第60話 地上から帰ってきました
『そういえば次はトロイ村ですよ』
走りながらメリアはネオに言う。
『そうにゃった』
『何か悪事でも働いたのか?』
ネオの言葉に、本気か冗談か解らない言葉を返すシャールカ。
『違います。前にトロイ村でも4頭のケンタウロスを退治したんです』
メリアは大真面目である。
『なに!! 隣村でもか・・・』
ケンタウロスに襲われた村が他にもあると知って驚いている。
『あんな魔物がいるとは聞いたことがなかったが・・・』
『1000年前には居なかったのかにゃ』
シャールカのつぶやきに反応したネオ。
『いや、伝説の魔物としては伝えられていたが見たものはいなかった。無論、あの鉱脈付近でもな』
(ひょっとすると、新人の神様が言っていた魔物のパワーアップというのはこれかにゃ)
『今は、そんなことよりトロイ村にこのまま入るのは・・・』
メリアの言葉に
『街道を外れて村を避けるのにゃ』
幸い、トロイ村周辺は荒野のような土地が東側に広がっていたので、ネオたち3人は街道を東に外れ、荒野を爆走していた。結果として、トロイ村の住人に見つかることもなく無事通過し、トロイ村が見えなくなったところで街道に戻った。
『なあ。何で逃げなきゃいけないんだ』
トロイ村を避ける理由が解らないシャールカはネオに問いただしたが、
『ネオさんが、回復魔法を使いまくったので神様が来たということになってしまい、大変な事態になってしまったのです』
メリアの説明を聞いてシャールカは納得してしまった。
『なるほど、回復魔法なんてこの世界にはないからな。そりゃ神様にされるわ!』
妙に納得しているシャールカであった。
・・・
途中、もう1つあった村は無事だったので、そのまま素通りして、その先の丘に来たところで、
『念のため、様子を見てくるにゃ』
そう言って、先日、ヒャッケラキアを倒して埋めた場所を見に行った。
土魔法で蓋をしたところだけ、草が生えていないだけで、特に異常はなかった。
『大丈夫そうだにゃ』
『何がだ』
シャールカにヒャッケラキアの巣があったことを伝えると、
『こんな所にか・・・』
とだけいうと、ネオとメリアを置いて街道に戻っていってしまった。
『シャールカさんもヒャッケラキアが嫌いみたいですね』
メリアが走っていくシャールカを見ながらいった。
『好きな奴がいるとは思えないにゃ』
・・・
その後、一気にデコルの南門近くにやってきた3人は、ダンジョン入り口(丘)
の警備をしていた兵士たちに見つかっていた。
『お前たち、どうして街道から帰ってきたんだ?』
アルベルトがネオに叫んだ。
『3Fでヒャッケラキアの女王を倒したら、ダンジョンの外に転移していたのにゃ』
『そんなバカな・・・』
信じられないといった感じのアルベルトに、
『俺たちが外からデコルに戻ってきたのが証拠にゃ!!』
ネオは叫んだ。
『確かに・・・』
アルベルト達は昼夜を問わずずっとここを守ってきた。いつ魔物が溢れてくるかと恐れながら・・・。なので、ネオたちがこっそり出てくればそれを見逃すわけはなく、当然ながらそんなことはなかったのである。ネオたちが、この出入り口以外から出て戻ってきたとしか考えられなかった。
『で、どこから戻ってきたんだ』
アルベルトの問いに
『ナミアの先の森からにゃ』
『なに!』
ネオの回答に驚くアルベルト。ゴーレムが出て危険なので通行止めにした街道が走る森であることを知っていたからである。
『報告に行ってくるにゃ』
そういうと、ネオたちは南門に走っていった。
門番は、アルベルトとのやり取りを聞いていたので事象は理解していたが、見慣れない女性騎士の存在に驚き、止めようとした。
『この女性は・・・』
『ダンジョンから出てきたのにゃ』
問題の問いにネオは正直に答えたのだが・・・。
『こら、ちょっと待て!』
門番が引き留めようと追いかけてきた。
『門番を巻くのにゃ』
3人は、全速力で街中に消えていった。
・・・
『ここが冒険者ギルドか・・・』
シャールカが冒険者ギルドの入り口で、建物を見てつぶやいている。門番を振り切るのには成功したものの、シャールカをどう説明するかが問題であった。
『グシケさんには正直に話した方がいいのでは・・・』
メリアがネオにいうと、
『そうだにゃ、その結果、まずそうな状況になったら、また脱出すればいいのにゃ』
『またですか・・・』
ネオとメリアはダレンでの出来事を思い出していた。
『???』
シャールカは事情が解らず、唖然としていたが、
『はいるにゃ』
とネオに手を引かれて、ギルドの中に連れ込まれた。
・・・
『・・・ということなのにゃ』
ギルドの2階にある応接室で、グシケに経緯を説明したネオであったが・・・。
『にゃんで俺が一生懸命説明したのにそんな顔をするのにゃ』
グシケは信じられないという文字が顔に書いてあるかと思うほど、微妙な反応をしていた。
『ダンジョンの2Fにいたのが、古代文明の兵士たちで、それを浄化したのち3Fでヒャッケラキアと闘ったのまでは良いだろう。だが、1000年前の王女様が生き返って目の前に連れてこられてもだな・・・』
グシケの頭では、理解できる範囲を超えていた。おまけに、デコルから100kmは離れているだろう森に転移したなど、彼の常識ではあり得なかった。
『聞いた話によると、ダンジョンをクリアすると、入り口付近に飛ばされると聞いたことがあるぞ』
どこで聞いたのか知らないが、グシケはダンジョンをクリアした後は入り口付近に飛ばされることを知っていた。
『そうにゃ。他のダンジョンではそうだったにゃ』
ネオも何回も飛ばされているので、そのことはよく知っていた。
更に
『ナミア村がケンタウロスに襲われて、村人が鉱山で働かされていただと!!』
先日、トロイの村からケンタウロスに襲われた報告が来たばかりである。もはやおとぎ話のようにしか思えなかった。
『まったく、どこかのラノベじゃあるまいに・・・』
『嘘だと思うにゃら、ナミア村に行ってみればいいのにゃ』
そういうとネオは席を立とうとしていた。
『おい。どこにいく』
グシケがネオを止めようとすると、
『魔石の換金をしたいのにゃ』
そういうと、ダンジョンで集めた大量の魔石と、ケンタウロスの魔石を出して見せた。
その量に言葉が出ないグシケ・・・。
かろうじて
『魔石の換金は俺が対応しよう』
そう言って、ネオから魔石を受け取り、奥に消えていった。
『ここで冒険者カードを作っておくかにゃ』
ネオは、シャールカにいった。
・・・
魔石の換金の後、シャールカの冒険者カードを発行させたネオたち3人は、何故か、グシケが用意した宿に連れていかれていた。
『また、この宿ですね』
『そうだにゃ』
『この宿は貴族用なのではないのか?』
メリアとネオにとっては、グシケが用意したちょっと高級な宿でしかなかったが、シャールカには、大きな街には必ずあった貴族用の宿にしか見えなかった。正確には、元貴族用宿であるらしかった。高級な宿であることには違いなかったのだが・・・。
『そういわれれば、身なりのよい人しかいないにゃ』
今回も、1人部屋を用意してもらっている。
・・・
一方、ネオから報告を受けたグシケは、内容をレポートにまとめ、職員にそのレポート持たせて使いに出した。
(ネオとメリアがレベル20になってやがった。それにシャールカといったあの女、レベルが18もあった。信じられねえ・・・)
デコルの冒険者ギルド始まって以来、初めてA級の初回登録者が誕生したのだった。
やっとデコルに帰ってこれました。
次回は昼(12時)の予定です。




