第7話
◆神坂冬樹 視点◆
2限開始のチャイムが鳴る直前に教室へ戻り席に着いた。岸元さんや他のクラスメイトの多くもこちらを見てくるので嫌になるが、高梨先生と話ができて気分が良いので気にしないことにした。
授業が始まってもテスト返却で教室内の空気が弛緩しているのもあって、視線がこちらに向いているのが落ち着かない。
返却の合間に二之宮さんが来てくれた。
「あの、メッセージをもらっていたお願いの件ですけど、今日の放課後大丈夫です」
「ブロックされてなくてよかったよ。それじゃ、落ち合う場所については目立たないように校外にしようと思う。でも、すぐ近くだから心配しないで。あとで地図を送るね」
「ブロックなんて・・・それではメッセージ待ってます」
「うん、よろしく」
二之宮さんが離れていくと、岸元さんが寄ってきた。
「冬樹、ちゃんと話をする時間をもらえないかな?」
「いいよ。今日は都合が悪いけど、明日なら時間を作れるよ」
「ほんとに良いの?」
「今、すごく気分が良いしね。多少の蟠りも気にしないでいられるよ」
「それは二之宮さんと話したから?」
「二之宮さんは関係ないよ。そんな事どうでもいいでしょ。時間を作るのやめるよ」
「ごめん。余計なことを言った。それじゃあ、よろしくね」
岸元さんが離れていくと、今度は隣の席の大山さんが声を掛けてきた。
「すごく機嫌が良いみたいだけど、疑いが晴れたから?」
「関係はあるけど、そんなことはどうでも良くて敬愛する人とふたりきりで過ごせたからだね」
「え?付き合っている人がいるの?」
「残念ながら付き合っていないね。そもそも相手が居る人だし、俺は笑顔を見られるだけで気分が良いんだよ」
「そうなんだ・・・それと、順番が逆になっちゃったけど噂の件、信じてあげられなくてごめんなさい」
「しょうがないよ。家族や幼馴染みも信じてくれなかったくらいだしね。
それに、大山さんは距離を置いてたけど俺に何もしてないじゃない。
そんなことで恨んだりするほど落ちぶれているつもりはないよ」
「ありがとう。神坂君、こんなにいい人なのに噂を鵜呑みにして無視したりなんかして、自分が情けないよ。
これからは仲良くしてもらえると嬉しいです」
「それはこちらこそお願いするよ。なにせ学校だとほとんど付き合いがなくなっちゃったからね、ははっ」
「それを言われちゃうと・・・」
他愛のない話をしていたら返却が終わり、先生の解説が始まったので授業に集中した。