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魔王が現れた

目を覚ますとそこは…。





いつもの自分の部屋。


日々の疲れからか、いつのまにか眠っていたようだ。


時計を確認すると時刻は0時を過ぎていた。


日々の仕事で疲れが貯まっていたのだろう。


先程のこともあり、今日は休もうとしたのだが…。


ベッドの上にやけに盛り上がった物があることに気づく。


「私ベッドの上になにか置いたっけ…。」


記憶を辿るが覚えがない。


部屋の明かりをつけるとそこには、黒い布。


「なんだろこれ…。」


恐る恐る布を捲るとそこには…。


見た目は小学生くらいの、かわいい顔をした銀髪の女の子が丸くなり眠っていた。


「…え?」


私はまだ眠っていて、これは夢なのかも知れない。


ほっぺをつねる。


「いひゃい…。」


どうやら夢じゃないようだ。


見間違いかと思い、もう一度確認するが、やはり何度確認しても間違いなく女の子が眠っていた。


どうしよう。


まったく理解できない。


私には子供はいない。


そもそも相手すらいない。


妹はいるけど、こんなに小さい子ではない。


親戚の子にもいない。


え?じゃあこの子はいったい…誰…?


まさか…私…眠っている間に…誘拐を…。



いやいやいやいや!それはない!


たしかにかわいい女の子は好きだけど、誘拐してしまうほどではない。


…ないよね…?


ないないない!


絶対ないから!


だけど、無意識のうちに…?


違う違う!


…違うはずだけど。


でも、それ以外考えられない。


戸締まりはしっかりしたし、合鍵もない。


窓が割られている形跡もないし、そもそもここはマンションの五階で、こんな子供が侵入できるはずがない。


あぁ…。私やってしまったんだ…。


自首しよう…。


私が警察へと向かおうとした時だった。


「んっ…。んんんっ。」


ベッドの方から声がする。


振り返ると、先ほどの女の子が目を覚まして起き上がっていた。


まだ、私が想像しえない事が起こった可能性もある。


最後の希望にかけ、その女の子に質問する。


「ね、ねぇ…。あなたは…誰…?」


女の子が少し考えると立ち上がる。


「我か?我は…魔王なのじゃ!」


そう言いフハハと笑う女の子。


…?


……?


………へ?


この子は何を言っているんだろう。


きっとふざけているのだろう。


このくらいの子ならしょうがないことだ。


「え、えっとね…お姉ちゃんにお名前を教えてくれるかなぁ?」


「お主、我を知らぬのか?このメリアナトルを支配している魔王じゃぞ!恐れるがいい!」


またフハハと笑う女の子。


んんん?なんかどっかで聞いたことがあるような…。


ふと、先ほどまでプレイしていたゲーム画面を見る。


画面にはワールド名:メリアナトルと表示されている。


いやいやいや。


きっと、この子もこのゲームをやったことがあって、魔王になりきってるんだ。


私も昔はよくアニメやゲームに影響されて、なりきったことがある。


「あ、あのね。そうじゃなくて、お姉ちゃんに本当のお名前と、どこに住んでるのか教えてほしいんだけど…」


「お主…なにを言っておるのじゃ?あまり我を馬鹿にしていると…許さぬぞ?」


そう言うと女の子が右手をこちらに向ける。


そして、手のひらの上に火の球が浮かび上がる。


…え?


なにこれ。


手品?


でも、なんだかすごい熱を感じるような…。


なにがなんだかわからず呆然としてしまう。


そんな私をよそに、女の子がさらに力を込めようとする。


その時だった。


キュルルルルルル。


「はううぅ…。」


大きな音と共に女の子が倒れ、ベッドから落ちそうになる。


私は咄嗟に女の子を受け止めた。


「だ、大丈夫!?」


「な、なんじゃ…。急に力が…入らぬ…。」


キュルルルルルル。


また、先程と同じように音が鳴る。


というかこれ。


明らかにお腹の音だよね。


「ね、ねぇ。もしかしてお腹空いてるの?」


「お、お主なにを言って。魔王である我がそんなことあるわけ…」


キュルルルルルル。


女の子がそう言いかけると、再度お腹の音は鳴る。


「ちょっと待っててね。」


私は女の子をベッドに寝かし、明日の朝食用だったご飯を準備する。


「おまたせ!はい!あーんして!」


「な、なにを…」


「いいからいいから!」


私は女の子に口を開けさせ、ご飯を食べさせてあげる。


「うっ…。これは…。」


「だ、大丈夫?美味しくなかった…?」


私の質問に女の子は首をフルフルと振るわせる。


「我の世界では、見たことない物じゃが、美味じゃ!もっと、寄越すのじゃ!」


そう言い、あーんと口を開ける女の子。


その姿を見て、母性本能がくすぐられてしまう。


女の子は、用意したご飯をあっという間に平らげる。


「僅かだが力が戻ったようじゃ!感謝するぞ!」


満足した女の子が、笑顔でお礼をする。


「あ…。かわいい…。」


私は思わず口に出してしまう。


「お主…。今、我をかわいいと言ったか…?」


あ、あれ?さっきまで笑顔だったはずが、すごい怒っている気が…。


「配下達に恐れられる、我をかわいいと言ったか…?」


うぅ。


すごい気迫…だけど、怒ってもかわいい…。


「う、うん。かわいいよ。だって、ほら…」


私は部屋の隅に立てかけていた鏡を指差す。


女の子がそちらを見る。


「こ、こ、こ、これは!どういうことなのじゃあああああああ!」


絶叫する女の子。


フルフルと震えながら、鏡に映る自分の姿を何度も確認する。


「な、なぜこの様な姿に…。これではまるで…まるで人間の子供ではないか…!」


「わ、我の。我の美しくも、恐れられる。我の身体がっ…。」


「そもそも、ここはどこなのじゃ…。我は魔王城で勇者と戦っていたはず…。」


「ここは日本だよ?」


「お主…なにを言って…。そんな地名聞いたことなど…」


私はカーテンを開け、ベランダから外の景色を見せてあげる。


「こ、これはなんじゃ…。我が支配していた世界にはない建造物が…。」


「ま、まさか勇者が放った最後の魔法の影響で…。」


「う、うそじゃ…。なにもわからぬ世界で…。このような華奢な身体で…。一体どうしたら…。うぅ…。」


膝から崩れ落ち、今にも泣きそうな女の子。


こうして見ると、やっぱり普通の女の子にしか見えない。


「ね、ねぇ。本当にあなたは魔王なの?」


「そうじゃ…。我は魔王なのじゃ…。うぅ…。」


女の子は変わらず魔王と言い張る。


にわかには信じられないが、さっきの火の玉のことが気になる。


「よかったら、さっき見せてくれた火の玉をもう一度だせないかな?」


「いいのじゃ…。じゃが、先ほどのは攻撃魔法で、お主には危険じゃからこっちにするのじゃ…。」


そう言うと、私に手のひらを向けてなにやらぶつぶつと唱え始める。


私の身体が光に包まれる。


そして、なんと足が地面から離れ、身体が浮かび上がったのだ。


「こ、これって!?」


「浮遊魔法なのじゃ。まだ力が僅かしか戻っていないから、少ししか効果がないのじゃが…。」


やっぱり信じるしかない。


この子は、本当にゲームの中の世界から来たんだと。


「ほんとに、魔王ちゃんは魔王なんだね。」


「そうだと言っておるじゃろうが!あと、ちゃんはやめるのじゃ。」


「魔王ちゃんはこれからどうするの?」


「元の世界に戻る方法と、力を戻す方法を探さないといけないのじゃ…。ちゃんはやめろと言うておろうに…。」


「そっかぁ。なら、その方法が見つかるまでここに住む?」


「お主の…?いいのか…?我は世界を支配する魔王なのじゃぞ…?人間は我を憎んでいるはずなのに…。」


「うん!大丈夫だよ!あなたがよければだけど!」


さっきまで暗い顔をしていた、女の子が明るく笑顔になる。


やっぱり、この子は笑顔の方が似合う。


「お主人間なのに良いやつなのじゃな!この世界で一番目の配下にしてやるのじゃ!」


「わーい。嬉しいなぁ!」


元気になってくれたみたいでよかった。


放っておくにはかわいそうだし。


しばらくは、いいかな?


「それじゃあ、まずは自己紹介から。私の名前はゆうり。よろしくね!」


「我は魔王なのじゃ!これからよろしく頼むぞ!ゆうり!」


「うん!よろしくね!魔王ちゃん!」


「ちゃんはやめるのじゃー!」



こうして、平凡な毎日を繰り返すだけだった私の前に魔王ちゃんが現れた。


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