第43話 再調査
湖畔の秘密・・・
今日は、あまりに色々あり過ぎた。宿でお休みしようと宿に向かう。他の宿は知らないので、今回も”冒険者の宿 湖畔”である。
『ダンジョンに居た時間、おかしくないでしょうか?』
メリアも気が付いたらしい。どう考えても、ダンジョンに居た時間が半日程度であるわけがない・・・。だが、色々あって、アミアに戻ってきたときに気が付いた。
『エルバートは、何も言ってにゃかったから、知っているんだろうにゃ』
エルバートは、アミアのダンジョンに実際に入ったことがあるのだから、時間経過がおかしくなるのは知っているのだろう・・・多分。脳筋でなければ・・・。
・・・
『いらっしゃいませ・・・あれ、もう帰ってきたんですか?』
宿に入った途端、コレットちゃんが出迎えてくれたが、あまりに早い帰還に疑問を持ったようだ。
『ちょっと時間があるかにゃ?』
『今は休憩時間だから大丈夫』
ということで、今日あった出来事の内、ダンジョンの話はかなり省略して川と湖、そして、見つけた“冒険者の宿 湖畔”のことを話した。
『ええつ!じゃ、湖が復活して、ご先祖様のやっていた宿があったというの?』
『そうにゃ』
コレットちゃんにしてみると、ダイキチロウなどよりも、ご先祖様の経営していた宿の方が大事らしい・・・。
『これは大変!!お父さ~ん!!』
そういいながら、コレットちゃんは厨房に走っていった。しばらくして彼女の両親と思われる男女がやってきた。
『湖が復活したというのは本当でしょうか?』
よほど気になるのだろう。いきなり質問してきた。
『そうにゃ』
ネオは、再び、湖のこと、湖畔で見つけた“冒険者の宿 湖畔”のことを話した。
『見に行ってみたいです。』
何故か母親と思われる女性の方が積極的である。隣にいる男は困ったような顔をしている。
『私はマレットといいます。隣は夫です。この宿を継ぐために来てもらったのです』
どうやら、母親のご先祖様が湖畔で見つけた“冒険者の宿 湖畔”の持ち主らしい。湖が復活しただけで、詳しいことはわからないが気になるらしい。
『昔の湖は、魚が沢山採れ、周辺の森は狩りに適した動物が沢山いたそうです』
マレットはそういうと、しばらく考え事をしていた後、
『お願いがあります。一度、私を湖畔に連れて行ってください』
マレットがそう言ってネオに頭を下げた。
『えっ?』
『えっ!』
隣にいた彼女の夫とコレットちゃんが驚いている。
『ここに移転したのは、私の祖父の時だったと聞いています。その祖父が亡くなるときに、私に“いつか湖は復活する。その時は、再び湖畔に戻るのだ”といって息を引き取りました。なので、私は祖父の思いを・・・』
隣で、驚愕の顔をしている男が1名、反対側で目をうるうるさせているコレットちゃん。
『連れていくのは可能だにゃ。だが、周辺は廃屋しかないにゃ』
『それでもかまいません』
『明日でもいいかにゃ?』
『はい、もちろんです』
ということで、明日、湖畔に向かうことが決まったのであった。
・・・
特に誰かが襲撃に来ることもなく、翌朝、朝食のあとマレットさんがやってきた。冒険者風の恰好である。明らかに気合が入っている。宿を閉めるわけにはいかないそうで、後の2人はお留守番だそうだ。
『じゃ。早速行こうかにゃ』
『はい。コレット、後をよろしくね』
『早く帰ってきてね』
当然、日帰りの予定である。廃屋に泊まるのはちょっと厳しいと思われた。
街壁を出て、昨日歩いてきた廃道を進んでいく。途中、歩きにくくなってきたので、マレットさんを抱え、一気に湖畔まで駆け抜けてしまった。メリアもレベル15なので、問題なくついてきている。
『早いです!』
マレットさんにはネオに抱えられたことに驚き、飛び跳ねて進んでいくことに驚愕し、あっという間についてしまった湖畔に驚いていた。それでも、廃屋を見た途端、
『あれがご先祖様の宿!』
と叫んで走って行ってしまった。
・・・
『そのまま使えそうな感じですねえ・・・』
廃屋に入ってしまったマレットさんを追ってネオとメリアが廃屋に入ると、埃まみれではあるものの、建物に大きな損傷はないことに気が付いた。
『状態が良すぎませんか?』
メリアも疑問に思っている。マレットさんに至っては、
『掃除して、手直しすれば、再開できそう』
などとつぶやいている。この建物は、石造りであるので、木造のようにすぐには痛まないだろうが、それにしても、状態が良いような気がする。
『ご先祖様の話は本当だったみたい・・・』
マレットさんが妙なことを言い始めた。
『実は、見てもらいたいものがあります』
突然、マレットさんがネオに向かって言い始めた。
『・・・にゃるほど・・・本当だったら大変なことだにゃ』
マレットさんによると、
・この宿の地下はそのままダンジョンになっている
・昔は、冒険者になりたいものは、まず、この宿のダンジョンをクリアする必要があった
・湖が枯れたとき、ダンジョンに入れなくなってしまい、この宿は価値を失った
らしい・・・。
(本当だとすると、ひょっとして・・・にゃ)
『すいません。ダンジョンを見てきてもらえないでしょうか』
マレットさんがネオに再び頭を下げた。
『わかったにゃ』
ネオは思わず答えてしまった。慌ててメリアを見ると、黙って頷いている。
(メリアも同意してくれたみたいにゃ)
・・・
ダンジョンの入り口は、何と、宿の中にあった。
『この扉の先です。湖が枯れたあとは扉が開かなくなってしまったそうです』
示された場所は、壁にしか見えなかった。だが、その扉にネオとメリアは見覚えがあった。
『シメ山にあったエレベータと同じ・・・』
メリアが呟いた。そう、エレベータの入り口そっくりであった。マレットさんは、この場所を伝承として聞かされていたらしい。
『脇のある部分を押すと開く仕組みだったと聞いているのですが・・・』
マレットさんは仕組みまでは知らないようである。よく見ると、壁の脇に金属の箱のような出っ張りがあり、その箱の蓋を開けるとボタンが1つあった。
『これだにゃ』
ネオはそういうとボタンを押す。予想通り、扉は開いた。
『開いたにゃ』
『開きましたね』
『ご先祖様の言い伝えは本当だった・・・のね』
ネオとメリアは当然の結果にしか思えなかったのであるが、マレットさんにとっては特別だったらしい。
『入るにゃ』
廃屋にマレットさん一人残す訳にもいかず、3人で入っていくと、そこは、まぎれもなくダンジョンであった。
『いつものとおり進んでみるにゃ』
『はい』
メリアからは返事が来るが、マレットさんはネオにしがみついたまま黙っている。かなり怖いらしい・・・。
・・・
『・・・強いですね』
『・・・強いにゃ』
ダンジョンの中からは、ゴブリンが現れた。はじめこそ、ネオとメリアが倒していたが、万一ということを考慮して、メリアのショートソードをマレットさんに持たせたところ、たまたま、マレットさんが襲ってきたゴブリンを倒した。これがきっかけになったらしく、別人のようになって喜々としてゴブリンを倒している。ネオとメリアが警戒しているものの、ゴブリンは全てマレットさんが倒していく状態になってしまったため、暇である。そうしていくうちに少し広い空間に出た。
『あれは何でしょう?』
すっかりバトルジャンキーになったマレットさんが指さしたもの・・・それは、まぎれもなく、新人の神様の像であった。
(もしかすると、これが本当の新人用ダンジョンなのではないかにゃ)
拾った魔石の数から推定して、マレットさんだけで既に200匹は倒している。
『マレットさん、あれは新人の神様の像だにゃ』
『シンジンノカミサマ?』
『マレットさんが近づいてくださいにゃ』
マレットさんは、言われるまま新人の神様の像に近づいていくと、予想通り、マレットさんの体が光に包まれた。少し後ろで様子を見ていたネオとメリアであったが、マレットさんが驚いた顔をしたのち、消えてしまった。
『マレットさんが消えましたね』
『多分、同じパターンだにゃ』
とういうと、ネオとメリアは新人の神様の像に近づいた。
『レベルアップの対象ではありません』
ネオとメリアの体が光に包まれたのち、2人にそれぞれに声がしたのだった。どういう仕組みか解らないが・・・。
次の瞬間、ネオをメリアは宿の脇にある小屋の中にいた。埃だらけの小屋から慌てて出ようとすると、ネオの脚が何かに引っ掛かった。
『キャ!』
ネオの脚がひっかけたものは、マレットさんであった。ネオの脚があたったので目が覚めたらしい。とりあえず埃だらけの小屋から脱出すると、
『私、冒険者合格だそうです』
マレットさんが妙なことを言っていた。3人で廃屋に戻って残っていた椅子に座って話を聞くと、
『光に包まれた途端、“お前は冒険者合格だ。レベル3だ”といわれ、意識を失いました』
(やっぱりにゃ)
『この宿は、冒険者用初級ダンジョンだった訳だにゃ』
『それって・・・』
『大事件だにゃ』
『ついに見つけましたね』
驚いているマレットさん。多少、事情を知っているメリアはこのダンジョンの意味することを理解したらしい。
『この宿をもっと調べるのにゃ!!』
・・・
宿の詳細を調べたが、それ以上、特別なことは見つからなった。が、このダンジョンであれば、ほとんどの人は、レベル3にはなれそうである。繰り返した場合の効果などは不明であるが・・・。
『この宿は早く再開するべきにゃ!!』
『今後どうすべきか考えないと・・・』
ネオが単純に言ってことに対して、メリアは、このダンジョンの価値を考えて、どうすべきか考える必要があると思っているらしい。
『この宿は、凄い秘密があったのですね・・・どうしましょう』
マレットさんも、事の重大さに気が付いたらしい。
・・・
とりあえず、廃屋改め、旧“冒険者の宿 湖畔”は、戸締りをして、一旦アミアに戻ることにした。帰りもネオがマレットさんを抱え、一気に戻ったので、昼過ぎには城壁に着いていた。
『異常に早くないですか?』
マレットさんが何か言っているが気にしない。
冒険者の宿 湖畔 に戻ると、マレットさんの夫とコレットちゃんが出迎えた。
『早いですね』
『早すぎですね』
2人とも、朝出かけていったはずの3人があまりに早く戻ってきたので、不審に思っているらしい。
『・・・だったのよ!!』
マレットさんが彼女の夫と娘であるコレットちゃんに、事情を説明すると、2人は驚いていたが、
『宿を再開すべきよ!!』
なんと、コレットちゃんが叫んだ。
『この宿はどうする』
マレットさんの夫は今の宿が心配らしい・・・。
『ダンジョンのことをエルバートに相談した方がいいにゃ』
ネオがそういうと、この場にいた他全員が頷いた。
・・・
『・・・だったのです』
冒険者ギルドでエルバートに会いたいことを伝えると、すぐに2階の応接室に通された。そこで、エルバートに宿の秘密を説明したところ、
『なんだって!!』
エルバートの絶叫が冒険者ギルドの建物内に響くことになった。
『これは大変なことになった・・・』
エルバートはその後、冷静になったらしく、何やらぶつぶつ言いながら考えている。
『宿は出来るだけ早く再開してほしい。今の宿は、商人ギルドに相談して誰かに営業してもらってはどうかな?』
エルバートがまともなことを言っている、ただの脳筋ではなかったらしい。
『そして、このことは当分秘密だ』
『にゃんで?』
ネオは不思議そうにエルバートを見た。
『今までできなかったレベルアップが誰でも出来るようになった・・・軍が放っておくわけがないだろうが!!』
『あっ!』
エルバートに言われて、ようやくネオも理解した。メリアは既にわかっていたらしく、隣であきれ顔でネオを見ている。
『これは、国王陛下に報告が必要だ』
そういうと、エルバートは職員を呼びつけ、王宮に向かわせた。おそらく、謁見の申し込みに行ったのだろう。
『お前たちも事情を説明するために来てもらう』
エルバートはそういって席を立とうする。その服をマレットさんがつかんだ。
『あの~。冒険者登録をしてほしいのですが・・・』
(((ええ~!!)))
あまりにも意外な内容に、その場にいた全員が絶叫したのであった。
やっと見つけました。
この世界の人でもクリアできる初級ダンジョン。
でも、どうする・・・。
本日13時に短い話を予定してます。




