第43話
◆二之宮凪沙 視点◆
幸運にも2年では冬樹と同じクラスになれた。更に委員会決めの時もしっかり冬樹の動向を押さえて同じ保健委員になることができ、それをきっかけに自然な流れで話をする様になった。
しかし、話をすればするほど幼馴染みの岸元美波さんの事が好きなのだとわかってしまい、どうにかしてその関係を崩さないと私の入る余地がないと察した。そんな中、岸元さんへ熱い視線を送るひとりの男子生徒に気付いた。
名を『鷺ノ宮隆史』という客観的に見て容姿がカッコよくサッカー部所属で2年生なのにレギュラーで、勉強も学年トップクラスと女子からの人気がすごい学年でも中心的な人物だ。私は絶対冬樹の方がカッコよくて素敵だと思うけど、女子の間では部活での活躍や振る舞いの派手さや快活さがウケているようで冬樹よりも人気がある。そんな人気がある鷺ノ宮隆史が岸元さんに好意を抱いている様なのは私にとってチャンスに思えた。
私は隆史に近付き、私が冬樹と付き合い隆史が岸元さんと付き合えるように協力し合う様に持ち掛けた。最初は正々堂々などと綺麗事を言い難色を示したけど、毎日冬樹と岸元さんの仲睦まじいやり取りを見ている内に気持ちが揺らいだようでゴールデンウィークの始まる直前には隆史から協力を申し出てきた。
隆史の気持ちの迷いを突いて言いくるめ、私が主導権を握り私が作戦を立て隆史はそれに従うというスタンスに落ち着けることができた。
作戦としては、私が冬樹に告白をし勢い余って彼の手を掴み私の身体を触らせて、そのタイミングに合わせて隆史が取り押さえ学校側に通報する。ただ、あくまで私は私自身の勢い余った行動であるとして冬樹の無罪を主張するが、隆史は冬樹が私を襲いかかっているように見えたと主張することで冬樹への疑念の火種を燻ぶらせる。事件解決後も学校内に冬樹が私に襲いかかったという噂を流布させ、冬樹が孤立する空気を作る。岸元さんや冬樹の姉妹が孤立を阻止すると思われるが、そこは高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処することで冬樹との分断を図っていくし、その中で隆史が岸元さんと距離を縮めていくこととする。不確定なところもあるものになったが、虎穴に入らずんば虎児を得ずということでゴールデンウィーク明けに決行することになった。
ゴールデンウィークが明けた週の木曜日に冬樹を生徒はおろか学校関係者も使っていない校舎の隅の空き教室へ呼び出し、作戦を決行した。
ことは思いの外うまく運び、狙い通り私が冬樹の無罪を担保しつつも教職員や生徒の中での雰囲気は冬樹がクロというものになり、更に岸元さんや冬樹の姉妹すらも疑惑の目を向ける状況になった・・・特に岸元さんと春華さんが派手に冬樹を糾弾したり、夏菜先輩が衆目を集める場所で私へ謝罪したことで真実味が強くなったのは完全に追い風となっている。
あとは、私だけが冬樹の理解者として寄り添うことで冬樹の恋人になれる道筋が立ったと思う。
ついでに、岸元さんが不安定なので隆史もうまくやれれば恋人になれるかもしれないが、それは私にとってはどうでも良いことだった。




