第3話 イヒアチの森
やっと始まりました。
俺は“ネオ”という名前になったらしい・・・。人間のように見える姿を確認していた。どういう訳か、服を着ている。元の世界では服など着たこともなかった。その姿は、下着の上にシャツを着て、ローブをまとっている。比較しようがないが、とりあえず動き回るのに問題はない。魔石の入った袋はアイテムボックスに入れた。色々なものを、アイテムボックスに出し入れしているうちにあることに気が付いた。
(この中に入れると、時間の進行が止まる・・・)
その辺の草をとって入れると、アイテムボックスに入れた草は全く変化しなかったが、摘んだだけで近くに置いておいた草はしおれてきたからだ。
森の中ではなんだかわからん、人にいるところに出てみるか・・・。
ネオは森を出て、街にいって情報を得ようと思ったその時、周辺の森の草が音を立てた。
(なにかいるにゃ!)
野生の勘が働く。と、次の瞬間、見たこともない子人のような人型の何かが襲ってきた。
(なんだ、ありゃにゃんだ?)
とにかく逃げることにした。
しばらく逃げていると、何かに躓いて倒れてしまった。
(2足歩行なんでしたことがないにゃ!!)
このままでは襲われると思ったその時、
『大丈夫か!』
そういいながら3人の男がやってきた。3人の内に1人が放った矢が襲ってきたものに当たる。ネオを襲っていたものはあっけなく倒れた。
『ゴブリンから逃げてるようじゃ、命がいくつあっても足りないよ』
3人の内、真ん中にいる少し大きな男がしゃべった。
ネオはとりあえず立ち上がって声のする方を向くと、
『えっ?魔物?』
『耳以外は人間に見えるが・・・』
『敵・・かも?』
3人は剣と矢をかまえた。
『ちょっと待ってください。怪しいものではありませんにゃ』
ネオは慌てていった。
((魔物がしゃべった!!))
3人の声が揃った。
・・・
『・・・というわけで、この世界に来てしまったんですにゃ』
ネオの説明に、警戒しながらも聞く3人。とりあえず、ネオは、異世界から連れてこられた猫であることを説明したが、
『この世界に猫という生き物はいないな。お前は耳が魔物みたいだが、それ以外は人間だ』
オスターと名乗る、3人組のリーダーの一言であった。
『私は、オスター D級の冒険者だ。20歳。剣士だ!』
そういうと、腰に刺していたショートソードを見せる。銀色の髪をした体格のいい男である。
次にその右側にいた男が
『俺はシルバット D級冒険者だ。19歳。魔導士だ。属性は火』
杖を見せ、破顔した。オスターに比べるとやや背が低い。茶髪で、ローブを着ている。
最後に左側にいた男が
『私はロイド E級冒険者です。まだ19歳の新人です。 弓士です』
さっき、ゴブリンという魔物を矢で倒しているので、本当に新人なのかはともかく、2人よりも経験が浅いのだろう・・・。身長も3人の中では最も低い。といってもネオよりはいくらか高いのだが・・・。ブロンドの髪をなびかせている。
『ネオはスキルを持っているのか?』
オスターがそう言いながらネオを見ている。
『魔法が使えるはずなのにゃ。だけど、まだ実際には使えないのにゃ』
ネオはそういうと、さっき転んだときに出来たあざの部分に手をかざし、
『ヒーリング』
と唱えた。すると、あざは瞬く間に消えていく・・・。
オスター、シルバット、ロイドの3人はその様子を唖然として見ていた・・・。
((回復魔法・・・見たことがない))
『お前の能力なのか?』
我に返ったオスターが呟いた。
・・・
オスターは、ネオを含む皆を座らせると、
『お前の魔法は見たことないものだ。回復魔法なんてこの世界にはないぞ!!』
そういわれて、ネオは新人の神様に言われたことを思いだした。
『そういわれれば、そんなことを神様に言われたようにゃ・・・』
『なあ・・・こいつ大丈夫か?』
シルバットがネオを指さしながら、オスターに向かって言う。
『変わっているが、危険ではなさそうだ』
オスターが答える。
『回復魔法があるなら、仲間になってもらったら?』
ロイドが2人の会話に割って入る。
オスターは右腕をネオに差し出した。よく見ると、魔物に襲われたと思われる、小さな傷が何か所かある。
『ネオ。この傷直せるか?』
『やってみますにゃ』
ネオはオスターの右腕に手をかざす。
『ヒーリング』
ネオがそう言ったとたん、オスターの右腕にあった傷、何と、かなり昔にやられた古傷までもきれいに治ってしまった。
((うそだろー))
これには、ネオを含めてこの場にいた4人ともが驚いてしまった。
『てっことは、俺の古傷も・・・』
そういいながら、シルバットが左脚を出してきた。昔、魔物に襲われたらしく、縦に裂けるような傷あとがあった。
ネオはシルバットの左脚に手をかざし
『ヒーリング』
と唱えると、この古傷も何もなかったように消えてしまった。
シルバットは左脚を擦って、傷がなくなっていることを確認したのち、立ち上がり、跳躍して見せた・・・。傷の影響がなくなっているのを実感したシルバットは
『すごい。凄すぎる。ポージョンより効果がある。』
と叫んでいた。
『ぜひ、仲間になってくれ!!』
3人の声が揃っていた。
・・・
ネオは、オスター達の仲間として活動することになった。
『とりあえず。ロディアに行って、ネオを冒険者登録しよう』
そういうと、3人はネオを無理やり連れていくのだった。
途中、歩きながら、ネオはオスターからこの世界のレクチャーを受ける。
冒険者というのは、この大陸(ゴンドア大陸というそうだ)統一の謎組織で、国家とも関係なく、独立した冒険者ギルドという組織に登録されたものだそうだ。何故か、どの国も、冒険者ギルドについては、一切口を挟まない。冒険者ギルドは、登録された冒険者に依頼を斡旋したり、冒険者が討伐してきた魔石を買い取ったりしている。肉は、街の市場に買取コーナーが大概あるそうで、冒険者が討伐した魔物の肉は、そちらで買い取ってもらえる。但し、人が運べる量には限りがあるので、大量の持ち込みはあまりないそうだ。
冒険者はS,A~Fまでランクがあり、Sが最高峰、Fが初心者である。Sは大陸で3人しかいないらしい・・・。ランクは単独で討伐できる魔物によって判断される。
新人F級
ゴブリンが倒せるE級
コボルトが倒せるD級
オークが倒せるC級
リザードマンが倒せるB級
オーガが倒せるA級
S級は明確な基準はないが、A級の中で、特に優れたものに与えられるのだそうだ。
『オーガより強いのはいないのですか?』
ネオは、オスターに尋ねた。
『アンディエットとかダンジョンにはいるらしいが・・・単独で倒せたやつはいないらしい・・・』
『ダンジョンってどこにあるんですにゃ?』
『大陸の中央にそびえるローラシア山脈にあるらしいが、よく知らないんだ・・・』
ネオの問いにオスターが答えた。
『ダンジョンの奥にはレベルアップ神がいて、たどり着くとレベルを上げてくれるって聞いたぜ!』
シルバットが話に入ってきた。
『でも、そんなところいけるだけの実力がないですから・・・多分』
ロイドが付け足すように言い添えた。
(なるほど、新人の神様が言っていた通りらしい)
『初心者用ダンジョンなんてないんですかね』
ネオは3人に聞いてみると
『聞いたことないなあ~』
3人の回答が揃った・・・。
(なるほどね・・・)
歩きながらオスターが銀貨を出し、ネオに見せてきた。
『ネオ。通貨ってわかるか?』
『お金というものがあるらしいとは聞いたことがあるが、使ったことがないにゃ』
猫であったネオにはお金を使うということがなかった。
これを聞いた3人は額に手あてて、
『ということは、お金もっていない?』
ネオはうなずいた。
『これでどうにかならないかなにゃ~』
そういいながら、アイテムボックスから魔石の入った袋を取り出す。何もない空間から突如出てきた袋に驚く3人。
『その袋。どこにあったの?』
・・・
3人から、アイテムボックスは人が見ているところで使わないようにネオは念を押されていた。
『そんな魔法はこの世界にはないから・・・知られたら大変なことになる』
そして、ネオが出した魔石の袋を見た3人は、
『どうしてこんなにたくさん持ってるの・・・』
金貨に換算して100枚分は間違いない量であった。
途中、ネオに持たせた木の枝で、スライムとゴブリンを殴って倒し、その魔石を回収して見せた。それは、ネオがもっているよりはるかに小さいものであった。
『魔石ってこんなものなんだよ』
オスターは回収した魔石をネオ見せる。
『とりあえず、その魔石はしまっておいて・・・。今日の宿と食事は、この魔石をギルドで売って済まそう』
オスターはそういうと、ため息をついた。
(こりゃ、とんでもない人を仲間にしたかも・・・)
ネオは、自分のの能力がこの世界でどの程度なのかわかってません。
次回の投降は24時です。