第34話 角ウサギ
短いです
馬車は早かった。半日で40kmは走破している。丘のようなところで、馬車が停止した。
『ネオ様、メリア様。ここで昼休憩にさせていただきます。』
馬車の出入り口を開けた騎士はそういった後、食事の準備を始めた。どうやら、パンと干し肉のようだ。
ふとネオが周囲を見渡すと、一面の草原で、メリアがいたラオカ村周辺によく似た光景が広がっていた。
『ちょっと、運動をしてくるにゃ』
そういうと、ネオは草原に向かって走っていった。騎士たちは、その光景を唖然と見送っていた。そう、追いかけても追いつくわけがないからである。
(やっぱりいたにゃ)
ネオが草原に潜んでいた角ウサギを次々に仕留めていく・・・。
5匹捕まえたところで、
(こんなもんで十分にゃ)
ネオは仕留めた5匹の内2匹をもって馬車に戻ってきた。
『昼食の肉だにゃ』
そう言って、騎士たちに渡したのである。騎士たちは一様に驚いている。
『あの・・・よいのでしょうか』
『大したことないにゃ。解体出来ないのならメリアに頼むがにゃ』
『いえ、私たちで出来ます。そのままお待ちください』
そういうと、椅子に座らされてしまった。
(この椅子、どこにあったのにゃ?)
『ネオさん。前も言いましたけど、角ウサギは普通、罠でも仕掛けないと捕れないんですよ』
またか、といった感じでメリアがネオの前にやって来て言った。
ネオは何か不自然なものを感じた。
(確か、オスター達と、初めての依頼でよもぎ草を採取にいったとき、シルバットとロイドは角ウサギも仕留めていたはず・・・。確か銀貨1枚にしかならなかったずにゃ)
目のまえにはメリアがいたので、
『この世で最初の依頼をしていたとき、仲間が角ウサギを仕留めていたんだが・・・にゃ』
『まさか・・・』
『それに、ロディアの市場では銀貨1枚にしかならなかったはずにゃ・・・』
しばらく考えていたメリアは突然解ったと言わんばかりに、
『その時のウサギって、角が2本ありませんでしたか?』
『えっ』
ネオにとってはウサギでしかなかったのだが、そう言われれば、シルバットとロイドが仕留めたウサギは小さな角が2本あったような気がした。
『たぶん、それは2角ウサギだったんだと思います。』
『2角ウサギ?』
思わずネオは声が高くなってしまった。
『はい。イヒアチの森にだけ住んでいる固有種です。数が少ないのでほとんど見かけないのですが、角ウサギと違って遅いので、見つけられれば仕留められます』
『でも、市場では“角ウサギ”って書いていたはずにゃ』
『ロディアの市場では、2角ウサギのことを角ウサギといってました。私たちが持ち込む角ウサギはラオカウサギという名で処理されてました。味が違うんですよ!!』
何故かメリアは自信たっぷりに胸を張った。まだ子供にしか見えないが・・・。
『防具を買った店にいたドワーフのミラは角ウサギっていってたはずにゃ』
『はい。ロディアの市場だけの用語ですから・・・どうしてそうなったのかは知らないです』
ネオは、2角ウサギは食べたことがないので、味の違いは分からなかった・・・というより、ウサギだとしか思っていなかったので、角ウサギと2角ウサギの違いを理解していなかった。
『ネオさんは、普通の人が狩ってこれないロディアの市場でラオカウサギと呼んでいるウサギばかり、狩ってきてるんですよ』
メリアにそう言われて、
(この世界の人では狩れないから増えたのかもにゃ)
などと思っていた。
次回は10/30の予定です。




