古民家
古民家に着くと、荷物を置いて中を色々見て回る。
「わあ、お風呂はこんな感じなんですね!」
「あとで一緒に入りましょうね」
「え」
びっくりして辰巳さんを見るが、冗談か本気か読み取れない。
「キッチンはこんな感じかぁ」
「古き良き、といった趣ですね」
「料理するだけで楽しそう」
キッチンも趣深い。
「寝室はこんな感じなんですね」
「今日も一緒に寝ましょうね」
「はい」
寝るのすら楽しみだな。
「ではさっそくですが、歩いてお腹も空いたところで料理を作って食べましょうか」
「はい」
二人でキッチンに立つ。
基本的に二馬力で働いているとはいえ、食事は相変わらずコンビニの廃棄をもらっていて自炊することは少ない。
なのでこういう機会も貴重に感じる。
「では、郷土料理のレシピを見ながら作って見ましょうか」
「はい」
「この煮物とかどうですか?」
「いいですね、やりましょう」
「あとこの干物を焼いたのもいいですね」
二人でああでもないこうでもないと言いながら料理を決めて作る。
キッチンが趣深いのと、辰巳さんとの共同作業ということで楽しくなってしまう。
「なんだかこうしていると、新婚さんみたいですね」
「ええ、とても楽しいですね」
「はい」
そして料理ができて食べる。
「いただきます」
「いただきます」
「…うん、味付けが濃い目でとても美味ですね」
「地元直産のお野菜も美味しいですね」
「魚の干物もなかなかですね」
もきゅもきゅ食べる。
郷土料理も楽しめて美味しい。
「美味しいなぁ…」
「しみじみですね」
「なんかこういうの、いいですね」
楽しく郷土料理を味わっていると、いつのまにやら食べ終わってしまった。
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでした」
「この後は何をしましょうか」
「せっかくですから、来たのと反対側の道も散歩してみましょうか」
「はい」
二人で手を繋いで田舎道を進む。
腹ごなしにはちょうどいい。
こっちも、綺麗な田んぼの景色が広がる。
綺麗な景色に、心まで吸い込まれそう。
「楽しいですね、辰巳さん」
「楽しいですね、僕の百合」
ただの散歩なのにこんなにも心が浮き立つのは、きっと辰巳さんのおかげだろう。
「ありがとうございます、辰巳さん」
「どうしました?」
「辰巳さんと一緒に来られて良かった」
「ふふ、僕もですよ。百合と来られて良かった」
そうして景色も堪能してから、また古民家に戻った。
そのあと二人で引っ付いてシエスタした。
辰巳さんの体温は相変わらず低くて気持ちいい。




