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心欠次元   作者: 巳原 夜
9/15

9 特訓 ー息抜きー

忙しない日常から少し離れて今日は休日。

照のとある休日のお話。




ちゅんちゅん・・・ちゅん


 目覚まし時計の鳴らない休日の朝。照はカーテンの隙間から差し込む朝日とスズメの囀る声で目を覚ました。まだ、覚醒しない頭で目を開け天井をぼーっと眺める。


(今日は、休みか~)


 いつもは目覚まし時計のあのけたたましい音がうっとおしくて、止めても起きなくてはという罪悪感が二度寝をさせてくれないのに鳴らなければ鳴らないでそろそろ起きなくてはという気持ちになる。しかし、休日はいいものだ。予定のない休日ほどいいものはない。


 やっと身体を起こして両手を上に伸びをする。ちょっと身体が起きてきた。自分の部屋を出て階段を降りていく。


「おう、照、おはよう」


 受鈴が照に朝のあいさつをする。照は、物心ついたときには受鈴の家で暮らしていた。両親とは住んでいない。色んな大人に聞いたことがあるが、遠くに調査員として遠征しているやら、貫化されて死んだのではないかとか両親にまつわる色んな噂を聞いてきた。

 どの話も信憑性が低く、信じる根拠に乏しい。だから自分で見たものを信じることにした。自分には両親はいない。受鈴の家族とは血がつながってはいないが、家族のように接してくれるこの家族との時間を大切にしようと思っている。


「受鈴くんおはよう。はやいね、朝練?」


「おう!父さんとそこの滝まで行ってきた。」


「た、滝!?朝からすごいね、お疲れ様」


 受鈴は父の律と朝から修行に行ってきたのだろう。山に走りに行ったり川を数キロ泳いできたりと朝からハードなのはいつもである。照が驚いている最中も受鈴はご飯をもりもり食べている。今日は焼き鮭と卵焼き、みそ汁に白米だ。食欲をそそる匂いにお腹の虫が鳴った。


ぐぅう


「はは、いい音!早く食べな」

  

 照のお腹の音を聞いて笑ったのは受鈴の兄・要である。彼は周防家の長男で人聖学園の学生である。照と受鈴の2つ上の先輩で5年生だ。5年生では、現役の浄貫師たちに交じって実践を行う。現場に出て経験値を積むのが訓練の大半になっている。

 要も周防家の名に恥じないとても優秀な調波師であり、彼の特徴は、”過去”にも調律できることである。この能力は調波師の中でも数人しかできず、要はあらゆる事件に派遣されている。


「はい、いただきます。」


「照、飯食い終わったら今日もやるか?」


「うん!お願いします!」


 休日は予定が入らない限り受鈴は照の調律訓練に付き合ってくれる。未だに成功しないが、根気よくアドバイスをくれる受鈴は本当に優しい。


(ぱっ!とかすっ!とかアドバイスがちょっと抽象的すぎるんだけどね・・・)






―――――

  

 食事を終え二人は家の近くの公園にやってきた。公園内には、人がおらず閑散といている。


「よーし、今日こそ成功だ!頑張ろう」


「うん!よろしくお願いいします!」


 気合は十分だ。受鈴が照から離れていく。公園の恥にあるブランコまで行って振り返る。


「まずはこの距離。」


ちりん


と鈴の音がなったと思ったら、照の目の前に受鈴の姿が現れる。


「おぉ、さすがだなぁ」

 

 照は感心するばかりである。早速目的地のブランコの方へ意識を向ける。

(すっと集中してぱっ!)


「うぉおおおお!」


受鈴の叫ぶ声が聞こえる。やっと成功した!?!?


「ぉお惜しい!!」


目を開けて自分の場所を確認するとブランコとは間反対の滑り台の真下にいた。


「園内に調律できたのは進歩だぞ照!!」


「う、うん!次こそブランコのとこ!」


「よっしゃこぉーーーい!」


 照は再び集中を高めていく。

(ふぅー。すっはぁあああああ!)




「あれ、照どこ行った。」


照が公園内から消えた。まぁ想定内である・・・。


――――――



ぽちゃんっ・・・



(あれ・・・?なんか温かい・・・てかお湯?きもちぃ~じゃなくてっ!!)


 照はお湯の中に浸かっている感覚に一瞬ほんわかしながらも驚いて目を開ける。


「よぉ、照。ラッキースケベか?」


「えっ!!」


目を開けた先に見えた風景はお風呂・・・しかも百合音とその他女子がいる。

彼女らは全く動揺せず、むしろ寄ってきた。


「照ぅ、また調律失敗したのかよ~情けないな」


 そう言いながら百合音は腕を照の肩に回す。照はもうどこも直視できずに顔を真っ赤にしながら震えている。こういう反応がもっと女子たちを盛り上がらせるのである。


「わぁ~尊堂くん真っ赤ぁ~か~わいい~」


 百合音の友達であるもう一人の女子もどんどん寄ってくる。我慢できなくなった照は勢いよく立ち上がろうとするが


「まぁもっとゆっくりしてけよ、な?」


と百合音は湯の中に再び照を浸からせる。照は服を着たままなのでお湯の熱さと恥ずかしさのためか上がってきた体温でそろそろくらくらしてきた。


「い、いや・・・もう・・で・・・ます」


言いながら鼻から血がたらりと湯に落ちた。

(あれ、血・・・?これは、そろそろやばい・・・)

意識を失いそうになりながら調律しようと再び目を閉じる。

(あぁ、百合ちゃんごめんなさい・・・僕は何も見ていません・・・)




―――――――


 顔にそよそとと心地良い風が当たる。

(気持ちい・・・はっ)


照は勢いよく身体を起そうとするが、ふらっとしてまた布団に横たわる。目だけでここがどこなのかを確認しようとすると


「照~大丈夫か~?」


上から受鈴がうちわで扇ぎながら体調を聞いてきた。


「あ、うん大丈夫・・・僕どうしたんだっけ?」


さっき起こったことは夢であってくれと受鈴に自分が意識を失っていた間のことを尋ねる。


「ん?百合音たちが運んできたぜ?照~女子風呂に調律したんだってな」


 にやにやしながら見下ろしてくる。


「はは・・ははは・・・」


 まだまだ修行が足りないようである。とりあえず明日学校で百合音たちにからかわれるのをどうやり過ごすのかを残りの休日の時間で考えねばならない。

 










がんばれ照・・・!

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