姉ちゃんたちと昼休み
英語の授業で僕がネイティブみたいに英語を喋った事はクラスメートには結構ビックリされてたね。
でも、意外と周りからそれについてしつこく聞かれる事は無かったんで助かったよ。
理由とか聞かれても答えられないしね。
例外は山田だ。
山田の奴だけは因縁を付けたそうに僕を見つめているよ。
僕が流暢に英語を話したのがよっぽど気に入らないのだろう。
さてと、山田に絡まれる前にお昼を食べに姉ちゃん達がいる所に向かおうかな。
僕はお弁当を抱えると教室を離れて校舎の屋上を目指して歩き出す。
本当は鍵がかかっていて屋上には入れないはずなのに姉ちゃん達は屋上でお昼を食べるんだ。
姉ちゃん達はどうやって鍵を手に入れたんだろう。
そんなことを考えながら僕は屋上へ続く扉にふれる。
鍵は解錠されていてるので扉はあっけなく開くよ。
屋上に出るといつもの場所に姉ちゃん達が車座で座っているのが見える。
「よう、ゆう坊遅いぞ」
遅いって、そんな筈はないよ。
だって僕は四限の終了の鐘と共に教室を出たんだ。
「僕が遅いんじゃないでしょう。
姉ちゃん達、四限の授業をサボったんじゃないの」
僕がそう言ったら姉ちゃんの顔がうえっとなる。
これは当たりだね。
「バ、バカ言ってんじゃないよ、授業をサボったりしないから」
姉ちゃんのその口調はサボったって言ってるのと一緒だよ。
「姉ちゃんは嘘をつくと顔に出るからね、僕には丸わかりだから正直でいる方が良いと思うよ」
「ううううう、分かったよ、サボった、四限サボったから」
簡単にゲロッタね!
「まあ良いけどさ、留年しても知らないよ。
中学と違って高校は留年も退学もあるんでしょう」
「「「「ぐはっ」」」」
どうやら僕の言葉は姉ちゃん達にクリティカルヒットしたようだ。
みんな大袈裟に胸を押さえて倒れ込んでいる。
こんな風にわざとらしい演技ができるところで姉ちゃんたち全員がコスプレ部なんだと実感しちゃうね。
「反省だけならサルでも出来るからね。
行動をして初めて人だから。
姉ちゃん達は人かな、それともサルかな?」
「ゆう坊、それは幾らなんでも酷いんじゃないの」
姉ちゃんのぽっぺが膨らんでる。
ちょっと怒らせちゃったかな。
「御免なさい、言い過ぎました」
此処は謝る所だね。
僕は空気は読めるんだ。
「うん、分かればよろしい、じゃあお弁当を食べようか」
姉ちゃんは簡単に機嫌を直してくれる。
それとも、お腹が空きすぎて怒る事を止めたのかもしれない。
「今日のメインは豚ロースの味噌漬けだからね。
半額シールが付いていた豚カツ用のお肉を僕が自分で味噌漬けにした一品だよ。
みんな感謝して食べてね」
「へええ、自分で味噌に漬けたんだ、ゆう坊は良いお嫁さんになれるね。
どう、お姉さんの所にお嫁に来ない?」
もう、翔子さんはいつもこうなんだ。
僕は男ですからね、お嫁には行きませんよ。
「翔子それはダメだ、ゆう坊はあたしのなんだからな」
「もう、亜美はブラコンなんだから。
でもゆう坊、亜美はお姉ちゃんだから、ゆう坊にこんな事はしてくれないでしょう」
翔子さんが僕の手を取って翔子さんの胸に押し付けてくる。
この感じだとCカップかな。
正直シャツとブラの上からだとなんか硬いものを触ってるって感じしかなくておっぱいを触ってるドキドキ感とかはないよね。
「翔子、甘いな。
そんなんじゃゆう坊は落ちないぞ」
「そうよ翔子、今朝だって亜美は下着姿でゆう坊の顔をおっぱいで包み込んで寝てたんだよ」
「そう言えばやってたわ。
判ったでしょう、ゆう坊は私の柔らかなおっぱいの感触を知ってるのよ。
ブラジャー越しの硬い感触ではゆう坊は落ちないんだから」
「亜美ったらブラコンを拗らせすぎ」
「なんとでも言うが良い。
でもゆう坊は私の物だからね。
ずっと私と一緒なんだよ」
わっ、姉ちゃん苦しいよ。
いきなり顔におっぱいを押し付けないでよ。
だいたい自分で言ってたじゃん。
ブラジャー越しじゃ硬い感触しかないんだからね。
そんな姉ちゃんをみんなは呆れがちに見てるよ。
「ふ〜ん、本当に亜美はブラコンだよね。ゆう坊の夢が正夢でゆう坊が異世界に行っちゃったらどうするの。
寂しくて死んじゃうんじゃない」
「平気よ、1人でなんて行かせないから。
絶対ついて行くし」
「ゆう坊も大変だね、お嫁さんとか貰ったら小姑の亜美との間で修羅場は確定だね」
やめて、そんな嫌なフラグはいらないから。
もう話題を変えるしかないよね。
「そうだ、そう言えば大変な事が起きたんだよ」
僕は英語の時間に起きた異変をみんなに話したんだ。
『それは不思議ね、私がゆう坊の英語を見てあげた時はカタカナ英語だったものね』
そう言う翔子ちゃんは帰国子女で英語がペラペラなんだ。
だから英語の勉強を見てもらった事があるんだ。
『そうだよね、翔子ちゃんに呆れられてたよね』
「ゆう坊と翔子は何語で話してるんだ」
「姉ちゃんなに言ってんの、僕は日本語しか話せないよ」
「あら、私とはフランス語で話してたわよ」
翔子ちゃんが変な事を言う。
「僕、フランス語なんか知らないよ、喋れないよ」
『そんな事は無いわよ、流暢に喋ってたじゃ無い』
『流暢って、僕がフランス語を流暢に喋ってたって言うの』
「そうよ、今もね」
「なあ、これって」
「ラノベで定番の異世界言語理解のスキルで英語もフランス語もスワヒリ語だってペラペラってやつ?」
「「「それだ」」」
いや、ハモらないでよ。
僕には訳がわからないよ。
でももしかすると?
僕は心の中でステータスオープンってつぶやく。
すると目の前にステータスウインドウが現れる。
うわ〜、まさかと思ったけど。
そう、ステータスウインドウには前見たときはなかったスキルが表示されていた。
身体強化 1
全言語理解
これって新しく取得したってことかな?
でもスキルを取得するようなイベントってあったけ??
もしかして必要になると自動的に取得できるとか???
なら、身体強化は山田に突き飛ばされそうになったからか。
全言語理解は英語で当てられたから……
そんなに安直にスキルが手に入っていいんだろうか??
「これじゃ、ゆう坊が異世界で勇者にされちゃうよ。
ダメよ、そんなの絶対にダメだからね」
姉ちゃんの心配ももっともだよ。
なんだろう、夢の話が夢じゃすまなさそうになってきた。
僕は本当に女神様に力をもらっていて代償として異世界で勇者をしないといけないのかな?
「無理、無理だよ、僕が勇者とか。
僕、殴られても殴り返せないし。
血とか見たら倒れちゃうよ」
「心配するなゆう坊、私が守ってやる。
女神なんかワンパンでぶちのめす。
だから心配するな」
う〜ん、姉ちゃんの言葉は嬉しいけど、女神様をぶちのめすとか無理だよね
僕、本当に異世界で勇者をやるしか無いのかな?
どうしよう、どうしたら逃げられるんだろう?
僕はどうしたら勇者にならずに済むかを必死に考え始めるのでした。




