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心欠次元   作者: 巳原 夜
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2 訓練 

無次元で不穏な出来事が起こっている最中、場面は有次元へ。

有次元の浄貫師養成機関「人聖学園」ではいよいよ訓練が始まろうとしていた。

「さて、君たちもいよいよ3年生だ、今年から実践演習が始まる。気を引き締めていけ」


前で学生たちに向かってそう話しているのは訓練師の地上羽留人(ちがみはると)だ。

ここ、人聖学園(じんせいがくえん)闘原師(とうげんし)調波師(ちょうはし)癒祈師(いきし)の3師。まとめて浄貫師(じょうかんし)を養成する6年制の教育機関である。年齢制限はなく、能力がある者は入学できるため年齢は様々である。

今年の3年生は全部で10人。個性豊かな面々が揃っている。


「はぁ~、実践は苦手なんだよね。僕、なんもぱっとしないし…」


今から始まる訓練に(てる)はとても憂鬱の溜息を吐いた。


この世界は有次元、無次元の2次元で成り立っている。一般の人は、もう一つの次元があることは認識していても、もう一つの次元への行き来は「調律(ちょうりつ)」できる者しかできない。


そしてもう一つ。有次元と無次元で『心臓を共にする者』が同時に存在するという。無次元でその心臓を持つ者が死ぬと「貫化(かんか)」され、有次元の者に変異が起こる。大抵、悪影響を受け暴れることが多い。しかしこれも普段は自覚症状がないため、「貫化」されるまで気づかないという厄介な事象だ。


調波師は次元を調律し、場所を保全する。

闘原師は貫化された者の行動を止める。

癒祈師は浄化し、新しい形で生を与える。


と、それぞれ役割が決まっている。学園に通っている学生たちは、自分に合った力を高め、浄貫師として独立することを目標としている。


訓練に戻ろう。


「調律は講義で話した通り、いつもは次元内で場所だけ移動しているが、今日は次元を超えて無次元への調律を行う。いいかー、集中しろよ」


羽留人が今日の訓練内容を話している。彼は、生まれつき目がとても悪いため、分厚い眼鏡をしている。しかし、闘原師としての高い能力を持っており、学園長から訓練師として抜擢されたのである。


「っよし!ちゃちゃっとやっちゃおう!」


一番に声をあげたのは周防受鈴(すおうじゅり)。彼の家は代々調波師を継いでおり、こんな訓練は朝飯前というとこだろう。照は受鈴にコツを聞こうと話かけた。


「受鈴くん、調律のコツ教えてくれる?僕、感覚が全く分からなくて…。今までの演習も全然違うところに調律しちゃって、自分でコントロールできないんだよぉ」


自分のできなさを半泣きになりながら受鈴に説明していると


「照、難しいこと考えないで、ふぅっと息はいてぱっとやるんだ!」


だからその感覚がね…さっぱりなんだよ(笑)

受鈴に聞くのが間違いだったな。

照が苦笑いしていると後ろからくすくすと笑い声が聞こえてきた。


「くすくすくす...調律もできないくらいならこの学園いる意味ねーだろ、やめなよお荷物くん」


東条(とうじょう)くん...それは、分かっているんだけど...」


東条海斗(とうじょうかいと)は、なぜかいつも照のことをお荷物とからかってくるくせに妙につっかかってくる。

それは、


「いちいちうるさいんですけど、モテないからってつっかかかってくんなはげ」


「ひっ百合音(ゆりね)ちゃん!俺はげてないよ~」


この強めな女子、教戒院百合音(きょうかいいんゆりね)のことが好きだからだろう。自分に構っていると百合音が間に入ってくる。それが嬉しくて照にいつもちょっかいをだす。

百合音は一匹狼タイプだが、いつもまごまごしている照に世話を焼きがちである。


「言葉遣い悪い女子はモテないわよっ」


受鈴が百合音に向かって嫌味の交じったアドバイスをすると...


ガンッッ!


百合音は海斗と受鈴の足元に銃を撃ち放った。

この学園は武器を携行することは禁止されていない。学生であっても現場に召集されることはあるからだ。それぞれ自分に合った、または使いやすいものを選んで準備している。

百合音は本来、癒祈師志願なはずで武器は必要ないのだが、「自分のことは自分で守る」と言って銃を持ち歩いているらしい。


「「ひぃっ」」


海斗と受鈴は片足をすかさず上げ、身を寄せ合っておびえている。


「こらっそこーー!!学園内では使用禁止!!」


羽留人が銃声を聞き、素早く反応して注意する。学園内で武器を使用することは緊急事態以外禁止で罰則も免れない。


「先生~、二人がセクハラしてくるんです~」


「「ちょおっ!!」」


理不尽な百合音の物言いに二人はだじたじである。


「「俺たち今、殺されかけたんだけど・・・」」


百合音をこれ以上怒らせたくない二人はもう小声でひとりごと、いやふたりごとの声の小ささでしか反論できない。


「はい、そろそろみんな集中して。調律を始めなさい。俺は全員が調律したのを見送ってから行く。さ、始め!」


羽留人の合図でそれぞれ広がり、集中を高めていく。


「じゃあ照、またあっちでな!」


シャラン


受鈴が照に声をかけ、鈴の音がした次の瞬間、彼の姿が消えた。

なんともスムーズな調律で飛ぶ鳥後を濁さず...といった見事な出来事だった。

照も負けてられないと集中する。


「あれ、結局調律のコツ聞けてない...」


うぅ、とにかくやるしかない


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