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心欠次元   作者: 巳原 夜
8/15

8 弾丸と刹那



羽留人の合図で百合音と受鈴の対戦が始まった。



ガンっ ガンガンっ


先手は百合音が銃弾を撃ち込む。連射


百合音は動かず受鈴の動きを追っていく。

受鈴は防戦一方で撃たれた弾丸を躱していく。



「うっ、よっと」


受鈴は調律であちこちに移動する。さすがだ。正確に百合音の銃弾をよけ、狙いが定まらないようとにかく逃げている。


「逃げているだけじゃ、始まらねーよっ」


百合音はもう一丁の銃を腰のホルダーから抜き、二丁構える。


ガンガンガンっ  ガンガンガンっ


さらに連射のスピードが上がり隙がなくなる。


「わぁおっ!百合ちゃんさずがに物騒!」


受鈴は思わず叫ぶ。


(銃弾を避けるために俺が移動するのはそろそろコスパが悪い。あの乱射がもしも移動先にぶち込まれたらジ・エンド。いっちょやってみるか・・・)


受鈴は調律で逃げるのを一旦やめ、止まって百合音に向き合う。


「お、もうギブアップか?」


百合音はスチャッと受鈴に狙いを定める。

トリガーに人差し指をかける。


ガンっ


弾丸が放たれる。次の瞬間




ちりん




受鈴の様子は変化ない。どこからも血は出ていない。



「上だっ!!」


観戦していた歌火が空を見上げて叫んだ。


??


全員が上を見上げる。


!!


受鈴は向かってきた銃弾を瞬時に調律し、方向を変えたのだ。

目標物を失った弾は空に向かって打ちあがり、やがて失速。


ぽとっ


そして弾は地面に落ちた。


「ちっありかよそれ・・・っらぁ!」


百合音ははっとしたあと間を置かず打ち続ける。



ガンガンガン


受鈴も向かってくる銃弾を次々に調律し、空へ放つ。


ぽとぽとぽと

弾が雨のように落ちてる。


「周防のやつ度胸あるな、俺絶対怖いよあれ・・・調律なんて間に合わないよ」


海斗は感心しているのか、怯えているのか二人の動きに目が離せないでいる。


「はっ、ふっ」


受鈴は息が切れていきたがやめたら身体に穴があくのが確定しているため、調律を続けるしかない。

(こんなのはずっと続けてられないな、はぁ、はぁ、はぁ・・・)


相変わらず百合音は銃を撃ち続ける。

装填がすさまじく速い。息つく間もないのが厄介だ。


「ゆりゆりすごぉい!バンバンかっこいい!」


歌火が跳ねながら興奮している。


「しかし、二人とも動作が速い、根競べ・・・ですね。」


雷がつぶやく。


ガンっ


すると次の弾丸は空には消えなかった。


「っつ!!!」


百合音の右腕に銃弾がかすった。右腕を下ろすと、ぽたぽたと赤い血が指をつたって地面に落ちる。

受鈴は調律を使ってカウンターをしたのだ。

逃げ回っていても埒があかない・・・。動きを止めて形勢を整える。


百合音が痛みで動きが一瞬、止まった瞬間


!?


「うっ」


受鈴が百合音の目の前に調律してきた。助走をつけて拳を顔面にたたきつける。


「ゔぁっごほっ」


百合音が反動で一歩下がり片膝をつく。


「やってくれるじゃん・・・」


口の端が切れたのか、血が出ている。左手でそれを拭いながら立ち上がる。

また両者が向かい合い、対峙する。どちらも息が上がっている。


タタっ


二人はまっすぐお互いに向かって走り出す。

ここから組手が始まり、膠着状態が続く。

ダメージは百合音の方が多いが、タフな身体さばきだ。


「ふっ・・・おりゃっ!」


「はぁっ、うっ!」


お互い調律を使わずやり合っている。体力も底をついてきた。

最後は百合音が受鈴の足を払った。

背中から倒れ、衝撃のため目を閉じる。


「ってぇ」




目を開けると、額に銃口が向けられていた。


「はぁはぁはぁ・・・・参りました。」


受鈴は一本取られたという風に胸の前に両手をあげた。


「勝負あり!勝者教戒院!」


羽留人が対戦終了の合図をする。



「ん」


百合音は左手を差し出し、受鈴を起き上がらせた。


「ちっくしょー、やられた。百合ちゃん弾いつ切れんのよ・・・」


永遠に続くかと思った銃弾の雨に受鈴はやれやれとこぼした。


「まさか調律をあんな風に使うなんて思わなかったよ。今度弾をもっと早く相手にぶち込む調律方法教えろ」


百合音の弾丸がこれ以上多く、速くなったら相手の息の根はそれこそ刹那であろう。


「はは、恐ろしいこと言うね」


「教戒院、医務室行ってこい、倒れるなよ」


羽留人が百合音の腕を気にして処置してもらうよう促す。


「はい、じゃ」


百合音は医務室に向かって歩いて行った。


「周防も、いい対戦だった。自分に足りないものだらけだったろ。力もメンタルも」


「はぁ、百合ちゃんにメンタル勝てる人この学園にいないと思うんですけど・・・もう絶対やりたくないっす」


再び対戦なんてまっぴらごめんだと苦笑いをする。

受鈴もフィールドの外に向かって歩き始めた。

二人とも大きな収獲だっただろう。自分にはないものをどうしても突きつけられる。

しかし、実践ではその相手が力強い仲間となる。

己を知り、相手を知る。さらにお互いの力がどのように交わるかを考えることで見えてくるものがあるはずだ。








百合音と受鈴の対戦は百合音が勝利した。

タイプの違う相手だからこそ新しい発見があっただろう。

さて、次回はどの組み合わせの対戦が始まるのであろうか・・・


対戦シーンはなかなか描写が難しいです。自分の中のイメージがうまく伝わるよう頑張ります。

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