第6話 水筒
昨日も泊まった女神亭に着くと、昨日とまったく同じやり取りのあと、同じ部屋に泊まることになった。宿に置いていく荷物もないので問題はないのだが・・・。
中に入って昨日使ったベットに腰掛けると、
『ロイド、まだ夕食まで時間があるから、今の内にネオの水筒とか買いに行ってきてくれ』
オスターがロイドに話掛けた。さすがに、川に口をつけて水を飲むのはマズイと思われたらしい・・・。
『わかった。ネオ、行こう』
ロイドはそういうと、ネオを引っ張って連れ出した。
・・・
『水筒とナイフくらいはあった方がいいと思います』
ロイドは歩きながらネオにいった。
『そうかにゃ』
猫であったころには、当然、水筒など使ったことがなかったので、その必要性が理解出来てなかった。
『行った先に水場があるとは限らないですよ。それに、普通、川の水をそのまま飲むのは危険です』
『そうかにゃ?なんでもないにゃ?』
ネオは気が付いていなかったのであるが、新人の神様は、ネオを人間化していくとき、足(後ろ足)から変換していき、顔の大きさを大きくして、耳を変える手前で力を使い切ってしまった(ことになっている)。その後、言語能力や神聖魔法を与えているのであるから、その時点でおかしいと気が付いてもいいのだが・・・。そして、猫としてのスペックは実はそのまま残されていたのであった・・・。ネオの自覚なしに・・・。
『ひょっとして、2階の窓までジャンプできたりします』
『やったことないにゃ』
ロイドが連れて行ったのは、街の雑貨店であった。
『ここは、冒険者用の雑貨が揃っていて便利なんだ』
『ふうん・・・』
どこにでもあるような個人商店にしか見えなかったが、ロイドが入っていくと店の中から声が聞こえた。
『いらっしゃい。』
身長120㎝くらいの少女のような女性であった。
『おばさん。こんにちは』
ロイドが挨拶すると
『お姉さんとお呼び!!』
少女とは思えない低い声が返ってきた。
『今日は、彼の水筒を買いに来たんだ』
ロイドはそういって、ネオを指さす。
『おや、新人かい?』
少女(?)はネオを見ると、その姿をなめるにように見ながらいった。
『ネオといいますにゃ。よろしくにゃ』
ネオが少女(?)に答えると、
『あんた、人間にしては妙だねえ・・・なんか仲間に近い感じがするよ』
他の客がいないことを確認したネオはフードをとって見せた。猫の耳を見た少女(?)は驚いたあと、
『なるほどね。私はドワーフのミラというんだ。あんたはドワーフではないが、人間より仲間な気がするね』
ネオはフードを再び被る。
水筒はいくつかあったが、ロイドが使っているものと同じものを買うことにした。
『いくらですかにゃ』
お金を出そうとするネオの手をミラの手が抑える。
『その姿を見せられちゃねえ~。この水筒はサービスさせてもらうよ』そう言いながら、短剣を1本、ネオに渡す。
『これは、冒険者が置いていったものだ。おいていった本人は魔物にやられてしまったがね。これも持っていくといい』
『あの・・・いくらかにゃ』
『今日はサービスだ。今後も贔屓にしてくれよ』
ミラは、ネオの体をポンポン軽く叩きながら短剣を装備させる。
『これでよし。次からはいろいろ買ってくれよ』
『ありがとうございますにゃ』
短剣と水筒を貰ったネオをロイドはうらやましそうにみている。
『いいなあ~』
・・・
宿に戻って、夕食(メニューは今日もパンとスープであった)を食べた後、部屋に戻った4人は、ネオにこの世界の常識を教えるのであった。
『まず、この世界はゴンドアと言うんだ』
オスターが説明を始めた。
(新人の神様がゴンドア大陸っていってたにゃ)
『・・・というのがこのロディア国とゴンドア状況である』
オスターの説明がやっと終わった。
要約すると
ロディア国はゴンドア(大陸)の南西にあって、すぐ北にバルティカ帝国がある。東には、アントラニア王国がある。更にその先にはオスニア国とインゴニア王国があるらしい。バルティカ帝国は穀倉地帯を領土としてもっているため、国力があるらしい。その為、ロディア国はアントラニア王国と友好関係を結んで対抗している。ゴンドアには中央に縦に大きなローラシア山脈があり、人の往来を妨げているため、帝国が容易に東側に攻め込めないらしい。一方、ロディア国とバルティカ帝国の間は、ローラシア川が流れており、こちらは街道に橋も掛かっており、商人が行き来したりしている。ロディア国の軍隊は、この国境警備が大半であるそうだ。ローラシア山脈はゴンドア(大陸)の南端付近で終わっているため、ロディア国とアントラニア王国の国境は平野であるそうだ。
ということらしい・・・
『だいたいわかったにゃ』
ドワーフに仲間意識を持たれているようです。
(本当は関係ないはずなのですが・・・)
次回は19日の予定です。