昼寝
私も辰巳さんもコンビニの夜勤をしているので、睡眠は専ら昼寝で取る。
暑い夏にエアコンもつけずに眠れるのは辰巳さんの異常に低い体温のおかげ。
辰巳さんにひっついて寝ればクーラー要らずだ。
「ただいま。そしておかえりなさい、百合」
「ただいまです。おかえりなさい、辰巳さん」
「今日もお疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
今日も今日とて仕事を上がって二人で手を繋いで帰宅。
「いただきます」
「いただきます」
そしてコンビニの廃棄品を食べる。
本当はダメなのだが、融通をきかせてくれる店長に感謝。
「では、眠りましょうか」
「はい」
ご飯を食べたら歯磨きをして、寝室に直行。
「おいで、百合」
「はい」
敷布団とタオルケット、そして辰巳さんに包まれて目を瞑る。
「今日もよくおやすみ」
「はい…」
辰巳さんに頭を撫でられると睡魔がやって来る。
辰巳さんの冷たい手がそれだけ心地よいのだろう。
目を閉じれば、意識が落ちるのは早かった。
意識がとろんとした状態で、なんとなく目がさめる。
辰巳さんは隣にいなくて、けれど身体は冷たいから先ほどまで辰巳さんは隣にいたはず。
寝返りを打って視線を動かせば、辰巳さんはなにかを食べていた。
なかなかにグロい光景。
よくわからない怪異を貪り食う辰巳さんは、けれど恐ろしさよりやはり美しさの方が勝つ。
「辰巳さん」
舌ったらずで情けない声。
けれど辰巳さんは、怪異の紫色の血を口元につけながらこちらに振り向いた。
表情はいつもと違わず優しげだ。
「起こしてしまいましたか?」
「いえ…」
「昼寝していたら、百合を食べたがる怪異が侵入してきたのでちょっと小腹を満たしていたのです」
なんでもないことのように言う辰巳さん。
でもそんな辰巳さんも好きだ。
なんて、ね。
「ふふ、お腹いっぱいですか?」
「ええ、それなりに」
「美味しいですか?」
「まあまあですね」
その後も私の視線は気にせず貪り食う辰巳さん。
食べ終えると、口元を拭って部屋を綺麗にしてから私の元に戻る。
「お待たせしました。昼寝の続きをしましょうか」
「はい」
こんな光景に慣れてしまった私も相当だ。
けれど、それが幸せだなんて…そう思ってしまうのは許してほしい。
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