第14話
◆岸元美波 視点◆
冬樹がうちに来て私と話をしてくれるという約束ができ、最近にはなかったくらい気分が上がっていた。
鷺ノ宮にセックスを強要され更には大勢に辱められた事でこの世の終わりかと思うほど落ち込んでいたけれど、鷺ノ宮の裏の顔を見抜けずに付き合ってしまった事はわたしにも非があるし、悔しいけれども諦めて泣き寝入りするしかないと思っている。
それよりも今は冬樹と前のように仲良く過ごせるようになることの方が重要だ。
心配をかけたくなかったのでお母さんにもお父さんにもお姉ちゃんにも最近学校であったことや鷺ノ宮と付き合ったことも言っていないけど、わたしの様子からか何らかを察している様で時々探るようなことを言われていたのに対ししらを切っていたものの、明日は冬樹が来るのでその事だけは伝えた。
久しぶりに冬樹が来ることを知ったお母さんは嬉しそうに「しっかり迎えてあげなくちゃね」と言ってくれて、遅い時間なのにお菓子を買いに行ってくれた。
冬樹との約束の日の午前に春華ちゃんと夏菜お姉ちゃんがわたしを訪ねてきて、一緒に話をさせて欲しいと頼まれ結局3人で冬樹を迎えることになった。
本当はわたしと冬樹のふたりきりで話をしたかったけど、春華ちゃんと夏菜お姉ちゃんを断る理由もなかったし内心では渋々受け入れた。
お昼近くなって春華ちゃんと夏菜お姉ちゃんが一度家へ帰ってお昼を食べてからまたやってきて、すぐに冬樹がやってきた。
わたしがお出迎えしたかったけどお母さんがすぐに出てしまって、わたしが玄関に着いた時にはお母さんが冬樹から手土産のお菓子(?)を受け取っていて、あとで部屋へ持っていくと言いながらリビングへ去っていったので、わたしがわたしの部屋へ冬樹を案内した。
「そう言えば、この家に来るのも久しぶりだよね。
だいたい何かやる時はうちでだったし、高校に入ってからは初めてだっけ?」
「そうだね。たぶん高校に上がってからは初めてだと思う」
冬樹の疑問にぼやかして答えたけど、冬樹が最後にうちに来たのは中学3年のクリスマスの時で、その時のことははっきり覚えている。
あの日もうちの家族が神坂家へお邪魔して神坂家と岸元家で合同クリスマスパーティーを行っていたのだけど、わたしが間違ってお母さんが飲んでいた甘いお酒をジュースと間違えて飲んでしまってフラフラになってしまい、わたしを休ませるため冬樹と春華ちゃんのふたりがわたしを連れて介抱してくれて、春華ちゃんが気を利かせてくれて冬樹とふたりきりになり『来年はお互いに受験で合格して、高校でも一緒にいたいね』というような話をしたんだった。
冬樹がちゃんと覚えていてくれていないのは残念だ。
わたしの部屋へ入ると、冬樹は春華ちゃんと夏菜お姉ちゃんを見て
「夏菜さんも春華さんも来ていたんですね。岸元さん、おふたりも一緒で良いのですか?」
と言い、一気に部屋の空気が重くなった。




