第55話 デコルのダンジョン3F
新年あけましておめでとうございます。
シャールカ曰く、
『既にゴンドアの国が滅びた以上、王女と言っても意味がない。だが、仮死魔法を使ってでも、私を今の時代まで守ってくれたルダ達の思いに報いるため、今を精一杯生きることにする』
だそうだ。もう、王族と名乗る気もないらしい。名乗っても面倒になるだけだと思われるが・・・。とりあえず、ネオとメリアの仲間として冒険者になることを前提にまずは3Fをクリアすることにした。
『ヒャッケラキアを知っているのか』
シャールカの問いに
『倒したからにゃ』
『倒しました』
と答えるネオとメリア。
『ヒャッケラキアは一人で倒さないとレベル20にならないそうだ。なので、1回目でレベル20になるのは難しいと聞いている』
シャールカは、このダンジョンを作った人たちを知っているらしい。
『一人でヒャッケラキアを倒すのは難しいのでは・・・』
メリアが正直に気持ちを伝える。
『ああ。レベル15が一人でヒャッケラキアに挑んでも、かなり難しいらしい・・・』
『俺が、パラライズで動きを止め、メリアに止めをさせたら、両方に討伐実績が付いたにゃ』
シャールカの説明にネオがヒャッケラキアと闘ったときのことを説明する。
『なに! パラライズが使えるだと!』
シャールカは驚いてネオを見ている。
『先日、ノッスルでおぼえたのにゃ』
『パラストアの北にある街だったはずだが・・・』
『ノッスルは1000年前からあったのですね』
シャールカの記憶にノッスルという街があることから、メリアはノッスルが古い街であることを理解したらしい。
『パラライズは、そんなに普及しているのか?』
シャールカが驚いてネオを見ている。それを見たメリアは
『いいえ。ネオさん以外に使える人を知りません。というかそんな魔法の存在を最近まで知りませんでした』
と言いながらお茶を入れている。この小屋には、簡単ではあるが、竈があり、どこから持ってきたのか、薪があった。そこで、ネオのアイテムボックスから水を取り出し、持っていた茶葉でお茶を入れようとしているところである。鍋やコップは実家から持ってきたものがあった(これもアイテムボックスから出してもらっている)。
『ノッスルには、この大陸でパラライズを使える唯一の魔導士が住んでいたはず・・・だが、魔物が襲ってきたときの混乱で、どうなったかわからない・・・』
そういいながら、シャールカは頭を抱えた。
『そうだったのかにゃ。ノッスルのアノードという国境警備隊員の家にあった魔導書を読んだたら覚えたのにゃ』
ネオがいうと
『お・・お前、適正があったということか・・・信じられん』
シャールカのその様子に変なものを感じたネオは
『そんなに珍しい適正だったのかにゃ』
というと、
『珍しいなんてもんじゃない。パラライズは神特性魔法。普通の魔導士では絶対に取得できないものだ』
(やばいにゃ・・・神特性魔法だったのか)
シャールカはネオをじっと見たあと、
『ひょっとして、回復魔法も使えたりしないよな・・・』
(ぎく・・・やばい)
『ひょっとして回復魔法も神特性魔法なのかにゃ』
恐る恐る、シャールカに聞くと、
『そうだ。パラライズとヒーリングは幻の神特性魔法だ』
(やばい・・・使うところに注意しないと・・・)
ネオの様子を見てシャールカはにやけた。
『ネオ。お前、神特性魔法を使えるんだろ』
『そうにゃ』
もはや隠しようがなかったであった。
・・・
『では、ネオさんがパラライズを掛け、それを、シャールカさんと私が順番に倒していくのですね』
『それがよいにゃろ』
メリアが確認するように言うと、ネオは頷きながら答えた。
『レベル20にならなかったら・・・』
『もう一度行くだけにゃ』
シャールカの疑問に、答えるネオ。
『今は地上に魔物は溢れてませんから、たぶん大丈夫です』
メリアも楽観的に見ている。
『そうか・・・だが、このダンジョン。クリアすると、飛行訓練センター行だったはずだが・・・』
『ええええ~!!』
シャールカの一言にネオとメリアは驚愕した。
『ここから飛行訓練センターって、かなり離れてますよね』
『その言い方だと、飛行訓練センターは無事なのか?』
メリアの問いに、シャールカは別の驚きを持って聞き返した。
『ここに来る途中で寄ったのにゃ。1000年もの間緊急防衛システムが稼働していたらしいにゃ』
『それは良かった。あの施設が無事だということは、色々可能性があるな・・・』
シャールカは、何かを思い出すように考えていた。
『この施設をクリアすると、飛行訓練をしていたと聞いている。なので、ここをクリアすると、ダンジョンの出口が飛行訓練センターの1Fになっている』
シャールカの説明にネオとメリアは疑問が生じていた。
『飛行訓練センターは兵士の訓練所だったのかにゃ』
『そうだ、それもレベル15を超えるものだけが対象のエリート施設だ』
(そういえば、あのゴーレム。俺だけに問答無用に訓練させようとしていたにゃ・・・)
ネオは、飛行訓練センターでの出来事を思い出していた。
『ネオさんは、本での学習まで終わっています』
メリアがシャールカにいうと、
『なに!ということは、施設は無事なのだな』
『訓練出来るらしいにゃ。飛行場も使える状態だったにゃ』
『でも、今はレベル20になる方が優先ですよね』
『その方がよいだろうにゃ』
ネオとメリアが意見を言っていると
『飛行訓練センターとデコルは問題なく通行できるのか?』
シャールカがネオとメリアを交互に見ながら言った。
『デコルからは通行止めだけど、飛行訓練センターからデコルに来るのは問題ないにゃ』
『???どういうこと』
ネオの説明に理解が出来ないシャールカであった。
・・・
シャールカに、飛行訓練センターからデコルに来るまでの経緯を説明したところ、
『デコルに出来た王国は、飛行訓練センターへの街道を通行止めにしているのだな。だが、やってくる分には問題ないから飛行訓練センターから来るのは大丈夫ということか?』
と真顔で聞いてきたシャールカであった。
『ま、そんなとこだにゃ。3Fをクリアしようにゃ』
ネオはそういうと小屋を出た。
『ちょっと待ってくれ!』
慌てて、シャールカが追う。メリアは黙って後を追った。
・・・
『3Fに行く前に墓に挨拶させてくれ』
既にアンディエットはいないので、皆、成仏しているはずなのだが、シャールカは丁寧に全ての墓に挨拶して、礼を言っていた。
『律儀な王女様だにゃ』
『立派な心掛けだと思います』
ネオとメリアは黙って見守っていた。
『言葉使いは王女様には見えないのですが・・・』
『結果として、都合がいいにゃ』
・・・
『すまん。待たせた』
全ての墓に挨拶&礼を言って回ったシャールカはそういうと、小屋の先にある畑の方を向き、
『あの先に3Fへの階段がある』
と指さした。
『じゃ、いこうかにゃ』
『はい』
『おう』
ネオの言葉にメリアとシャールカが答えた。
・・・
『随分、サイズの大きいダンジョンだにゃ』
3Fは1Fと同じく、鏡面仕上げのような壁と天井、床の世界がそこにはあった。ただ、サイズが明らかに大きい。高さと幅が倍以上ある。
『ヒャッケラキアキングサイズ?』
メリアが妙な事を言っている。
『いや。ここのボスはヒャッケラキアクイーンだ』
((そんなのいるんかい~!!))
ネオとメリアの声が揃った。
『レベル20だと聞いている。心して闘うのだ!』
シャールカの方が落ち着いている。彼女は、特殊な素材と思われるプレートアーマーに身を包んでおり、右手に大剣を持っている。左手には、大きな盾を持っていることから、その姿は重戦士といった感じである。見た目には、そんな力がありそうには見えないから不思議であることこの上ない。
『ちゃんと身体強化しているから・・・』
シャールカはそういうが、不自然にしか見えないだから仕方がない。
『前からやってきたにゃ』
しばらく歩いていくと、ヒャッケラキアが現れた。ボス以外にも出てくるらしい。
『最奥にいるクイーンしかいないと聞いていたのだけど・・・』
シャールカが何か言っているが、今は目の前のヒャッケラキアをどうにかしなければならない。
『パラライズ』
ネオが攻撃すると、ヒャッケラキアの動きが止まった。
『シャールカ。止めを刺せにゃ!』
ネオの声を受け、シャールカが大剣を振り上げ、何と、頭をたたき割った。
『あの頭って、上からでもダメージが通ったのですね』
メリアが感心している。シャールカに頭部をつぶされたヒャッケラキアは絶命し、しばらくすると、魔石を残して消えた。
『でっかい魔石!!』
どうやら、シャールカはヒャッケラキアを倒すのは初めてだったらしい。でっかい魔石の獲得にご満悦である。
『私も収納袋を持っているの♪』
そう言って、どこからともなく取り出した袋に魔石を入れると、そのまま服の中にしまってしまった。
『もしかして、それも中が異次元に繋がっているとか・・・?』
メリアが不思議そうに聞くと、
『家一軒くらい入るわよ』
あっさりいうシャールカ。
『今の時代に、そんな袋はないですから・・・』
『えっそうなの?』
メリアの言葉に驚くシャールカ。どうやら、1000年前には、収納袋という特殊な袋があったらしい・・・。
『次が来たにゃ』
今度は、後ろからヒャッケラキアがやってきた。
『パラライズ』
ネオが攻撃すると、今度もヒャッケラキアの動きが止まった。
『メリア、止めを!』
ネオが叫んだ時には、既にメリアはヒャッケラキアに止めを刺していた。メリアは頭を腹の側から剣で突きさしている。
こちらも、しばらくすると魔石を残して消えた。魔石を回収してネオのアイテムボックスに入れる。
『なんだ、持っているんじゃない』
シャールカは、ネオのアイテムボックスの異常さにまだ気が付いていない。
・・・
その後、6回ほどヒャッケラキアが出てきたので、シャールカとメリアが2匹ずつ止めを刺した。残り2匹は、ネオがパラライズのパワーを上げ過ぎたのか、止めを刺すことなく、魔石を残して消えてしまったのだった。
『やってきました、最奥・・・でかくないかあれ』
シャールカが前方にいるヒャッケラキアクイーンを指さしている。
『やることは同じにゃ』
突進してくるヒャッケラキアクイーンに対して、
『パラライズ』
念のため、パワーを最大で放っただが、完全には動きが止まらない。明らかに遅くはなったが・・・。
『ここはいただき!!』
シャールカはそういうと、大剣をヒャッケラキアクイーンの頭部に振り下ろす。クイーンだけあって、ダメージは入ったが、止めにはならなかった。ヒャッケラキアクイーンはコントロールを失ったのか、右回りを始めている。剣で狙うのはかえって難しい状態になってしまった。
攻撃のタイミングを掴めないメリアとシャールカ・・・・。
『ホーリーアロー』
ネオは頭を下側から狙って矢を放った。結果としてこれが止めになったようで、ヒャッケラキアクイーンは動きが遅くなり、やがて停止したかと思うと、魔石を残して消えてしまった。
『勝ったにゃ』
『勝ちました』
『勝っちまった』
それぞれ、ヒャッケラキアクイーンが消えたことで叫んでいた。
『でかい魔石だなあ』
魔石の大きさに驚くシャールカ。声には出さなかったが、ネオとメリアも驚いていた。すると、ダンジョンの最奥が光り始めた。
『とっととこんかい!』
新人の神様の声であった。
(あんにゃろ、絶対ふざけてるにゃ)
ネオは内心思っていたが声に出さないでいた。
3人が最奥にある新人の神様の像に近づくと、
『面倒だから3人まとめて処理するぞ。シャールカ、1000年ぶりじゃの。ちゃんとヒャッケラキアを倒せたが、クイーンへの一撃がの・・・なのでレベル18じゃ』
『ええ~!!』
シャールカの声が一瞬聞こえた気がしたが、その姿は消えていた。
『メリア。よく頑張った。クイーンへの止めは効いてないが、それ以外の多数の実績からレベル20にする』
『はい』
メリアの声が聞こえたような気がしたが、その姿は消えていた。
『ネオ。ちゃんと止めを刺したな。レベル20にしてやろう』
ネオは答える間もなく、飛ばされてしまった。
・・・
『いらっしゃいませ。飛行訓練センターへようこそ』
気がついた先には、見覚えのあるゴーレムが、聞き覚えのあるフレーズをしゃべっていた。
『本日は、特別に雑煮を用意しています』
ゴーレムが変なことを言ったような気がした。
飛行訓練センターも特別なイベントがあったようです。
シャールカはネオの仲間になるらしい・・・?
次回は8時の予定です。




