第36話
◆神坂冬樹 視点◆
昼過ぎに二之宮さんがやってきた。
エントランスのインターホンを受けて部屋へ上がってくるまでの間、緊張していたが高梨先生や美晴姉さんの方が緊張しているようだった。
部屋に到着した二之宮さんを玄関で迎い入れ、リビングへの移動の間に他にふたり先客がいることを伝えたら、少しだけど目が泳いだ反応が見えた。
リビングへ入ると既に先生と美晴姉さんがソファに座って待ち構えていた・・・まるで戦いが始まるかのような威圧感で・・・
美晴姉さんはなんとなくわかるけど、先生は相手が生徒じゃないか?
そんな敵視するみたいな態度で大丈夫だろうか?
「じゃあ、二之宮さん、そこに座って。飲み物持ってくるね」
飲み物を用意している間に、何か話していたみたいだけど何を言っているのかまでは聞き取れなかった。
「おまたせ!アイスティーで良かったですか?」
「はい」「ありがとうございます」「大丈夫よ」
それぞれ返事をしてくれたので座っている前に置いていき、自分の分を自分の場所の前に置いてから座った。
「えっと、それでは改めて二之宮さん、例の件での相談とのことだけど何かあったかな?
あ、ここにいる先生も美晴姉さんもだいたいの事情は把握しているし、協力もしてくれるから大丈夫だよ」
「よ、よろしくお願いします」
「そんなに緊張しないで、わたしはあなたの敵ではないから」
「そうよ。私は妹の美波のこともあるから協力させて欲しいの」
「は、はい」
「先生も美晴姉さんも、なんか雰囲気が怖いですよ。
二之宮さんも得も言えぬプレッシャーを感じちゃってるみたいだし、もう少し気楽に行きましょう」
「そうですね。ところで、なんでここに先生と岸元さんのお姉さんが!?
おふたりが神坂君のお家にいらっしゃるんですか?」
ふたりがしばらくこの家に同居する事を知られても良いと思ったていたけど、こちらから言う必要もないと思い誤魔化すことにした。
「先生は俺が学校で孤立していた時に音楽準備室で私物の保管をしてもらったり支えてくれたから最近懇意にしてもらっていて、今日も近くに来るついでにお越しいただいたんですよ。
美晴姉さんは、俺が美波や俺の姉妹と顔を合わせると精神的に負担が大きくなるからということで間に入ってもらっている流れでここに来てもらった」
これからの方針として、活動場所を作るために部活動を立ち上げ、高梨先生にはその顧問になってもらい部員は俺や二之宮さんは確定で、あとは美波や姉さんハルや鷺ノ宮に騙されて酷い目に遭っていた女子生徒に入ってもらえるだろうということで新規の部活動立ち上げに必要な最低人数の5人は確保できると思っているし、最悪人数が確保できなくても俺が校長へ掛け合えばそのくらいはどうにかできるだろうと思う。別に予算は要らないし、活動の拠点の部室がもらえれば良いのでハードルは高くないと思う。
また、明日は鷺ノ宮被害女性である3年の仲村先輩と1年の芳川さんに話をする方向で話を決め、美晴姉さんには美波達へ連絡してもらうことに決めて解散することにした。
先生と美晴姉さんにはカモフラージュのため二之宮さんと一緒に出ていってもらい、適当に買い物をしてから戻ってきてもらうことにした。
3人が家を出てから20分後・・・エントランスのインターフォンが鳴り、確認すると二之宮さんがそこにいた。
今日のところはこれから用事があるからと断ったものの、明日からも付き纏われそうで嫌な感じだ。




