第2話 光に包まれて・・・
この回までは前置きです。
寒い冬が過ぎて、春が来て、再び夏が来た。相変わらず、兄弟のことは何も解らなかった。
今日も屋根裏で昼寝をしていたが、ふと、魚の匂いがしたので、慌てて屋根裏から出てみる。そこには、飛行機に向かって歩いていく波高の姿があった。
(ひょっとして・・・)
俺は、波高の向かっている機体に向かって走っていく、一番遠いところにその機体はあった
(JA4169と書いてある・・・)
波高は機体の周りで何か作業をしている。どうやら、“飛行機”を掃除しているらしい。
俺は、魚の匂いがする方に向かっていった。匂いはこの飛行機の中からしている。ちょっと入り口は高かったが、ここはジャンプ一番、飛び乗った。匂いは室内に充満していたが、“あじの干物”といっていた魚は見当たらない・・・。
・・・
突然、周辺が光りだした。眩しくて何も見えない。
(これは罠だったのか・・・)
・・・
『召喚成功』
新人の神様は、JA4169で波高が壱岐から熊本に戻ってきたタイミングで、召喚魔法をJA4169の中にいる生体反応に反応するようにかけた。波高1人を召喚するのがやっとの能力なので、他の人間と一緒にいなくなった波高を見て、いつもなら1人戻ってくる波高を召喚するためである。しばらくして、機内に生命反応が現れ、その生命体が召喚されたのであった・・・。
(妙に軽かった気がするが・・・)
・・・
新人神様の世界にあるゴンドア大陸、その南西にあるロディア国の王都近くの森に召喚した生命体と新人の神様はいた。
(どうしてこうなった~!!)
新人の神様は頭を抱えていた。波高だと思って召喚した生命体は、何と猫であったのだ。
しばし呆然と猫を見つめる新人の神様。異世界召喚はエネルギーを多く必要とするので、新人の神様にはやり直す力はなかった。
(この猫にどうにかしてもらおう・・・)
新人の神様は、猫を人間と同じような体格に変更した。これは、自分の世界であれば簡単らしい・・・。しかし、足元から変更していき、顔のサイズを変えたところで、力尽きた。
(疲れた・・・)
結果として、猫の特徴である耳だけが以前のままの姿で残ってしまった。ひげもそのままだったのだが、そんな細かいところまで新人の神様は気にしている余裕はなかった。
しばし休憩していると、猫が目を覚ました。
・・・
『にゃんと!』
猫には何が起きたのか理解できなかった。気が付くと、見たこともない森の中にいた。そして、自分の体が人間になっていることに気が付く。
慌てて周囲を見ると、呆けた男がいた。
『あの~』
猫は呆けている男・・・新人の神様に声をかけると、新人の神様は慌てて猫(人間)の方を向いた。
『起きたかの』
新人の神様の言葉に思わず
『あなたは誰にゃ?』
と言い返す。
『私はこの世界の神である。この世界は危機に瀕している。以前、文明が栄えたが、途中で滅びてしまった。再び、発展させてきたのだが、このままだと再び滅びてしまう』
『そこで、君をこの世界に召喚したというわけだ』
そう言って新人の神様は猫(人間)に向かってどや顔する。
『意味が解らんにゃ』
猫(人間)が呟く・・・。
新人の神様は、ことの詳細を伝えた。今のままでは、人間は魔物に対抗できなくなるので、この大陸に残っている古代文明(前文明)の遺跡にある力を使って人間を強化し、魔物に対抗できるよう導くこと
『・・・つまり、この世界を崩壊から救ってほしいのだ』
(???)
『お前には2つの力を与える。今は私に出来る限界だ』
『一つは言語能力。この世界の全ての言葉が読み書きできる』
『もう一つは、神特性魔法。この世界では、人間の一部に魔法のスキルを与えている。だが、お前に与えた神特性魔法は、この世界でお前しかもっておらん。特に、回復魔法は他のものは持っていない。何が使えるかは、能力に応じて、自動的に解るようになっている。初期値は低いので、鍛えないとなにもできないぞ』
『鍛えるってどうすればよいのにゃ?』
猫(人間)が慌てて言葉を返すと
『簡単じゃ。魔力は使えば使うほど鍛えられる。初期ではヒーリングしか使えないが、何度も使っていくことで魔力が増え、使える魔法も増える。但し、魔力切れになると、回復するまで全身がだるくなって何もできなくなるので要注意だ。』
『どうやって回復するんにゃよ』
『自然と少しづつ回復する。魔力回復ポーションとかいうものもこの世界にはある。睡眠中は起きているより3倍回復するぞ』
どや顔で答える新人の神様。
『つまり、魔法を使っていくと魔力が増えていってレベルが上がるということかにゃ?』
『ちょっと違う。この世界には、スキルとレベルがある。スキルはそのものが生まれ持った能力で、私の気まぐれで与えている。レベルは、そのものが持っている経験値をレベルアップ神のみが変換して上げることが出来るものだ』
『レベルアップ神・・・?』
猫(人間)は怪訝な顔で新人の神様を睨む。
『私の分身のようなものだ。通常はダンジョンの一番奥に配置している』
『それって、普通の人は、ダンジョンの一番奥にいかないと、レベルアップ出来ないということだろ・・・そんな簡単にたどり着けるのかにゃ?』
『・・・』
猫(人間)の反論に何も言えない新人の神様。そう、レベルアップの条件をダンジョンの奥にいるレベルアップ神に限定したために、人間はほとんどレベルアップできず、経験値を積んでも魔物に勝てないのだ・・・。
『実は、初級用ダンジョンも作ったのだ。だが、古代文明が滅びたとき、初級ダンジョンも消えてしまって・・・』
『だめじゃにゃ』
猫(人間)はひげをなめながら新人の神様を睨んでいる。
『この近くに初級でも対応できるダンジョンが1つ残っている。実は、そのダンジョンの最奥に初級ダンジョンの復活が出来るアイテムがあるはずなのだ』
新人の神様は慌てて話だす。
『なるほど。でも神様なんだから、先につくっておいてほしいにゃ』
『いや、まだ、私には自分で作れなかったので、先輩の神様に作ってもらったんだ』
(???)
『なので、その復活のアイテムを見つけて発動させてほしい』
『あなた、本当に神?にゃ』
猫(人間)はひげをなめながら新人の神様を睨んでいる。
『し・・・新人だけど神ではある』
『新人ねえ・・・にゃんとも・・・』
新人の神様は、何かが入った大きな袋を渡してきた。
『これはなんにゃ?』
『これは魔石だ。当座の活動資金の代わりだ。神特性魔法にアイテムボックスがあるのでそこに入れておくとよい』
『どこにあるのにゃ』
『アイテムボックスは念じれば、異空間が開いて出し入れできる』
『本当にゃ』
猫(人間)は言われたとおり念じてみると、突然空間が開いた。
『容量は無限大だ。つまり、いくらでも入る』
『にゃんと!』
驚いている猫(人間)を見ながら、更に新人の神様は
『この世界の魔物は食肉になっている。そして魔石がある。心臓の近くにあるはずだ。この世界では、貴重なものとして使われている。魔道具の動力になっているので、有用な資源だ。但し、ダンジョンでは、倒すと魔石以外は全てダンジョンに消えてしまう。』
『つまり、ダンジョンでは魔石以外手に入らない。それ以外では倒した魔物は食肉になるのだにゃ?』
猫(人間)はひげをなめながら新人の神様を睨んでいる。
『そ・・そうだ』
いつの間にか立場が悪くなっている新人の神様であった。
『この世界についてもっと説明しろにゃ』
新人の神様を睨む猫(人間)。
『時間切れだ。あとは自分で調べてくれ。』
『おい。逃げるにゃ!!』
新人の神様の姿が徐々に薄くなっていく・・・
『お前はネオと名乗れ』
そういうと新人の神様は消えてしまった。
次回の投降は18時の予定です。