯までの間ずっと二人でそうして過ごした。
「読書の秋、やはり楽しいですね」
「そうですね」
辰巳さんが楽しそうなので、とりあえず良かった。




