第75話 秘密施設
ネオは、魔物レーダーの反応を見ながら進んでいく。途中、サンドスパイダーと3回出くわしたが、ホーリーウインドで胴体を切り裂いて済ましていた。
『魔石回収係ですね』
魔石回収くらいしかすることがないメリアがちょっと不満そうである。
『施設のゴーレムがどんなレベルかわからにゃいから、今は温存にゃ』
そう言ってメリアをなだめる。
(悪い予感的中にゃ)
ネオの魔物レーダーが、砂漠の中心付近から魔力を感じて反応している。それは、ドニアにあった、瘴気発生装置に酷似した魔力であった。
顔色が悪くなっていくネオを見て、
『おいネオ。大丈夫か』
シャールカがネオの顔を覗き込んだ。
『瘴気発生装置がありそうにゃ』
ネオはつぶやいた。
程なくして、砂漠の中に何か建物らしいものが見えてきた。
『あれですね』
メリアも気が付いたのか、指し示している。
『あれは、研究所の仮設研究棟だ』
シャールカには見覚えがあったらしい。
『あの中にたぶんあるにゃ』
ネオは瘴気発生装置の存在を確信していた。そして、あの施設内に魔物が多数いることも・・・。
3人は警戒しつつ、施設の前まで来た。どういう訳か、ゴーレムは出てこない。入り口には文字が掛かれたプレートがあった。
“瘴気発生装置試作品試験場”
古代文字でそう書かれている。シャールカは力が抜けたようにしゃがみこんだ。
『あの馬鹿どものせいで・・・』
シャールカには、1000年前の悲劇が思い出されているのだろう・・・。そっとしておいてやりたいところであったが、それは、あまりに危険であった。
『シャールカ!!』
ネオは叫んだ。その言葉で我に返ったらしいシャールカが、跳び上がるように立った。
『すまない。気落ちしている場合ではなかった』
シャールカはネオをメリアに言った。彼女自信、反省しているようであった。
突然、気配を感じたネオは、シャールカとメリアを抱えて飛び跳ねた。その直後、ネオたちのいたところが爆発した。
『にゃんだ!』
気配を感じて飛び跳ねたネオですら驚いている状況である。メリアとシャールカは爆発後にようやく、状況を理解したのだった。
ついでとばかりに施設の屋根に3人は着地すると、そこには、何故か、ゴーレムが20体待機していた。
『お出迎えがいたにゃ』
ネオは
『ホーリーアロー』
をゴーレムの関節に向かって打ち込んでいく。メリアは、ゴーレムの攻撃を躱しながら、主に脚の関節を剣で攻撃していった。
『シャールカ!関節を狙うのにゃ』
ネオの言葉を受け、シャールカも、ゴーレムの攻撃を躱しながら関節に剣を宛てていく。
・・・
5分後、20体のゴーレムは全て動かなくなった。1体ずつ頭の中に剣を刺していく。どうやら、飛行訓練センターにいた防衛用ゴーレムと同様の仕様であるようだ。
『にゃんとか大丈夫かにゃ』
見渡すと、真ん中に扉のある部屋がある。開けてみると、下の階に繋がっている階段があった。
(にゃんか嫌な感じがするにゃ)
ネオは、破壊したゴーレムの残骸を1体、階段に放り込んだ。その途端、階段の側面から、赤い光が一面に発射される。しばらくして光が消えると、ゴーレムの残骸は灰すら残っていなかった。完全に消滅していたのである。その様子を見たメリアとシャールカは、血の気が引いたようにその場にしゃがみこんでいた。
(ここは危険だにゃ)
・・・
3人は、屋根から地上に飛び降りた。3人ともレベル20だけあって、問題なく着地出来たのだが、盛大に砂が舞ってしまった。
入り口には鍵が掛かっているらしく、扉は開かなかった。鍵らしい部分もない。
『これはどうやって入るのにゃ?』
ネオにはお手上げであった。
『多分・・・』
シャールカがネオに代わって扉の前に立ち、右手を扉の中央にかざすと、扉が僅かに光った後、何か音がした。シャールカが扉を引くと、今まで開かなかった扉は簡単に開いた。
『にゃんで~!!』
『なんで~!!』
ネオをメリアは同時に叫んだ。
『これは国の施設だったから、扉には王族に反応するマスターシステムが組み込まれているのだ。動いたのは奇跡的だがね』
シャールカの説明にとりあえず納得するネオとメリア。扉の先は通路になっていた。
『ここもさっきの所みたいなことが・・・』
メリアが怖がっている。ネオは、先ほどの戦闘で、屋根から落ちたゴーレムの破片を拾うと、扉の中に投げ込んだ。特に反応はない・・・と思ったら、オークが列を作って出てきた。2列縦隊でこちらに向かって走ってくるオークに対し、
『ホーリーウインド』
三日月の刃がオーク達を上下に切っていく。
『オーク肉、大量ゲットだにゃ!』
一撃でオークは全滅したらしい。出てくるオークはいなくなったが、通路一面にオークの死体が散乱していた。3人で手分けして魔石を回収する。死体を端に避けて、何とか通り道を作った。
『さて、次は何が出てくるのかにゃ』
通路は途中に部屋もなく、右にドッグレックしていた。ネオは、オークの死体を1つ拾い上げると、ドックレッグした先に放り投げた。特に何も起こらない。
それでも念のため、メリアとシャールカにネオの防具を掴ませると、
『シールド』
を張った。とりあえず、物理攻撃には耐性があるはずである。
警戒しながら先に進と、広い空間に出た。その真ん中には、見覚えのある光景が広がっていた。
『ドニアと同じにゃ』
黒い液体とも気体ともつかないような異様な塊が存在していた。
『プリフィケーション』
最大パワーで放ったプリフィケーションは、黒い塊にあたると激しく光だした。
黒い塊が消えた後には、中央に設置された装置が見えた。ドニアにあったときと同じく、何やら黒いものが吹き出している。
『ホーリーウインド』
残っていた力を使って放った三日月の刃は、装置を真っ二つにした。同時に、黒いものも吹き出さなくなった。が、次の瞬間、装置自体は光出した。
『またやってしまったにゃ』
そういうと、3人は、通路を全速力で走って建物から脱出した。直後に爆発が起きて3人は吹き飛ばされた。
『痛いにゃ』
『いきなり攻撃するか?』
痛がるネオにシャールカが文句をいう。見ると、シャールカとメリアの手や足にかすり傷が出来ていた。
『ホーリーヒール』
『ホーリーヒール』
シャールカとメリアに回復魔法を掛けておく。
『ホーリーヒール』
ネオは自分にも回復魔法を掛けた。
施設は完全に瓦礫の山と化していた。特に魔物の反応もなくなっていた。どうやら、中にいた魔物はオークだけだったらしい。ネオの魔物レーダーにも、魔力の反応が消えていた。
(もし1000年前から動いていたら、もっと広い範囲が魔物であふれていたはずにゃ・・・ドニアの周辺くらいに・・・ということはだにゃ)
ネオは何か不安を感じていた。
『ネオ。どうかしたのか?』
シャールカがネオの様子に気が付いて聞いてきた。
『なんでもないにゃ』
・・・
ネオは足元に光るものを見つけた。手を伸ばしてとってみると、それは、冒険者カードに繋がっていた。カードをの名前を見ると、
“アントン”
とある。おそらく、ここでゴーレムに襲われた冒険者の誰かだろう・・・。周囲を見渡したが、他には何も見つからなかった。
(出張所のギルマスと同じ名前だにゃ)
『村に戻るにゃ』
ネオはそういうと砂漠を南西に歩き始めた。メリアとシャールカも黙ってついてきている。
『喉が渇いた~』
メリアとシャールカが声をそろえたので、アイテムボックスから水の樽を取り出す。
『仕事のあとの一杯は最高!!』
シャールカが水を飲みながら叫んでいる。
(これは酒ではなく、水にゃんだが・・・)
一方、メリアは黙って水を飲んでいる。特に思うことはないようだ。
(こっちは違う意味で不安だにゃ。子供らしくないにゃ)
妙な心配をするネオであった。
・・・
『・・・ということでした』
村に戻って、冒険者ギルドの出張所で、ネオはアントンに説明をした。まさか、依頼したその日の内に終わらせてくるとは想像していなかったらしく、更に、その内容を聞いて驚愕していた。
『つまり、瘴気発生装置というものがあって、それで大量のオークが発生していたというんだな・・・信じられん』
理解できないと頭を抱えるアントンに、
『あれを見せたらどうですか』
メリアがネオに進言する。
『そうだにゃ』
ネオは、アイテムボックスからオークの魔石を取り出し、積み上げる。ちょうど、アントンが頭を抱えて見ていなかったので、アイテムボックスを見られることは避けられた。
『これが証拠にゃ』
アントンは抱えていた頭を上げると、そこには、魔石が積み上げられていた。昨日見たオークとほぼ同じ大きさである。更に、3人の冒険者カードにある討伐記録を確認したアントンは事実と認めざるを得なかった。
『そして、これは施設近くで発見けたのにゃ』
そう言って拾った冒険者カードを渡す。アントンはそのカードを見た後、
『すまん。アントン。お前を殺してしまった・・・』
アントンはカードを持ったまま泣き崩れていた。
『こいつは、朝話した5人のリーダーだった。俺と同じ名前だったので、俺も目を掛けていた奴だったんだ・・・』
しばらくアントンの様子を見ていたが、他のギルド職員に後を任せ、ネオたちは昨日泊まった宿に移動した。
・・・
翌朝、出発しようとしていたネオたちにところに、アントンがやってきた。
『昨日はありがとう。ところで、今回の依頼と置いていった魔石だが・・・』
アントンが話始めたのをネオは遮り、
『今回の依頼はサービスにゃ。そしてあの魔石は寄付するにゃ。5人の供養に使ってにゃ』
そういうと、ネオは宿を出ていった。慌ててメリアとシャールカが後を追う。
『ばいばいにゃ』
ネオは最後にそういうと、西に向かって街道を走り出した。
やっぱり、瘴気発生装置でした・・・。
次回は13時の予定です。




