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心欠次元   作者: 巳原 夜
4/15

4 遭遇 


「もう我慢できないのっ!」


グラスが割れる音とともに女性の声が店内に響きわたる。

照は驚いて声のした方を振り返った。

二人席に男女が向かい合って座っていた。どっちも20代後半といったところだろうか。

いや、見た目で年齢は正確には分からないが照よりも年上なのは間違いない。

カップルの痴話喧嘩だろうか・・・



――――――


ゆかりは興奮して大きな声をあげてしまった。

もう一度落ち着いて目の前にいる恋人の(たかし)に向き合う。


「ねぇ隆、私決めたの。もう限界。別れて」


「えっ!急だなぁ~どうしたんだよ」


隆はこんなところでいきなりなんなんだ、冗談だろという風に笑って取り合わない。


「急じゃないよ。もうずいぶん前から考えてた。理由は隆だって分かるでしょ?」


「何が原因なの?言ってくれれば直すって」

(ちっ、またこの話かよ。外だから怒鳴るわけにいかねーし、なんだよ)


こういう真面目な話は苦手だ。とめんどくさそうに手元のストローの袋をいじりだす。


「それ何回目?私、一昨日も同じ話しようとしたよ?今日はほんと、終わりにしたいからこうして外で話しているんじゃない。」


ゆかりがカフェに隆を誘い別れ話をしていることには理由があった。それは暴力だ。


「まぁそんなにかっかすんなって。家帰ってゆっくり話そ?」

(こいつ帰ったら今後こんなことできないようにぶん殴ってやる)


隆は帰ろうとゆかりの腕をつかんで立たせようとする。


「離して。今日は隆が分かったって言うまで私、ここを動かない!」


ゆかりの決心は変わらないらしい。大きな声だったので周りの客が少しざわいてきた。

隆は、その視線の多さに居心地が悪くなりさらにめんどくさくなってきたようだ。


「かんべんしてくれよ、頼むから大きな声だすな。家でゆっくり話そう」


「そうやって外面ばかり!あとで殴るんでしょ。もう嫌なの・・・!」


「何言ってんだよ、俺はいつもお前のこと考え・・・っ」



「ゔぅ・・・ぐぁっ・・がはっ」


いきなり隆が胸を掴み苦しみ始めた。


「えっどうしたの?隆?」


苦しみだした隆を不審に思い、ゆかりが手を伸ばし肩に触れようとした。

その手を隆が振り払う。


「きゃっっ」


ゆかりを見上げた隆の顔には、獣のような獰猛な目が光り、口元からは鋭い牙がのぞいていた。


「はぁっ はぁっ はぁーーー」


「ひっどうしちゃったの・・・?隆?」

(いつも暴力振るうときの顔も怖いけど、今日はなんか違う)


苦しみながらも必死にしゃべろうとする隆は


「お前は全然・・わ、分かってないなぁ・・はぁはぁ・・お、大人しくして・・れば・・ちょっと痛いぐらいで済むのによぉおおお!」


もうゆかりが知っている隆ではない。

隆の身体はみるみる毛に覆われ、前足のように手を床につき、獲物を威嚇するような体制になる。

他の客も異変に気付き、悲鳴や鳴き声で店内はパニックになる。


照も隆の異変に気付いて、構える。

(貫化されている・・・!狼か?)

貫化されると無次元の姿が有次元の姿に変異をきたす。

すなわち、隆は無次元に存在していた狼と心臓を共にしていたということだ。


もうすでに7割は獣化した隆はゆかりを床に押し倒し片方の前足で首を圧迫しながら、もう片方の前足でゆかりの腕にその鋭い爪を食い込ませていく。


「いたっ痛いよ!離して・・・」


喉を押しつぶされているので声が出ない。腕は傷口から血がにじんできた。


「なんで、なんで分かって・・くれ・・・の」


「え・・・?」

(今、なんて言ったの・・?)


「ぐぅううう、ゔぁあああっ!!」


苦しそうに声をしぼりだした隆はもう抑えがきかなくなった様子だ。

雄たけびをあげ、ゆかりにとどめをさそうと牙をむく。

照は隆をとめようと駆けだしたのと同時に


ちりん


「ぎりぎり間に合ったかっ!!!!」


照の耳に鈴の音と誰かが駆けつけてきた声がした。

そして目の前がまたさあああああっと明るくなった。




―――――――



おそるおそる目を開けると、よく見慣れた学園の校庭だった。

さっき駆けつけてきた人が周りの被害を防ぐためここに調律したのだろう。

そして照の前には坊主頭のガタイのいい男性と銀色の長髪をなびかせた男性が立っていた。


(りつ)さん!天狐(てんこ)さん!」


照は見慣れた背中に気づき声をかける。


「おう、照!無事か?」


坊主頭の律と呼ばれた男性は、振り返りにかっと照の無事を確認した。

律は受鈴、天狐は百合音の父親だ。彼らは現役の浄貫師(じょうかんし)である。


「さぁ、はじめますよ」


天狐が両手をぱんっとそろえて完全に狼となった隆に臨んだ。









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