第12話
◆神坂冬樹 視点◆
「これから実際にどうするかなのだけど、鷺ノ宮に二之宮さんと同じ様に扱われていた女子があと3人はいて、彼女らとも連携して対応できないかと思うんだ」
「他に3人も居たのね・・・」
「あくまで俺が把握している人数で、3人とも秀優の女子だから、もしかすると校外にもいるかもしれない。でも、さすがに把握していない人を計算に入れるわけにはいかないから、この3人に声を掛けて連携できないか打診したいと思う」
「それはそうなるわよね」
「その内の1人とは明日会う予定があるから良いけど、残りのふたりと会う時には二之宮さんも一緒に行ってくれないかな?」
「私の事でもあるから一緒に会わせて欲しいけれど、明日会う予定がある人というのは神坂君の親しい人なのかしら?」
「もう親しいと言えるかはわからないけど同じクラスの岸元美波だ。知っていると思うけど、俺の幼馴染みでもある」
岸元さんの名前を聞いた一瞬、二之宮さんの表情に強い陰りが生まれた気がするがすぐに戻ったので気のせいかもしれない。
「岸元さんが!?」
「そうだけど、何か引っ掛かる?」
「そういうわけではないけど、意外だっただけ。彼女は神坂君と付き合っていると思っていたもの」
「前は付き合いたいと思っていたけど、今はそういう感情はないな」
「それは隆史と寝たから?」
「全くないとは言わないけど、どちらかというと信じてもらえなかったという気持ちの問題だな。
俺たちの積み上げてきた16年は何だったんだって思ったらどうでも良くなったよ」
「ふーん。ところで、この家って神坂君しか住んでいないのよね?」
「そうだけど、それがどうした?」
「じゃあ、今から私と寝ない?」
二之宮さんが急に蠱惑的な表情になり近寄ってきて、耳元に扇情的な声音で誘ってきた!
「お、おいっ!冗談でもそういう事をするなよ!」
「いいじゃない。これから協力し合うのだし、仲良くなるに越したことはないでしょ?
それに今まで迷惑をかけてたお詫びもしたいし・・・」
「俺はお前とそういう事をしたくて呼んだんじゃない!」
そう言いながら、両腕で二之宮さんの肩を掴み身体を離した。
「やっぱり、私の、こと、汚い、と、思って、る?」
二之宮さんは急に泣き出し言葉が詰まってしまって、焦った。
「そんなことはない!今は誰ともそういう事をしたいと思っていないだけだ!」
「どう、じ、で?」
泣き崩れ再びしがみついてきた二之宮さんの身体をゆっくりと離した。
「経験がないから、そういう事するのが怖いんだよ」
「ふふっ・・・神坂君はオンナの子とのケイケンないんだ」
すると二之宮さんは泣き顔に笑みが浮かばせてきた。
「くそっ。笑うなよっ」
「ふふふ・・・はははっ、なんかバカバカしくなっちゃったわね」
「ああそうだな!でも、泣き止んでくれて良かったよ」
「ほんと、神坂君は優しいわね。きっとあなたとお付き合いする女は幸せになれるでしょうね、私と違って」
「二之宮さんだって人生はまだまだこれからだろ。最近までが良くなかったとは言えさ」
「そうね、これから挽回すれば良いわね・・・
じゃあ、挽回するためにお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「できることなら良いけど・・・」
「私と付き合ってくれないかしら?」
「え?」




