幼馴染の嘘
お久しぶりです。さゆこと笹原です。
また期間が開いてしまいました。今回で幼馴染シリーズ完結です。
それではよろしくお願いいたします。
また変な夢を見た。それも前回と一緒だ。
でも前回と違うのは、俺が第三者視点な件について。
「あたし、クマのことが好きなの!」
「ふえ?」
こうして第三者視点から見ると、気持ち悪いなこいつ。なんだ「ふえ?」って。
というか相手は誰なのだろうか?顔が見えない。
「悪いんだが、俺には…」
前回はここで終わった。が、今回は違った。
「俺には琴美先輩がいる。彼女が一番だ」
…こいつくさいセリフ好きだな…
「…うん知ってる。でもこの気持ち伝えたくて」
「そうだったんだ」
「あたし、ずっと好きだった。ずっとずっと」
「うん」
「ずっとクマのこと好き、今も好き」
「うん」
「………」
「わかってた。けど、気づかないふりしてた。俺はお前と友達でいたかった」
「うん…あたしも。ずっと言いたかったけど、友達じゃなくなるんじゃないかって…」
「そうだったんだ、でも俺も悪いことした。すまん」
「謝らないで、あたしも悪いよ」
それまで、相手の顔はぼやっと見えないでいたが、次の瞬間
「これからも友達でいてくれる__
と、ここで夢は終わった。だが、相手の顔が見えていた。
いや、本当は気づいていたのかもしれない。
夢の通り、俺は気づかないふりをしていたのかもしれない。
ちゅん…
目が覚め、すくっとベットから起き上がる。
「俺は最低な男だな」
と、自分に言い聞かせる。
「あ、おはよー」
「おう、おはよう」
とうとうこの日が来た。そう、今日は春とのデートの日だ。
「昨日は寝れたか?」
「え?なんで?」
「お前のことだ。楽しみにしすぎて寝れなかったりしたんだろ」
「子供!?さすがにそんなことないよ」
「え、そうなの」
「そうだよ!?…でも」
「ん?なに?」
「ううん!なんでもない!」
なんだこいつ、何か言いたげだな。
「そ、そろそろいこっか!」
「ん、おう」
と、何事もなかったかのように歩き始めた。
「というか海なんて久しぶりに行くな~」
「そうなの?」
「基本インドアだぞ俺」
「あ、そうだった」
海に行くには電車を乗り継いでいく。
およそ1時間くらいだ。
「あたしも去年行ってないから久しぶりだな~」
「ほえ~、しょっちゅう行ってるもんだと思ってた」
「部活とかで忙しかったし、勉強も…ね?」
「あ…」
そう。こいつは結構ギリギリもギリギリで高校に入学したのだ。
俺や清水、先輩の八幡先輩にも手伝ってもらっていた。
「あの時は…その、ありがとうね」
「なんだよいまさら、いつものことだろ」
「でもあのときクマがいなかったら多分落ちてたし」
「まあ、俺に感謝してもいいんだぜ」
「…さっきと変わりようがすごいんだけど…まあ、ありがと」
ふん!っと俺は鼻を高くしていると、くすっと笑う春。
「そういえば、中学のみんな元気にしてるかな?」
「………」
「あ、ごめん!なんでもないよ!」
「元気にはしてるんじゃねーの?俺は全く知らんけどな」
「う、うん。…まだ気にしてるの?」
「…気にしてないって言ったらうそになるかもだけど。まあ、もう忘れた過去だ。お前が気使ってどうすんだよ」
「でもさ、あのとき…」
「お、そろそろつくから、降りる支度しなくちゃな」
「あ、うん…」
そろそろ、最寄りの駅に着いたらしい。
俺と春は荷物を持って電車を降りた。
「ふう、ここらでいいか」
ビニールシートを敷き、場所取りを先にしていた。
夏真っ盛りということもあってか、観光客で沢山だ。
うっ…また人に酔いそう…
春は先に着替えさせに行った。多分混んでそうだから先に着替えをと言っておいた。
しかし、暑い。熱い。あつい。溶けてしまいそうだ。
「よくこんな日にくるよな…」
早く帰ってエアコンの効いた部屋でゴロゴロしたい。ゲームしたい。マンガ読みたい。ラノベ読みたい。アニメ見たい。
とりあえず…飲み物…飲まなきゃ死ぬ…
ごくっと水を飲み干す。
「あ、クマクマ!おーい!」
「んあ、やっと来たか。結構時間かかったけどやっぱ混んでたk…」
「うん。混んでたし切るのにも時間かかっちゃって…クマ?」
「あ、ううん。かわいいじゃんか」
かわいい。ただそれに尽きる。ほかに言葉はいらない。
「え?…そう?」
「おう。やっぱ店で見るのと海で見るのは全然違うな~。危うく惚れかけたぜ~」
危ない危ない。本当にその通り。
「…ありがと。なんなら本当に惚れてもいいのに…」
「あん?なに?」
「なんでもない!とりあえず、泳ごうよ!」
「まあ、そうだな」
わーっと春は走っていった。
おいおい、子供かよ。
「おーい!まずは軽く準備運動くらいしてけ!足攣るぞ!」
「あはは!気持ちいい!冷たいよ!クマー!」
「はいはい、楽しそうでなによりですね」
ほんと子供みたいなんだから。と母親の心になってしまった。
海を泳いだり、ビーチボールなどで遊んだら、ちょうどお昼くらいになっていた。
昼飯にしようと、何か買ってくると言ったら
「あたし、作ってきたよ」
といったので、買わずに済んだ。
「そいえば、料理できたもんな」
「うん、結構自分の弁当作ってきたりしてるからね」
春は前途の通り、勉強はできないが他のことはできたりする。
例えばなんだが、料理はもちろんのこと裁縫だったり、家庭的なことはパーフェクトだったりする。ほんと、勉強以外はね…
「ちなみに今日は、サンドイッチね!何か嫌いなものあったっけ?」
「特にないから大丈夫だぞ」
「よかった。はい、タマゴサンドイッチ」
「ありがとさん」
一口食べる。とてもうまい。
「めっちゃうまい」
「そう?よかった~」
「久々に食ったなー、お前の手料理」
「そうだね、結構期間開いちゃったからね」
「また食いに行っていいか?」
「え?うん、もちろんいいよ。また勉強教えてよ。休み明けテストあるから」
「もちろんだよ。その代わりにうまいの頼むな」
「うん!もちろん!」
今度の約束もできた。
お昼を食べ、少し歩いて近くの繁華街まで歩いた。
「何が欲しいんだっけ?」
「えっとね~、確かここには…あった!」
ここは、ポーチが売っている店だ。
「ほうほう、結構種類あるんだな」
「うんうん!調べたらここが有名って書いてあって。行きたいなって思ったの!」
「なるほどね」
「あ、あのさ」
「ん?なんだ?」
「よかったら、おそろいの買わない?今日思い出ということで」
「ほー。まあ今日で恋人のふりも終わるもんな」
「ま、まあね。ひと夏の思い出ということで」
なんか難しい言葉言ってるけど、理にかなっている。
「んじゃあ、どれにする?決めようぜ」
「い、いいの?」
「ん?だってお前がそうしたいんだろ?まあ思い出補正も込みで買おうぜ」
「やった…うん!あたしこれがいいな!」
「え~、それだったらこっちが」
「結構時間経っちゃったね」
「まあ、あれからスイーツ食べたり、お土産買ったりしたからな~」
「そうだね」
まだ夕方ではないが、そろそろ日が傾き始めている。
「あ、最後に行きたいところがあるの」
「お、まだあったのか」
「これが最後だから」
と、春が少し早歩きし始めたので、それに合わせて歩いて行った。
「ここ?」
「うん、ここ」
「うおー、めっちゃ海見えてきれいだな」
結構歩いて、坂も上ったりして、ここに着いた。
坂も結構頂上のほうまで来ていて、そこから見る海は絶景だった。
「すごいな。結構穴場なのか?あんまり人がいないし」
「うん。調べたの。ここが一番の絶景だって」
「そうなんだ。確かに絶景だもんな」
「うん」
しばらくここから動きたくないな。と思うくらいの絶景で、感動している。
春も同じ気持ちだろう。景色に気を取られている。
さて、申し訳ないんだが、本題に入ろうかと思う。
「そういえば春。今日で恋人のふりは終わっちゃうが、先輩の定岡ってやつは大丈夫なのか?」
「え?う、うん。多分大丈夫だよ!この前彼氏がいるって言ったし!」
「その定岡さんは何組なんだ?
「え、えっとね~、た、たしかB組だったかな。あはは、覚えてないや」
と、春は笑っているがおそらくこいつは
「嘘ついてるだろ?定岡なんて人はいないんだろ?」
「………え?」
「海先輩に聞いたよ。定岡って人はいるかって」
「八幡先輩に…?」
「ああ、でもそんな人はいないし聞いたことはないと。生徒会長が言っているんだ。他校の線も考えたけど、まあないだろうってなった」
「………」
「…別に怒ってはいないし、攻めるつもりもない。何でこんなことしたのかを聞きたくてさ」
「………」
春は黙ってしまった。でも、多分理由はもうわかっている
春は重い口を開け、話し始めた。
「ほんとはね、こんなことなんかしたくなかった。でも、クマはさどんどん遠くに行っちゃうんだ。今までは幼なじみで、ずっと近くにいた。中学の時だってあんなことあったけど、クマを裏切れなくて…好きで…そばにいたくて…」
「でもなにもなくてさ。高校に入ったら何かあるかななんて思ってたけど、部活で忙しくなっちゃってさ。そうしたらクマは筑波先輩といい感じになってるって聞いちゃってさ…」
春は俺のことが好きだったのだ。多分俺、熊野大自身、気づいていた。だが、気づかないふりをしていた。
二回も変な夢を見たが、なにか既視感があった。
そう。あれは自分自身の気づいていないふりが夢として警告しに来たのだと、勝手に解釈している。このままだと春のことを傷つける、と。
「筑波先輩になんて勝てるはずがないじゃん!あたしみたいなごく普通の女子が。このままだと、クマに見捨てられちゃうって思っちゃって。本当は嘘なんてつきたくなかった。けど、これしかなかったんだよ…」
「そうだったんだ。ごめんな」
春は泣いていた。俺は泣かしてしまったんだ。
「う、うう…」
「ごめんな。俺も悪かった。俺は気づかないふりをしてたんだ。本当は気づいていたのかもん知れない。けど、お前は幼馴染だ。友達だ。親友なんだ」
嘘偽りなんてない。本心だ。
春は、昔からの幼馴染であり、俺の数少ない友達でもあり、親友だ。
「だから、春は、異性の対象ではないんだ。俺はお前の親友でいたい」
「………」
「俺は筑波琴美先輩のことが好きだ。今までにないくらい、あの人に一目ぼれをしたんだ」
「うん…わかってる」
「俺は琴美先輩のことを幸せにしたい」
「うん」
「だから、春。春は琴美先輩なんかに負けてなんかない。お前は立派だよ。話してくれてありがとう」
「!!!」
「心の底から、お前は立派だと思う。俺なんかよりよっぽどいい人はいる。俺も幸せになる。だからお前も俺以外の誰かと幸せになってくれ。心から願ってる」
「………うん…」
「これからも親友でいてくれるか?」
ぐすっと泣いていたが、目をこすって春はこう言った。
「もちろんだよ!のぞむところだよ!へへへ~!」
満面の笑みだった。ちょうど夕日がさしてきていて、笑顔と夕日がマッチしてとてもきれいだった。
「あーあ、失恋しちゃったー」
「そんなこと言うなよ。あんなにかっこつけたけど、俺だって悪いと思てるんだから…」
「うそだよ~。新しい恋見つけてやるからね!」
「そうか」
俺はほっとした。いつも通りの春に戻ったようで安心した。
「クマよりかっこよくてイケメンでものすごく性格いい人見つけてやる!」
「同じこと二回言ったけど大丈夫ですか?あとそれだと俺優しくないような言い方…」
泣きそう。
「うそだよ。たぶんクマより優しい人なんていないよ」
「そ、そうなの?」
「うん、クマは優しすぎるもん」
そうなんだ。自分では自覚していないからな…
「もし、筑波先輩となんかあったら、シバいちゃうからね」
「ひえ、こわい。でも安心しな。そんなことなんかないから」
「まあ、そうだよね。あ、最後に言わせて。さっき中途半端だったから。
「ん?なにを?」
「えーっと、コホン。あたし、クマのこと好きだったの!」
「ふえ?」
あ、これ夢のやつ…あ、もしかして本当は夢の内容って今のことさしてたんじゃないのか?あの時は曖昧だったから。これは確定した。本当はこっちだったんだ。
それじゃあ、返しは…やっぱりあれか。
「悪いんだが、俺には琴美先輩がいる。琴美先輩を幸せにしたい」
後日談になるが、あの後、いつも通りの関係に戻った。
だが、琴美先輩と春の仲が良くなっている。確実に。
「クマやっと気づいたんだな」
「まあな、やっとこさだ。ちなみに清水。お前はいつから気づいてた?」
「中学からだな」
「そんな前からかよ…」
頭を抱える。
「…大臣は?」
「入学してから何日かしてからかな」
お前もかぁ…
昼休み、待ちに待った琴美先輩とのお弁当タイム。
いつもの教室に早めに来た。
ガラッと開けたが、先輩はもういた。
「あれ?先輩?早いですね」
「うん。クマくん早く来るかなって。」
「そうですか」
「あ、そうだクマくん」
「はい?」
「幸せにしてくれるんだってね」
「……ひえ、だだだだだれからそれを」
「春ちゃんからね」
あの野郎、ふざけんじゃないわよ!
ふうっと一息ついてから
「はい。もちろんです。琴美先輩を幸せにします」
「うふふ。照れるな」
と笑いながら下を向く。が、最後の一言でやられた。
「じゃあ、私のこと幸せにしてね」
ほんと、この人にはかなわない。
俺はこの人が大好きだ。
其の三 終
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
また期間が開いてしまいました。すいません。
前書きにも書きましたが、幼馴染シリーズは今回で完結となります。
次回は別のヒロイン編が始まります。お楽しみにお願いいたします。
さて、前回も読んでくださりありがとうございます。ブックマークや感想など、ありがとうございます。とても励みになっております。
また次回、不定期になってますが、書いていきたいと思うので、よろしくお願いいたします。
それでは、また会いましょう。さようなら!