ホラースポット
「ねえ、百合」
「はい」
「ホラースポットに行ってみませんか」
「え」
「肝試し、デートっぽくないですか?」
いや、肝試しは二人でやるものじゃないしデートっぽくはない。
「デートっぽいですか?」
「おや、違いました?青春といえば肝試しだと思ったんですが」
「青春とデートはイコールじゃないです」
「ふむ。では別のデートプランを考え直しますね」
…デートプランか。
辰巳さんが考えてくれたデートプランなら乗らないわけにいかない。
「…いえ、行きましょう」
「百合はいいんですか?」
「はい。辰巳さんが考えてくれたプランなら」
「おや」
辰巳さんは私の言葉に少し嬉しそうに笑った。
「では、行きましょうか」
「はい」
向かったのは廃墟。
ラブホテルだった場所だ。
「わぁ、なんだかすごい雰囲気ですね」
「何かいそうな気配はありませんけどね」
「まあ、ホラースポットなんて実際に行っても何もないことがほとんどですから」
「おや、経験があるのですか?」
「玲奈さんに無理矢理連行されて、一人肝試しさせられたんです」
その言葉に辰巳さんの目つきが鋭くなる。
「おやおや…やはり、彼女には一度お礼が必要なようだ」
「あらあら」
神様に目をつけられるとか、とんだ災難。
まあ頑張れ。
「さて、ここが幽霊が出るという207号室ですが」
「…幽霊の気配はないですね」
「ええ、その代わり人の気配はありますが」
誰かが奥の部屋に入っていた。
悪いモノの気配ではないのは、さすがに私でもわかる。
「…どうします?」
「どうもしません。入ってみましょう」
入ると、奥に隠れていた人がわぁっ!!!と驚かせてきたが、こちらはノーリアクション。
隠れていた男性と女性の混合グループはこちらのノーリアクションに逆に驚いて気まずい雰囲気に。
「あ、なんかすみません」
「いえいえこちらこそ…」
その場でグループとは別れて帰った。
「結局なにもありませんでしたね」
「でも、ちょっと面白かったでしょう?」
さっきのグループの反応を思い出して今更吹き出す。
「ぶっ…ふふ、たしかに」
「今日のデートプランも大成功ということで」
「楽しかったですね」
「ね」
そして今日のデートは終わった。
でも、時々思い出しては笑ってしまう思い出になった。




