シャワー
辰巳さんに連れられて帰ってきた。
辰巳さんは荷物を乱暴にリビングのソファーに放ると、私を連れてお風呂に向かう。
着衣のまま、温かくしたシャワーをかけられた。
「着衣のままですみません。ただ、裸にさせると僕が洗ってあげられないので」
「…まあ、洗えば大丈夫なのでいいですけど」
「触られたのは頭だけですね?」
「はい」
丁寧にシャンプーされる。
「あの、自分でもできますよ?」
「可愛い君を上書きしたいので」
「…ふふ」
そんな場合じゃないのだけど、ヤキモチが嬉しくて笑ってしまう。
「百合?」
「ごめんなさい。でも、ヤキモチが嬉しくて」
「…君はなんでそんなに可愛いんですか」
ぎゅっと抱きしめられる。
「辰巳さんまで濡れちゃいますよ」
「愛してるのでいいのです」
「どういう理屈ですかそれ」
くすくすと笑う私に、辰巳さんはすんすんする。
「うん、あの男の匂いも落ちましたね」
「え」
「龍ですから、敏感なんですよ」
そんなものか。
そう思って辰巳さんをみれば、辰巳さんは少し困った顔をしていた。
「…強引過ぎましたね、すみません」
「ヤキモチを焼いてくれる分にはいくらでも」
「君が可愛過ぎて僕の胸は限界です」
辰巳さんの胸に手を当てると、本当にドキドキしていた。
嬉しくなる。
嬉しくなるから、追い出すことにした。
「じゃあ、辰巳さん。お互い着衣の上とはいえ一緒にシャワーは危なっかしいので一旦お外出てください」
「え」
「色々危ないのでリビングで待っててください」
「えー」
なんだかんだいいつつも外に出る辰巳さん。
濡れた服を洗濯機に入れて、シャワーを浴び直す。
首の後ろから温かいお湯をかけて、身体を温める。
せっかくなので頭だけでなく全身洗ってからお風呂をでる。
辰巳さんがタオルと着替えを置いておいてくれたらしく、それを使ってお風呂を上がった。
「辰巳さん、タオルと着替えありがとうございます」
「いえ、僕こそすみませんでした」
「本当に気にしてないので大丈夫です。辰巳さんも濡れちゃったしついでにどうぞ」
「そうですね、軽くシャワーを浴びてきます」
辰巳さんもシャワーを浴びて温まって出てきた。
辰巳さんはもう一度私の匂いを確かめて、僕と君だけの香りだと微笑んだ。
ちょっとだけ変態っぽいけど、辰巳さんならまあいいや。




