第36話 ギルド
新しい章になります。
『とりあえず入るとしようにゃ』
ネオはそういうと、冒険者ギルドに入っていった。
ギルドの中にいた全ての人の目がネオに注がれる。王宮の馬車が突然ギルドの前で止まり、降りてきたネオに注目が行くのは当然なのだが・・・。
『えらい人気ものらしいにゃ』
そういうと、カウンターに向かって歩き出す。近くにいたカウンターの若い女性に
『オケライのオルトラの依頼を受けてアミアに来た。詳細を説明してくれにゃ』
『はい。しばらくお待ちください』
カウンターの女性は、慌てて奥に消えていった。
しばらくして、何故か2階から声がした
『オルトラの代わりに来たらしいな。説明するから上がってきてくれ』
上半身しか見えなかったが、明らかにゴリマッチョな中年男であった。
・・・
2階にネオとメリアが上がった途端、問答無用で部屋に連れ込まれ、中にあったソファーに座らされた。さっき、カウンターにいた女性が、お茶らしきものを持ってやってきて、ネオとメリアの前に置いていった。
ゴリマッチョの男は、周囲に他に人がいないことを確認してからソファーの反対側にある椅子に座った。
『よく来た。俺はアミアのギルドマスターをしているエルバートだ。まさか、王宮の馬車でやってくるとは思わなかったぞ。ハハハ・・・』
オケライのオルトラから、何等か連絡を受けていたらしい。
『で、早速A級への書き換えをするので、カードを貸してくれ』
言われるままに、ネオとメリアが冒険者カードをエルバートに渡すと、そのまま奥に消えていった。
『目立ってしまったようですね』
メリアが小声で話しかけてくる
『そうみたいだにゃ』
ネオも小声で返事をしていた。
5分もしないうちにエルバートは戻ってきた。
『これが、新しいカードだ。今までの実績もちゃんと反映されているから安心しろ。特にネオは途中、随分討伐実績を上げているが、メストで魔物退治をしたのはお前なのか?』
『そうにゃ』
今更誤魔化しようもないので、素直に認めると、
『では、今回の依頼内容を説明するぞ・・・』
急に小声になったエルバートは、悪酒騒動の説明を始めた。
・・・
『・・・という訳で、“ダイキチロウ”なる悪党が住み着いているダンジョンを攻略する必要があるという訳だ』
エルバートの説明を要約すると
・アミアの街に“ダイキチロウ”なる商人が現れ、道行く冒険者に酒を売っていた
・酒は安くてうまかったので人気になった
・半月ほどすると、この酒を飲んだものが何時までたっても泥酔状態から回復しなくなっていた
・更に、泥酔状態から回復しない奴らが発狂して死にはじめる
・異常に気が付いた近衛兵が“ダイキチロウの跡をつけると、南東にある森にある秘密のダンジョン付近で見失った
・アミアにいるA級冒険者を捜索に出したが、誰も戻ってこない
というのだった。
『オルトラからは、A級冒険者たちは泥酔死体で見つかったと聞いたがにゃ・・・』
ネオの言葉に、エルバートの顔色が悪くなる。
『・・・オルトラの奴・・・頼む、それは秘密にしてくれ、他の冒険者が動揺する』
エルバートが土下座せんばかりに頭を下げてきた。
(かなり困っているにゃ・・・)
『実はな、あのダンジョンは、俺と、オルトラの師匠が隠していていたダンジョンで、あの酒は、ダンジョンの中にある“悪酒の泉”の水なのだ』
『つまり、あんたとオルトラがレベルアップに使っていたダンジョンという訳かにゃ?』
ネオは、目を細めてエルバートを見た。
『うっ・・そうだ』
あっさり認めるエルバートに、
『なら、あんたがどうにかすればいいのにゃ』
エルバートは改めて周囲を見渡した後、
『実はな、悪酒の泉は地下1階にある。だが、泉に入るには専用の鍵が必要なんだ。そして、その鍵はあのダンジョンを踏破したものにしか渡されないアイテムなのだ』
『最奥のレベルアップ神にたどり着かないと無理ってやつかにゃ?』
『そうだ』
『そして、恐らくだが、“ダイキチロウ”は地下1階のシェアハウスにいるはずだ』
『にゃら、エルバートが行ってくればいいのにゃ』
ネオの言葉に何故か、困ったような、恥ずかしいような様子のエルバート。
『実はな、あの鍵は、俺がうっかり“ダイキチロウ”に盗まれてしまったものなのだ。そして、この鍵は、1度受け取ると、2度目からはもらえないのだ』
なので、他のA級冒険者にダンジョン攻略して地下1階のシェアハウスに入り、“ダイキチロウ”を捕えさせようとしたのだが、誰も帰ってこないのだ。いや、泥酔死体になっていたのだった。
『ちなみに何人ですか?』
脇で聞いていたメリアが問いただす。
『3人だ。少ないと思うかもしれないが、A級はそんなにいない。アミアにいた3人のA級全員が帰ってこない状況なのだ』
『帰ってこないのではにゃくて、泥酔死体だったのにゃろ』
エルバートが小さく頷く。
『エルバートが様子を見に行けばよいのにゃ』
『俺は、腰を痛めて引退したんだ。外見は現役時代とさして変わらないが、今では、力が出なくて無理だ』
『あらまあ・・・』
『ご愁傷様だにゃ』
『それで、オケライのオルトラに依頼したという訳だ』
『ちなみににゃ、戻ってこなかったA級冒険者のレベルは・・・』
『1だ』
ネオが言い終わらないうちに、エルバートが答えた。
『それは無理にゃろ』
思わずネオはいってしまう。
『解っていたか・・・そうだ、あのダンジョンは、初回でレベル10程度、複数こなすことでレベル15までは上げることが出来る。だが、ほとんどの奴は、初回をクリアできない』
『あんたはできたんにゃろ?』
ネオは再び細い目をエルバートに向けると・・・
『実はな、おれの師匠はあのダンジョンをリセットする魔法を知っていた』
『初回特典が再現されるので、クリアできたという訳かにゃ?』
・・・エルバートの顔が引き攣った。
『知っているのか・・・そうだ。初回特典で、各回にレベル神が配置される。なので、最奥にたどり着くまでに、レベル9になっていたんだ』
シメ山にあったダンジョンよりも難しいらしいこのダンジョンで、初回特典の無い状態でクリアするのは不可能である。シメ山のダンジョンですら無理なのだから・・・。
(エルバートの師匠が知っていたダンジョンをリセットする魔法を取得する方法はないのかにゃ。うまくすれば・・・)
『エルバートの師匠は・・・』
『死んだ。今は、誰もリセットの魔法を知らない』
『あにゃ~』
ネオは額に手をあててのけぞった・・・。
・・・
エルバートもリセットの魔法を探したらしいが、師匠は何も説明をしないまま、ローラシア山脈に出かけたときにドラゴンに襲われて亡くなったらしい。以来、リセットの魔法を使えるものはいないということだ。
このダンジョンは5階が最奥だ。といっても、4階と5階はレベル9とレベル10のボスしかいない。1階はゴブリン3体、2階はリザードマン3体、3階はオーク5体を倒せばよいらしい(途中の雑魚は3階までは結構出てくるが攻略には関係しない。レベルアップ時の経験値にはなるらしい)。シメ山は数こそ多いが、ゴブリン、スライム、コボルドだったことを考えればかなり厳しい・・・。シメ山でもクリアしないのだから、このダンジョンをクリア出来るものがいるわけがなかった。
『つまり、ダンジョンを攻略して鍵を受け取り、その鍵で“ダイキチロウ”を処分すればいいんだにゃ』
『いや、“ダイキチロウ”は出来れば、捕まえてきてほしい』
解ったにゃ。
ネオが引き受けてくれたことで、安心したのかエルバートは気が抜けたように椅子に座っている。
『ところで、このギルドでは魔石の買取は出来るかにゃ?』
『もちろん可能だ』
この言葉にネオはにやけた(これで、新人の神様から貰った魔石を換金できるにゃ)。
『では、これを換金してにゃ』
ネオは、アイテムボックスから神様にもらった魔石を全部出した。
『おまえ、どこからこんなにたくさんの魔石を出してきた』
驚くにエルバートに
『ひ・み・つ だにゃ』
といって笑うネオであった。
ひょっとするとリセット魔法が・・・。
朝までに追加で投稿します。




