7 幕開け
町での騒動が終わった。
学生たちも初の遭遇で浄貫師への道に実感がわいてきただろう。
ここからは日常に戻り、学園での訓練がまた再開する・・・
―――学園内にある、演習場に学生と教官たちが集まっている。
「この世に生きているものは、生まれた瞬間から今の姿かたちをしているのではない。むしろ全く違う生き物だと錯覚してしまうじゃろう。」
そう学生たちの前で話始めたのは人聖学園の学園長である。
「我々の原点は何か、我々はどこから来たのか・・・。君たちが受け継いでいるものはその原点から長い時を経て備わっているものじゃ。本質を感じ、”身”を持って力を解放するのじゃ。」
これから始まるのは、学生同士による力くらべ。といっても訓練の一環であり、自分の持っている素質をお互いに高め合うことが目的である。
調律の能力は次元内外を移動するだけではない。各々が持っている素質は全く異なる。使いこなすには己を知り、工夫することが必要だ。
例えば、調波師の家系である受鈴の周防家は、「移動」に長けている。次元内の移動だと父の律は1000キロほど移動できる。また、過去への移動もできる者もおり、その4次元的な能力は浄貫師にとっては稀有な存在である。
「君たちはまだ、守護神を授かってはおらぬだろう。守護神はただ守ってくれる存在ではない。守り守られ、一緒に成長していくパートナーとなる。わしの守護神が見える者はいるかね?」
学園長は学生を見渡す。
「種」
「種・・・ですか?」
照と百合音は同時に言った。
「たぁねぇええ?」
受鈴が素っ頓狂な声をあげる。予想外の答えだったらしい。
「おぉ、そうじゃ。ほほ、今年は見える者が二人もいるんじゃな」
学園長は感心してうんうんとうなずく。
「・・・・ふん」
その様子を見ていた海斗はなんだかつまらなそうだ。調律もできない照が自分が見えない守護神をみえることが気に入らないらしい。
「種、というと生き物ですらない無力なものだと思うのじゃろ。しかし、己の想像力で芽吹かせてみよ、花を咲かせてみよ、さらにはそれが実ったあかつきにはどんな力を授かるのじゃろうな。」
「学園長のそのお力は、町の至る所で感じます。この町を支え、見守っていらっしゃるのでは?」
照は、学園長に自分の感じているのことを話してみた。実際、学園長の側には守護神の姿は見えない。しかし、町の至る所でいきいきと彼の力を感じるのだ。
「うむ、まぁいずれ分かることじゃろう。さて、力くらべといっても自分の力をひけらかすだけじゃならん。相手の力を見極めるのじゃよ。相手あっての己、その逆もまた然り、である。では健闘を祈るよ。」
学園長の話が終わり、羽留人が話を引き継ぐ。
「じゃ、ここからは俺が。今回は1対1の対戦を行う。どちらかが参りましたと言うまで・・・だ。」
「生死は問わないんですか?」
目を細めて八雲雷が質問する。
「それが必要かどうかは自分で判断だ。これも訓練ということを忘れず目的を遂行しろ」
羽留人は含ませるように答える。人によって解釈が違うことを理解しているのだろう。話を聞いてどんな判断をするのかも見ているぞ、ということだ。
「ぶっとばしていーってこと?」
歌火はもっとストレートに聞く。小学生くらいの年の子だ。単純に解釈したのだろう。
「歌火様、お言葉遣いが悪うございますっ!ここは、『やっつけてしまってもいいのですか?』というふうに・・・」
山田は歌火の発言にひやひやしていて取りなそうとしているが、フォローがイマイチ下手である。
「ん゛ん゛・・・ごほん。静かに。今から第一対戦目の組み合わせを発表する。呼ばれた者は前へ。それ以外はフィールド外から観戦するように」
羽留人が静粛にと咳払いをして、対戦者の発表をしようとする。
期待・興奮・不安・思考・・・様々な感情が学生たちを包む。
「第一対戦、教戒院百合音、周防受鈴!」
「「はい」」
名前を呼ばれた二人は演習場の中心に歩いていく。照と他の学生たちは逆の方向へ歩いていく。
向かい合った百合音と受鈴はお互いに探るように話し出す。
「周防、お前移動しかできなくて私に『参りました』なんて言わせられるの?」
百合音の強めの挑発に少しビビりながら受鈴は答える。
「お、おう!普段は見せずに隠しておくのがとっておきの技というやつだろ?今日こそはギャフンと言わせてやるからな!」
カチャ
百合音が腰のホルダーにささった銃をひと撫ですると
びくっと受鈴は身体を震わせる。が弱みを見せたら終わりだという風に胸を張り気丈に振る舞う。
フリをしている・・・。
「蛇に睨まれたネズミだなありゃ。あのきつめの表情がとても、いい。」
海斗がにやにやうっとりと百合音を見ている。
(対戦相手で前に行っていたら勝負が始まる前に終わっていただろう。南無。)
と照は心の中で海斗に合掌する。
「それじゃ、始めるぞ。準備はいいか?」
羽留人が百合音と受鈴を交互に見てうなずいたのを確認すると合図をした。
「始めっ!!」
その合図とともに二人はまず後方へさがり距離をとる。
力くらべの幕開けだ。
百合音と受鈴の対戦が始まった。
彼らの力はまだ詳しく書かれていない。
ここから一人ひとりの特徴が伝わるよう語っていく。