第82.5話 ゲルド・ド・イスタールの報告(その6)
短いはずだったのですが・・・。
『ゲルド!見つからぬのか!!』
アルガソード、はゲルドを呼びつけ、現れた途端に怒鳴った。
『残念ながら・・・』
(確かに、あの3人を見つけて、事情を聞かなければ・・・)
ゲルドは焦っていた。
『陛下。東にある遺跡を監視しているものから、報告がきています』
『なんじゃ?』
アミアの東には、古代遺跡があり、一番奥に見える建物に入ると生きて出られないと言われていた。正確には、調査に向かったものが誰も帰ってこなかったのである。
『あの遺跡に入っていくものを確認したと』
『また・・・命を捨てたい馬鹿が現れたと?』
ゲルドの報告を呆れたと言わんばかりに聞くアルガソード。
『それが1時間以上経ってから、3人が建物から出てきたのが確認されています』
『3人・・・?』
ゲルドの報告にあった3人というキーワードが、アルガソードには気になった。
『はい。1人は男らしきもの。1人は女らしきもの。そしてもう1人は子供のようであったと報告が来ています』
『それは・・・まさか・・・』
アルガソードはようやく気が付いた。
『はい。3人の特徴が例の3人と一致します』
ゲルドはアルガソードの反応を見ながら答えた。
『で、やつらはどこにいった』
『遺跡を北に向かって移動し、森の中に消えたとのことでした』
しばらくの沈黙ののち、2人は同時に
『ノッスルに向かったのでは!(?)』
と叫んでいた。
『確か、ノッスルには兵士を送って警備をさせていたはず・・・』
『その通りでございます』
『ただちにノッスルに兵を送ってあの3人が来ていないか確認しろ』
『はっ。仰せのままに』
ゲルドは、ついてきた部下に何か指示をしている。部下が慌てて部屋から出ていった。
一方、アルガソードは椅子に座ったまま考えていた。
(メストの北に現れたヒャッケラキアを倒した後、どこを通ったのかは分らんが古代遺跡に行った・・・確か、仲間の一人は、1000年前の王女様・・・信じがたいが、何かあの遺跡について知っているのかもしれない)
彼は、王宮の奥にある国王のみ入ることが出来る部屋に入った。この部屋だけは、清掃担当の侍女ですら入れない特別な部屋である。
(このカード・・・冒険者ギルドのカードにも似ているが違う鋳物らしい)
この部屋には、国王のみ所有するカードを扉に宛てると鍵が解除されるのであった。
冒険者ギルドのカードに近いと思って、冒険者カードを宛ててみたこともあるが、この扉は、国王が持っているカードでないと開くことがなかった。王位を引きつぐとき、先代の王である父からこの本のことを言われていたが、アルガソードは読んだことがなかった。
いや、一人で入るのは実は初めて会った。
部屋には1冊の本が置いてあった。
=街再生の記録 アルマード・フォン・アントラニア=
と表紙に掛かれた日誌である。
その冒頭の部分に、遺跡のことが書いてある。アルガソードは部屋に籠るとこの日誌を開いた。古代文字で書かれた日誌の最初の頁には短い文が書かれていた。
1020年12月(いろいろあって、正確な日にちは忘れた)
パラストアを襲ったヒャッケラキアの群れは、いつの間にかいなくなっていた。空港に発した緊急モードが解除できないことに気が付いた。正確にいうと、解除する仕組みを作り忘れていたのだ。そのため、魔物がいなくなるまではシールドが解除されず、防衛用のゴーレムも停止しない。そのため、パラストアに繋がっていた通路跡から崖を、よじ登って、脱出に成功した後も建物に入ることが出来ない。魔物が通過したせいなのだろう・・・パラストアの西は、森林の木々がなぎ倒され、更地が出来ていた。ここに部下と共に、なぎ倒された木々を使って小屋を建てた。幸い、魔物はいなくなっていたので、北に広がる森での採取などが出来た。部下の一人がいうには、ここにアミアという採取のための集落があったという。それらしいものは何一つ見つからなかったが、この言葉を信じることにした。パラストアの西に出来たこの土地を“アミア”と名付けることにした・・・。
最初の頁を読みながら
(空港というのが、あの遺跡の名前なのだろうか・・・。パラストアという街が遺跡の先にある窪んだ土地にあったらしい・・・)
日誌の最初の頁を読み終えたアルガソードは、本を手にしたまま考えていた。ふと壁見ると、何か紐のようなものが吊るされている。手に取ってみると、その先端には、カードが付いていた。
“パラストア空港長
アルマード・フォン・アントラニア”
(これは・・・我が王家の始祖の名ではないか!)
アルガソードは驚いて見ていた。
(始祖は、あの遺跡“パラストア空港”の長であったというのか!!)
この日誌に書いてあることが事実であれば、誰かが、建物の防衛システムを解除しないと中に入れないはず・・・だが、あの3人は入ったのち、出てきた。それも1時間以上経ってから・・・。
(ひょっとして、あいつら、防衛システムを解除したのかもしれない)
・・・
執務室に戻ったアルガソードは、更に考えていた。
(3人の内の1人が、本当に1000年前のシャールカ王女であるならば、我が始祖は、その部下だった可能性が高い・・・。つまり、シャールカ王女に正当な王権があることになる?)
呼び鈴を使って兵士を呼んだ後、
『ゲルドを呼んでくれ』
・・・
『陛下。まだ3人の行方は解っておりません』
呼び出されたゲルドは頭を下げながら言った。
『いや。そのことで呼んだのではない・・・あっ、無関係でもないがの』
(???)
アルガソードの言葉に慌てて様子を見たゲルドは、げっそりをやつれたアルガソードを見て、驚いた。
『陛下!如何されたのです』
・・・
『・・・ということなのだ』
アルガソードは、ゲルドに、国王のみ入れる部屋にある1冊の日誌、パラストア空港長 アルマード・フォン・アントラニアの日誌のことを話した。
『なるほど・・・』
ゲルドにしても、古代文明とアントラニア王国の繋がりについては、何も知識がなかった。意図的に隠されたのかもしれない。古代王家の家臣が始祖であれば、尚更である。
『問題は、シャールカ王女が本物だったときの扱いですね』
『そうだ』
ゲルドが確認するように伺うと、アルガソードは、頷きながら答えた。
ゲルドはしばらく考えた後、
『古代文明は、一旦消滅しているので、丁重にお迎えするのがよいのではないでしょうか。シャールカ様は結構、美人らしいでので、陛下の正室になっていただくのが理想かと・・・』
アルガソードは、顔を真っ赤にしながら、
『余の正室だと!!』
見たこともない、おとぎ話の人だと思っていた人物を妻にするように言われてパニックになっているアルガソードであった。
次回は3/12の予定です




