第56話 雑煮
急遽、初日の出フライトに行ってます。
(この時間は飛行中・・・のはず)
予約掲載設定って便利ですね。
『ネオさん。おかえりなさい。2名の方はこれからですね』
飛行訓練センターのゴーレムは、メリアとシャールカが、レベル15を超えた(レベル16以上ある)ことが判るらしく、早速というか・・・問答無用で二人をホール中央の台に連れて行った。ネオは雑煮が気になるものの、ゴーレムが2人のことで手一杯なので仕方なく同行している。
『まず、訓練に必要な知識を得ていただきます。こちらの本に魔力を流してください』
以前、ネオが言われたのと全く同一である。まずはシャールカがするらしい。シャールカは言われるままに魔力を流したらしく、しばらくすると、以前のネオのように、驚いているのがわかる。しばらくすると、シャールカが本から手を放した。
『終わったみたいだ』
シャールカは得た知識を消化しきれていないらしい。続いて、メリアもゴーレムに促されるまま、同様に知識を得たらしく、こちらも唖然としている。
『雑煮はどこにゃ!』
待ちきれなくなったネオは、つい叫んでしまった。
『お待たせしました。今年は、教官の方が誰もおられないので、宿直室を開放し、準備させていただいております。セルフサービス式ですので、各自、雑煮を堪能ください』
そういうと、ゴーレムは本のあるホール中央の台のところで動かなくなった。自分の役目は終わったということだろう・・・。
『宿直室ってどこだ?』
シャールカがネオの方に向けて話しかけてきた。
『3Fにあるのにゃ』
『とにかく行ってみましょう』
・・・
3Fの宿直室に入ると、居住スペースの中央にあるテーブルに寸胴が置いてある。中は、だし汁であった。脇には餅のようなものが沢山おいてあり、その脇には、オーブントースターのような器具がある。これで餅を焼けということなのだろう・・・。
他にも、茹でた(ほうれん草のような)野菜や、丸い形をした蒲鉾らしきものなど、いくつかの材料が、セルフ選択式に置いてあった。
ネオは、熊本にいたとき、正月に波高達が作って食べていたものに似ていたので、なんとなく想像がついたが、メリアは呆然と立ち尽くしている。そして、シャールカは、餅を焼こうともせずにどんぶりに入れてだし汁を掛けようとしたので
『シャールカの国には、雑煮を食べる習慣があったのかにゃ?』
『ああ・・・。新しい年の始まりに食べる習慣があったぞ。ただ・・・』
シャールカが何故か黙ってしまったので
『ひょっとして作ったことがないとか・・・言わないよにゃ?』
『作ったことはない。侍女たちが用意してくれていたからな』
そう、見た目と話す口調はともかく、シャールカは王女であったのだ。当然、自分で料理など作らない・・・。
『狩りに行ったときは、肉を焼いたりくらいはしたのだがな』
(こりゃ、2人も役に立ちそうもないにゃ)
『俺が作るから、2人とも、テーブルで待っていてくれにゃ』
そういうと、ネオは、餅をオーブントースターに入れ焼き始めた。寸胴は保温機能があるらしく、弱火にかけたように熱い。用意されていたどんぶりに茹でてある野菜と蒲鉾、鶏肉のような火が通った、醤油の味付けがされている肉を入れ、餅が膨れて、焼き上がるのを待って、どんぶりにだし汁を入れる。最後に餅を入れて完成させた。
・・・
ネオが作った雑煮をテーブルに持っていき、3人で食べ始める。箸とフォークが用意してあったが、シャールカは箸を使って雑煮を食べている。一方、メリアはフォークで何とか餅を食べようとしているが、少々、食べにくいようだ。スプーンも持ってきて何とか食べている。そして、ネオは、何故か箸の使い方を理解していた。猫の時に箸など使ったこともないのだが・・・。
『ネオさん。どこで覚えたのですか?』
メリアが雑煮を作るネオを不思議そうに見ながらいった。ネオが雑煮を作り、箸で食べている姿はかなり異様に見えたらしい。
『作っているのは初めて見た』
シャールカも珍しそうに見ている。だが、こちらは、雑煮自体は知っているらしく、ネオが調理できたことを不思議に思っているらしかった。
『俺も作ったのは初めてにゃから・・・』
((ええ~!))
シャールカとメリアの声が揃った。
『前世の時、空港で作って食べていたのを見たことがあるのにゃ』
『それは、シンジンノカミサマとかいうのに、この世界に連れてこられる前ということか?』
シャールカは、雑煮を食べるのを止め、ネオを見ながら言った。
『そうにゃ。俺は空港に住んでいた猫だったからにゃ』
『ネコというのが、どういうものか解らないのだが・・・』
シャールカが首傾げている。ネオはフードをとって見せた。
『魔物?!』
シャールカが思わず叫んだ。
『違うにゃ。猫という生き物なのにゃ。元々、これくらいの大きさだったのにゃ』
ネオは寸胴を指さす。猫にしては大きい気もするが、それでも今の姿よりかなり小さかったことは伝わったようだった。
『えっ!!』
『まあ!』
シャールカだけでなく、メリアも驚いている。
『では、どうやって、今の姿になったんだ?』
シャールカは雑煮どころではなくなっていた。
『この世界に召喚された直後、新人の神様に替えされられたのにゃ。だが、足元から変更していき、顔のサイズを変えたところで力尽きたらしい・・・にゃ』
ネオは、姿を変えさせられるときのことを覚えていた。新人の神様の能力の低さもこの時に理解したのだった。
『その。シンジンノカミサマというのは死んでしまったのか』
『いや。エネルギー不足になっただけにゃ。』
もはや雑煮どころではなくなったようで、ネオは、シャールカとメリアにこの世界に召喚されたときの話を説明した。
『シンジンノカミサマというのは、本当にこの世界の神様なのだな』
シャールカは必至に理解しようとしていた。メリアは何度も聞かされていているので、今回も無反応である。
『たぶんにゃ』
そういうと、ネオは雑煮の残りをかき込んだ。
・・・
『雑煮は、いつも用意しているのかにゃ?』
雑煮を食べ終わった後、1Fのホールに戻って、ゴーレムに問いただすと、
『はい。毎年、新年初日に来た方にお出しするようになっています。そのために、地下に専用の調理ゴーレムと食材の保管施設があります。緊急防衛システムが稼働していた間は休止していました』
以前、ここに泊まった時も、調味料は劣化せずに普通に使えたので、食材の保管施設にある食料は時間経過が無いのだろう。
1000年前の食材というのを理解して、今更ながら気にしているネオであった。
『どうして俺の名前を知っているのにゃ?』
案内人ゴーレムに名前を言ったことがないことを思い出したネオはゴーレムに尋ねた。
『はい。冒険者カードをお持ちでしたね。そのDATAを回収させていただいています』
『私もですか?』
メリアが不思議そうに聞いてきた、
『はい、メリアさんの情報も前回と今回、照合させていただいており、登録にあたって、DATAを回させていただいています』
案内人ゴーレムは当然と言わんばかりの云いようである。
『私は冒険者カードを持ってないが』
シャールカがご案内人ゴーレムを睨んでいた。
『シャールカ様は、王宮より事前連絡を受けておりましたので、生体認証で本人であることを確認させていただいております』
『はっ?』
シャールカは合点がいってないないらしい。
『1000年前に緊急防衛システムが稼働する直前に、こちらに王宮から使者の方がこられましたが・・・』
シャールカは納得できていないらしい・・・。
『どうやって!』
シャールカは怒鳴っていた。
『パラストアからの連絡便で来られました。連絡便が出ていかれた直後に緊急防衛システムが稼働しましたので、あれ以来、連絡便は来ておりません』
案内人ゴーレムの話を聞いて、シャールカはうなだれた。
『ひょっとして、教官たちも乗っていったのではないのか?』
シャールカはつぶやくようにいった。
『わかりません。ですが、連絡便が出ていった後は、教官の皆様はどこにもおられませんでした』
その言葉を聞いてから、しばらく、シャールカは黙っていたが、突然、ネオとメリアの方を向き、
『パラストア防衛のために連絡便に乗ったのだろう・・・たぶん』
『私が北に避難したことを知っていた誰かが、立ち寄るかもしれないと思ってしてくれたのだろうが・・・』
シャールカはそういって、その場に蹲ってしまった。
次回は1/2の予定です。




